第46話 臆病
店主の猟をしている友人をステーキやその後に出されたサラダなどを食べて待っていると…
カランカラン
「来たぞ~。酒をくれ~」
「おい。客が他にもいるぞ」
「お~。悪いね、少年。でも酒は準備してくれるよな?」
「あぁ、ただ今日は金を払わなくていい。こいつのおかげでな」
「マジ!ありがとな!」
と短髪の背の高い人が酒場に来て、店主に酒を要求していた。
「酒の前にこいつの話を聞いてくれ。それが出来たら良い酒を出してやる」
「少年。話とは何かね?」
「ウービーブライッシュって今どこにいますか?」
「ウービーブライッシュね~。そこの森にいると思うぞ」
「え、そんな簡単に見つかるものなんですか?」
「あぁ~、ギルドの依頼で来たのか。確かにウービーブライッシュは見つからないことが多いが、シュテイルの近くにある森には大体1匹はいる。まぁあんなに大きな森に1匹いるかいないかだから探すのが大変なのは変わらないが…」
なんでだ?
「なんでこの近くの森にいることが分かるのですか?」
「単に食うヤツが少ないからな。…シュテイルについては知っているか?」
「はい。店主に話してもらいました」
「それならいい。昔はシュテイルで商品を売るために森の動物を狩った、いや狩りすぎたから今の森から動物がいなくなったんだ。ほぼ全ての肉を食べる動物が敵のウービーブライッシュにとっては住むのに適した森になって住み始めた」
「人が近くにいるのに…ですか?」
「ウービーブライッシュにとっては肉を食う動物より人の方がマシなんだろ。動物の考えることはわからん」
「…」
「まぁ、ウービーブライッシュも馬鹿じゃない。ちゃんと森の奥の奥にしかいないからな。狩るんだったら準備をちゃんとして数日かけるぐらいやらなきゃダメだ」
「そうですか…」
「満足か?」
「はい!」
「良し!じゃあ、酒とつまみ~」
「ほらよ。良い酒といつものだ」
「おお~。これこれ~」
とクリットの隣の席に置かれたのは酒と焼き魚にクッキーだった。
「魚と…菓子?」
「こいつが甘いのが好きなんだ」
「なんだ~。やらんぞ~」
「いや、大丈夫ですよ。さっき食べ物を食べましたし」
「そうだ。ええっと…」
もぐもぐ
「…なんだね~」
「「ヤツ」のことを知らないのかな~って」
「「ヤツ」?」
「初めてからくりを作った「ヤツ」だ。お前が来る前に、俺がある程度話した」
「あぁ~。その「ヤツ」ね」
「知っていますか?特にいる場所とか…」
もぐもぐ
「…場所は知らないねぇ。ただ」
「ただ?」
「この街には絶対にいる。少なくともからくりを売るためにはどこかに顔を出さないといけねぇが、そんな情報はどこにもない。つまり「ヤツ」のことを知っていて隠しているやつがいる。そこを調べられれば「ヤツ」の場所が分かるはずだ」
「へぇ」
ごくごくごく ガタン!
「もう一杯!」
「お前なあ…」
「じゃあ…」
とクリットは俺が作った金塊を荷物の中から取り出し、置いた。
ゴト
「これでさらにおごってやってください。では僕はこれで」
「…ユナルガ」
と短髪の背の高い人が言った。
「え?」
「俺の名前だ。お前、出し過ぎだよ。そんなに俺の姿がみすぼらしく見えたか?」
確かにユナルガの体つき細身だが…
「確かに華奢ですけど、みすぼらしいとは思っていないです。ただのお礼です」
「名前は?」
「クリットです」
「そうか、覚えておく。店主、菓子~」
「…はぁ、わかった」
そうしてクリットは酒場を出た。
ガチャン
====
クリットが出て行った後 酒場
ごくごく
「…クリット君はいい子だねぇ~」
「そうだな。少なくともお前よりはな」
「俺だって弓の腕前は良い。いい子!」
「確かに腕前は良いが。いい子じゃないだろ」
「…これはどうする~?」
「お前のものだろ。俺はもう貰っている。クリットもお礼と言っていただろう?」
「俺のものか~」
「使うなよ。貯めておけ」
「はいはい~。でも酒は止めらんないからね」
「は~ぁ、それで恋人に振られたんだろ…」
「そこは普通、自分に振り向いてもらおうと努力するところじゃないんかい?」
「知らん。お前からは行かないのか?」
「酒を止めるほどの恋があれば行くさ」
「…臆病なくせに」
「………そうだな」
「…俺はこの酒場にお前が恋人と2人で婚約すると言いにいつか来るのを願っているぞ」
「…その時は祝いの席を準備してくれるのかい?」
「もちろん。そのとき酒は準備しないからな」
「なんで!」
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