第45話 盗賊とからくり

「盗賊の町?そうには見えないけど…」

「昔の話だからな。表の店がたくさんある通りではないが、少し離れた路地ではいまだに強盗や騙しがある」

「店主も?」

「いや、俺はやったことはないが、強盗にあったことはある。もちろんこの店で騙しはしていないから安心しろ」

「…本当かな~」

「そのまま疑っとけ。路地裏に入るならどんなにやさしくされても疑うのは必要だ」

「じゃあ、店主からもらう情報も疑わなきゃね」

「この情報は真実だ。対価は貰っているんだ、ちゃんと話さない訳はない」

じゃあ他の人にも金を払えば良い情報がもらえるのかな?


「他の人にも金塊をあげれば何か貰えるのかな?」

「あの量の金塊だと情報なんかも貰えるだろう。たいていのやつは嘘を付くことはないだろうよ。嘘を付いていない俺でもこんな金塊を準備できるお前の裏にいるやつに今怯えているぐらいだからな。ただ油断はするな、稀にそんなお前に臆さずに騙すやつもいる」

「そうなんだ。…でもそんなことする人がいるのになんで商人の街って呼ばれているの?」

「昔は盗賊の町って言っただろう?その名の通り盗賊が集まり、いろいろな情報が集まった。どこの国がいいか、どこの店、家がいいかなんかの情報がな」

「やけにくわしいね」

「俺は騙された側だからな。後は盗賊から聞いた情報だ」

「そうなんだ」


「で、続きだ。盗賊が集まることを利用してあることを考えたやつがいた。「この町にかねを呼んだ方が良くないか?」ってな。幸いなことにこの盗賊の町はそのとき他に知られていなかった。盗賊が自分の家を知られるわけにはいかないから当然なんだがな」

「それで?」

「この町の盗賊はいかにも栄えていて人が外から来るような街であるかのように演じた。今まで奪ってきたものを使ってな」

「その効果は大きく、たまたま立ち寄った人がシュテイルに入り、ものを買って行き、気に入った人が住み着いた。盗賊達は真実が知れるのを恐れて、住み着いてしばらくした人から狙った。少しずつ」

「もし真実が知れたら?」

「その時点で殺す。住み着いているのだから他にバレることはないし、その人のすべてを奪うことが出来たからな。それだけやって数回盗むのがやっとらしい」

「それでこの町が成り立っていたんだ…」

「そうだな。だが数年経つと少しずつ盗賊が気づき始めた。まともに商売するのがいいことに」


「へぇ…」

「特に盗みでの稼ぎがいい盗賊から気づき始めたんだ。それだけ多くの人を引きつける商売が出来ているか、少ないが太客がいる盗賊だからな」

「それで盗賊を辞めてこの街の商人になったと」

「そうだ、初めは盗賊を辞めたとことは言わずに盗むふりだけを続けていた。言えば狙われるのは自分だからな。だが少しずつ盗賊を辞める人が増え、外から来た商人も加えて大きな集まりを作り、他の盗賊から商人を守った」

「それじゃあ、裏で気をつける必要は無いんじゃない?」

「商人の集まりに入れなかったやつは盗賊をやるしかない。今でもやっている奴らは大抵そのときから続いてきた一団だ。それが今の裏にいて、なにも知らずに路地裏に入ってきたやつを商人をかたって自分の陣地に連れ込みすべてを奪う。だから気をつけることは必要だ」

「表ではやらないんだ…」

「商人の集まりに入ってなきゃ怪しまれて終わりだからな。それに「ヤツ」の作ったからくりの監視がある」

からくりの監視?防犯カメラみたいな物か?


「(…)…そのからくりってこの店にもある?」

「ない。というか、そのからくりも見たこともない」

「見たこともない?」

「そうだ。この街も普通のところと同じように罪を犯すようなやつが出てくるんだが、ここ数十年、罪を犯してこの街を出て行ったやつはいない。全員数日以内に街のど真ん中で縛られていたんだ」

「それがその「ヤツ」が作ったからくりだと?」

「そうだ。捕まったやつは「からくりに見つかった」と言っていたからな。この街の警備隊がそのからくりを探したが、どこにも影も形もなかった。からくりを作っている職人にも手当たり次第聞き、工房も調べたが、どこにもなかった。からくりならそんなことが出来るのは…」

「「ヤツ」だけだと」

「そうだ」


「本当にその「ヤツ」のいる場所は知らないの?」

「あぁ、警備隊が人の反感をかってまですべて家の中を調べたが、どこにもいなかった。が、気づくと「ヤツ」の作った新しいからくりはこの街に売られている。びっくりするようなものがな」

「へぇ、じゃあ探そうかな」

「正気か?」

「僕、商会を作る予定なんだ。だからそんな凄いからくりを作れる人なら欲しいな~って(でしょ?サクロウ)」

あぁ、少なくとも興味はある。


「俺からは頑張れとしか言えない」

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