第44話 シュテイル

馬車に揺られること数時間程度


馬車が止まった。

「着いたぞ。シュテイルだ」


俺たち以外には降りる人はおらず、クリットが降りたことをおじさんが確認するとそのまま馬車を出発させた。


確かに森があるな。

「(そうだね。トクル村の近くにある森よりかなり大きい…)」


着いた街、シュテイルの大きさはトクル村より大きく、王都より小さいっていうぐらいの感覚で賑わいを感じた。


「じゃあ、早速森へ…」

ちょっと待て!まず情報を得るのが先だろ!

「(えぇ~。森の中を歩いていればそのうち見つかるでしょ!)」

そもそもいなかったらどうする。だったら見たことがあるかシュテイルに住んでいる人に聞くのが先だろ。

「(あ~~。そうだね。…じゃあシュテイルに入ろうか。ギルドとか人がいっぱいいる店とかだったら知っている人がいるかも)」


シュテイルの中は昼のせいもあるが賑わっており、話を知っている人は多そうだ。ただ見た感じ冒険者のような装備を着ている人は少なく、逆におしゃれをしている人が多く、人が並んでいる店もあることからここが観光地のように見えた。


ギルドがないのか?街の外から来た人が多いみたいだな。

「(ニリストスの王都とは違うね。じゃあ、人がいない酒場に聞きに行った方がいいね)」

とクリットは路地裏に足を進める。が、俺はなんとなくこの街にがあった。王都には無いものがあるような気がした。


====


クリットがなんとなく入った路地裏で人がほとんどいない酒場を見つけて、そこに入った。

「いらっしゃい…。子供か?うちは酒場だぞ?」

ひげを蓄えた男性がそこにはいた。

「分かっています。ちょっと聞きたいことがあって、ウービーブライッシュって知っていますか?」

「あぁ、知っているが名を知っているだけだ。俺は見たことないな」

「そうですか…。じゃあ、ギルドはありますか?」

「……お前、シュテイルの外から来たんだろ?」

「はい」

「ギルドは王都ぐらい大きなところにしかない。ギルドから聞いていないのか?」

そんな説明あったか?


「(ないね)…知らなかったです」

「そうか。…なんか買え。そうしたら情報を教えてやる。猟をしている友を紹介することも出来る」

「じゃあ…」

変わるぞ。

ゴトン

「お腹がすいているので食べ物をください。情報の分も含めてこれで買います」

と俺は背負っていた荷物の中から金塊を取り出し、置きながら言った。もちろん鞄で見えないようにして[創造]で作ったものだ。

「…本物か?」

「はい」

「…用意をしよう」


====


料理を待っていると

「出来たぞ」

ステーキが出てきた。

「美味しそう。頂きます!」

「ああ。ところで情報はどこまでほしい?」

「(全部?)」

あぁ、この街に関係するものも含めてだ。聞き出してくれよ?

「(分かってる)…猟をしている友のこと。それとこの街のこと全部です」

「分かった。食べながら聞け」

「友はいつも通りならもうすぐ来る。ウービーブライッシュのことはその時聞け」

「分かりました。なにか払った方がいいですかね?」

「俺が酒をおごるから問題ない。あの量の金塊ならこれから話す情報を含めても足りないぐらいだからな」

「そうですか」


「で、この街についてだな。この街にいくつかの呼び名があることは…まぁ知らないだろうな。ギルドがあると思っていたぐらいだからな」

「はい」

もぐもぐ

「この街は商人の街やからくりの街って呼ばれている」

「商人はなんとなく分かりますけどからくり?」

「からくりはこの街で初めて作られたものだからな。その扉についているのもそうだ」

クリットが振り返って扉を見ると、扉の上部に木製の箱とそれにつながる木の棒が付いていた。

そうか!さっきの違和感はドアクローザーか。どこの扉も勝手に閉まっていたのはそういうことか。

「(ドアクローザー?)」

扉に触れずに閉めるためのものだ。


「でもこれだけでからくりの街って呼ばれているの?」

「それだけじゃない。人の形をしたからくりもある。…見たら人じゃないことがすぐに分かるようなものだが多少のことなら人と同じことができるから便利だ」

「へぇ」

「便利にしてくれたから誰も「」には逆らえねぇ」

「ヤツ?」

「からくりを作る天才だ。最初にからくりを作ったのも「ヤツ」、今でも「ヤツ」以上のからくりを作れる人は存在しない」

「でももういないんでしょ?あの扉に付いているからくりも古そうだし」

「いや、。どこにいるかは知らないが少なくとも「ヤツ」はからくりを作り続けている」

「生きているとしたら何歳?」

「100は超える」

「…そんな人いるの?」

「さぁ?」

なにかからくりがありそうだな。


「(…からくりだけに?)」


「まぁ、長くなったがこの街の呼び名としてこの2つが有名だがお前としてはもう1つの呼び名の方が重要だと思う」

「…それは猟に関係する?」

「いや関係しないが、お前のようにわざわざ裏に来るような人なら重要だ」

「それは?」


「この街は昔、の町と呼ばれていた」

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