第43話 狩り

クリットの誕生日を祝った後から3回目の休みの日 早朝


俺たちは以前買った剣を持ってギルドに来ていた。何故かというと


『ギルドで依頼を受けてみない?』

は?突然何を言っているんだ?

『いや。冒険者の登録をしたのに使わないのはなぁって思ってね。前の休みの日はゆっくりするのと建築士のところに行くのに使って、今はもうやることはないでしょ?なら行こうよ』

誕生会の次の日は1日ゆっくりして、その次の日に建築士のところに行ってある程度建てて欲しい建物の条件と構造を話し、一日中の話し合いの後すぐに建て始めることになった。もう少しかかると思っていたら前金をミクリルさんから貰ったみたいで、想像以上の太客と理解したらしい。


…勉強はどうした。

『今年の学園はほとんど終わっているし大丈夫。なにより僕の中にいるサクロウなら分かっているでしょ?』

…ならいいんじゃないか?

『やった!』


とウキウキしながら剣を取ったからだ。

「すみませ~ん!」

「なんだ坊主、依頼を受けに来たのか?」

「はい!でも初めて受けに来たので依頼の見かたが分からないんです」

「初めてっていうことはFか。じゃあこっちに来い」

受付のごついおっさんについていくと

「掲示板で依頼の確認が出来るのはしているよな?」

「はい」

「じゃあ、依頼の細かいところの見かただな。依頼が書かれた紙に色のついている印が着いているのが分かるか?」

掲示板の前に依頼を見ている冒険者がいるので見にくいが赤や黄色、緑色などの印があるのが分かった。


「はい」

「その印が自分の持っているプレートと同じ色なら同じランクだから受けられる。坊主なら赤だから赤色の印が入った依頼しか受けられないが、自分のランクより下のランクの依頼なら受けることが出来る。…まぁ、ランクが1つ違うだけで報酬もかなり変わるから、そうそう下のランクの依頼を受けるやつは出てこねぇ」

「そうなんですか。じゃあランクは早めに上げなきゃ」

「そう慌てることはないさ。初めての依頼だと動物を狩るのがいい。ギルドが依頼しているものだから期限はないからこの依頼から慣れていくのがいい」

薬草取りとかは無いんだな。専門知識が必要なのか?

「他には無いんですか?」

「後は魔物の倒す依頼とかだな。こっちはランクEからDの依頼なんだが何人も必要な時はランクFの冒険者でも受けることが出来る。ただ、実力が確認されてもし実力が足りなかったら受けることが出来ない」

「ギルド以外の依頼だと大体簡単な人が必要な手伝いだ」

「…依頼を同時に受けることはできるのですか?」

「大丈夫だ。ただ同時に2つの依頼を受けるぐらいだったら続けて依頼を受けた方がいいと俺は思うぞ」

「分かりました。じゃあその猪の狩りの依頼を受けます」


====


「猪を狩ってきました」

「早いな坊主。見せてくれるか?」

受付に見せるために外に案内した。


「ふむ。一撃か。猟をやったことがあるのか?」

「はい。父に連れられてやったことがあります」

「そうか」


ギルドの建物の中に戻り

「じゃあ、これが報酬だ。もう1回依頼を受けるか?」

「はい。なので掲示板を見てきます」

「ああ。決まったら持ってこい」


====


「さて、次はどれにしようかなぁ~」

と言っても動物を狩るしかないけどな。

「(そうだね。サクロウが選ぶ?)」

といわれてもなぁ。

掲示板を見ると先ほど受けた猪、うさぎなど俺も知っている動物が並ぶが、


ウービーブライッシュ?

見慣れない名前があった。

クリットは知っているか?

「(知らない。じゃあこれにしよう!)」

クリットは受付に行き

「ウービーブライッシュって何ですか?」

「ウービーブライッシュは見た目は鳥の動物だ。いろいろ他の鳥と違うところがあるが、中でも目を引くのはすごく臆病な性格だ」

「臆病ですか…」

「だからかものすごく逃げる。飛ぶ速さも走る速さも他の動物では追い越せないほど速い。さらに目がいいから自分を狙っていると分かったらこっちから見えていなくてもすぐに逃げ出す。なんともやっかいな鳥だ」

「逃げ出すぐらい。だったら、依頼するほどですか?」

「ウービーブライッシュの肉は他の鳥よりもうまい。食べ物に敏感な貴族なら大金をはたいて買うほどにな。それにうまいと思うのは人だけじゃねぇ、動物もだ。ウービーブライッシュが死んだらそこに多くの動物が集まる。危険な動物もだ。動物が変なところで集まらないようにするためにもこうして依頼するのさ」


「そうなんだ。ウービーブライッシュを狩る依頼を受けようと思っているのだけど、ウービーブライッシュはどこにいるの?」

「人の住む場所にはいねぇ。見つかったことがあるのは森か山の中だけだ。少なくとも遠出しないと会うことすら出来ない」

「これ、本当にランクFの依頼なの?」

「あぁ、見つけて近づくのが難しいだけでこっちに攻撃はしてこないからこのランクになっている。めんどくさいが受けるか?」

「もちろん。受けるよ」


====


ウービーブライッシュの狩りの依頼を受けた後、クリットは一旦家に帰り、遅くなるかもしれないことをマークスさんとメイヤさんに言って王都に戻ってきた。


「(どこ行こうか。ひとまず森や山があるところまで馬車でつれてってもらう?)」

そうした方がいいだろ。クリットなら走っても大丈夫かもしれないが…。

馬車乗り場に着くと

「おじさん。近くに山や森があるところまで行く馬車ありますか?」

「シュテイルなら近くに大きな森がある。冒険者か?」

「はい、プレート」

「赤か。まぁ乗ってけ。昼頃には着く」


そうして俺たちは馬車に揺られることになった。

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