第40話 城壁の外とミクリル
「土地がほしいのか?」
「そうです。僕、学園を卒業したら商会を作ろうと思ってます。というかすでに商会を作るために人を集めている最中です」
「商会か…。何を売るんだ?」
「最初は金属で作った商品を売ろうと思っていて、そこからどんどん商品を増やしていって、最後にはあらゆるものを」
「…まぁ、可能だろうな。お前の知識とクリットの[創造]なら」
「で、商会を作るために土地が欲しいと…。なんで城壁の外側なんだ?城壁の中なら人が多く、城壁が外からの攻撃を防ぐため安全なのだから、商品を売るのであれば中に作るべきなのでは?」
「やがてあらゆるものを売ろうとしているのです。種類が増えれば当然売る数も増え、準備する数も増える。場所は必要でしょう?もちろん、売る場所は別に城壁の中に確保しますが」
「つまり俺に国を守るための城壁のすぐ外に建物を作る許可をくれと言いたいんだな?」
「そうです。武器や多少の腕の立つ人がいる建物が城壁のすぐ近くにあるのは、敵との戦いでも役に立ちませんか?」
「それにこれを機に王都をもっと広げませんか?」
「俺の考えを見透かしているのか?広くする考えは大臣達に却下されて来たのだ。これ以上人が増えれば管理が出来なくなると言ってな」
案があるから変われ。
「…俺の考えですけど、大臣とかの王宮の役職の人に頼むのではなくてこれからそこに住む人に管理してもらうのはどうでしょう?」
「お前の考えか。だがそれでは嘘を報告されたらどうする?」
「それは大臣も同じでしょう?そんなことをされないように、他の住む人よりも得があるように契約すればいいのです」
「そして契約を破れば罰を受けると…。なるほど」
「管理の内容は大臣よりも軽くしましょう。そうでなければ大臣の意味が無いですから」
「そこら辺のことを今度の大臣達との話し合いで挙げてみよう。で、その足がかりという国のためになるから許可をくれと」
これなら折れてくれるか?クリット、続きの交渉を頼む。
「(…どうだろうね)」
「はい。なんなら商会が出来た後、得意様として「お前」という商品を使っても大丈夫ですよ?」
おい、勝手に!
「(これくらいしなきゃ)」
「ほう!それはいいことを聞いた。だったらこうしようじゃないか。俺は城壁のすぐ外に商会を作る許可を出す。そっちは俺の切り札になれ。時に俺の剣として、時に俺が知恵を得るために読む本として」
「え、僕もですか?」
「そうだ。もちろんお前だけでも魅力はあるのだが、騎士団団長よりも力があるクリットを遊ばせておく訳はない」
「…わかりました」
勝手に俺のことを売った罰だな。
「いつから建物は建てられますか?」
「正式な書類だができ次第だ。出来るようになったら手紙を送る」
後1つ聞きたいことがあった。ちょっと変わるぞ。
「(え…)」
「俺です。後1つ聞きたいことがあります」
「なんだ急に」
「ファル・アナラストという人を探して欲しいです」
「なぜだ?」
「商会を作り、動かすために欲しいからです。何でも珍しいスキルを持っているだとか…」
「そのスキルの名前は?それさえ分かれば楽に探せるぞ」
「なんでも、人に話せないスキルだとか。でも名前さえ分かれば探せよね?この国に住む人みたいでしたし」
「分かった。探したら交渉出来るようにすればいいんだな」
「はい」
「なら以上だ」
====
クリットが執務室を出て行った後
「…おい」
「はい」
カキカキ
「これの許可をするつもりだ。場の確認と大臣に言っておいてくれ」
「かしこまりました」
「後、国に出されているスキルがみたい。全てだ」
「…一緒に専門の者を連れてきましょうか?」
「頼む。なるべく早くな」
「かしこまりました」
ギィィィ、ガチャン
「…俺の記憶が確かなら人に話せない、噂にもならない様に秘密にされたスキルは1つしか知らない」
「しかも、クリットの作るやがてあらゆるものを扱う商会に有能なスキルと考えると…、それしかないな」
はぁーあ
「クリットに紹介するのはちょっと
====
ある学園の日 マリーの研究室
コンコン
ガチャ
「おや、クリットじゃないか!何の用かね?」
「先入ってもいいですか?」
「構わないよ。そっちの人もかい?」
「はい。僕が連れてきた人なので。一応学園内に入る許可は取ったので学園から怒られることはないです」
「ならいい」
クリット達は研究室に入り椅子に座った。クリットが連れてきた女性はクリットの隣に座った。
「初めての人がいるから自己紹介しょう。マリー・ハーヴェストだ。ここで研究をしている」
「クリットさんは…」
「僕は初めてじゃないからね。自己紹介して」
「分かりました。では
クリットの隣にいる女性はあの日被っていた帽子を被っていて学園にいても目につかない服装をしていた。
「ミクリルと申します。マリーさんのお荷物を移動させるために参りました」
ミクリルと名乗った女性は座りながら丁寧にお辞儀をした。
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