第39話 騎士団の問題と報酬
「ノルワール王の護衛なのは分かりますが、何をするときの護衛なんですか?」
「我が国ニリストスを含めた10国の王による話し合いがもうすぐある。簡単言うと、その話し合いの場に行くからこの国を出てから帰るまで護衛をしろってことだ」
「なぜ僕なんですか?」
「お前が都合がいいからだ。本当なら国家騎士団から選びたかったが…」
「団長や副団長がいるのに?」
「執事に一対一なら絶対に勝てると言ったらしいじゃないか。ならなおさらお前に任せるのがいい。団長との一対一も随分押していたことからも少なくとも団長と同じだけの力があるのは分かっている」
…それ以外の理由がありそうだな。
「そうですか」
「で、護衛は受けてくれるか?」
「…護衛している間、学園の授業はどうなりますか?」
「心配するな。王宮から手紙を送り、影響が無いようにする」
「…じゃあ受けるしかないですね」
ハッハッハァ
「この国の王の依頼を王の目の前で嫌がるとは!」
「団長か副団長に頼めば済む話では?」
「…今の騎士団には2つの勢力がある。団長派と副団長派だ」
「対立しているってことですか?」
「お前の考えるような対立じゃない。が、それが今の騎士団をとてもややこしくしているのは間違いない」
「ややこしい?」
「騎士団の団長などの役職が誰になるのかは完全に力で決まる。前の団長が病で亡くなったのだが、このときの次の団長候補が現団長アウグトラ・トウトと現副団長グラウス・シルフェルだった」
「?今の団長が今の副団長に勝っただけでは?」
「グラウスは団長を決める戦いに来なかった。だから団長はアウグトラになった。だが騎士団では当然納得のいかない者もいて、それがそのまま今の勢力になっている」
団長か副団長かどっちが強いかがまだ完全に決まっていないのか…
「もしどっちかに護衛の依頼をしたら…」
「団長と副団長の格付けを俺がすることになる。今まで一対一で格付けをしていたのにだ」
「2人に頼むのはダメなんですか?」
「ダメだ。同盟も組んでいる国との話し合いなんだ、警戒し過ぎはマズい」
「じゃあ僕がいいですね。分かりました」
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「次はお前の力だ。説明してくれるか?」
「はい」
クリットは自分の知る限りのスキルの情報を喋った。
「なるほどだからそのスキルなら材料さえあれば道具が作れると。…騎士団とのときは材料をどうした。それに今までに作ったからくりも知っていたことになる。今の説明だと知らなかったら部品も作れないはずだ。…話してないことがあるな」
「(どうする?話す?)」
交代しろ
「知識を持つ俺がクリットの中にいるからです」
「ほう?お前はクリットじゃないのか」
「そうです」
「どこまで知識があるんだ?お前には」
「すべてはないです。この国の先のことなんて知らないですけど、役立つ知識ならあります」
「そうか。あのからくりも」
「知識です。もっと広い場所と材料が揃えば高性能のものは作れました」
「今じゃ無理だと?」
「王宮の壁で囲まれた場所全部を使いたいと言ったら?」
「それは無理だな。だが準備ができたら作れると?」
「そうです。熱することも浄化魔法も必要はない水を作れる程のものが作れます」
「なるほどな。スキルはお前が使うのか?」
「はい。ただ今まで交渉していたのは全部クリットです。俺はスキルを使う時以外は用がない限りはクリットの体を使って表に出てきません」
「大体分かった。じゃあ、お前を呼ぶ時は「お前」と呼ぶ、クリットの時は「クリット」だ」
「分かりました。ちなみに訓練所でのことを踏まえて護衛を頼んでいるのでしたらほとんどクリットの力ですので、相談はクリットにしてください」
「そうだな。力任せに団長を飛ばす様なスキルじゃないもんな。じゃあ、クリットに変わってくれ」
ほいっと
「クリットです」
「クリットは団長、副団長に勝てるそうじゃないか。詳しくどのぐらいで勝てるか?」
「鎧に相手の攻撃を受けずに勝てます。相手より早く動けばいいので。殺してもいいのであれば、思いっきり剣を振るって相手に当てればいいのでもっと楽に勝てます」
「捕らえることは?」
「相手の武器をたたき落として縄で縛ればいいので出来ます」
「見張りはやったことあるか?」
「猟でたまにやりました」
「ならいい。…なに、移動の時も護衛が出来るのか質問しただけだ」
「そうですか…」
護衛やって本当に良かったのか?
「(滅多にないからね。特に王の護衛なんかは)」
「じゃあ、詳しい日や護衛の内容は手紙を送る。…トクル村だったよな?」
「はい。家の特徴とか言った方がいいですか?」
「いや、人の名前と住んでる町や村の名前さえ分かれば王宮で調べられるから大丈夫だ。次に報酬なのだが」
「報酬なんですが…いいですか?」
「言ってみろ」
「前に王宮内に作ったからくりの報酬と合わせてでいいので、国の城壁のすぐ近くの土地をください」
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