第38話 初めての試飲

次の休みの日


今日は何かあるか?

「(うん?今日はのんびりかなぁ~)」

休みの日だしな。今まで休みの日なのにゆっくり休んでいなかったからのんびりするのもいいか。

「(サクロウはなにもやらなくていいの?)」

後は待つぐらいしか…。ギルドで依頼を受けるぐらいか?でも、まぁやらなくてもいいか。


そんなことを考えていると

「クリット!起きているか!」

「起きてるよ!」

「なら降りてこい!猟に行くぞ!」

「は~い!(今日は猟だね)」

じゃあ、俺の出番はないな。


降りると猟の用意をしたマークスさんと朝食の用意をしているメイヤさんがいた。

「俺はもう外で用意しているからごはん食べたら来い」

「分かった。今日は?」

「ちょっと遠い森だ」

「あそこね」

「あぁ。じゃあ、待ってる」

と言ってマークスさんは家を出て行った。

朝食はすでにテーブルに並べてあった。

「気をつけていきなさいよ。分かっているとは思うけど」

「うん。お母さんはこれからごはん?」

「ええ。だけどお母さんの分は今作っているからここにあるものはクリットの分よ」

「分かった!」


====


朝食を食べ終わり…

「じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」


外に出ると弓を装備し、準備万端なマークスさんがいた。

「準備はいいか?」

「大丈夫。弓と矢、剣も持ったから」

「じゃあ集合する場所まで行くぞ」

と村の入口まで歩いていくと

「あ、クリット!いたいた!」

と見覚えのある茶色の短髪をした女子が走ってきた。

「ミルドさん!?」

「友達か?」

「友達?というか…知り合い?」


「まぁ、そうですね。初めまして、ミルドといいます」

「で、はい」

とミルドは1通の手紙をクリットに渡した。

「これは?」

「見れば分かる。ではこれで」

と言ってミルドは村とは反対方向、王都の方向へと歩いていった。


手紙の内容は?

「(今すぐ見る)」

で封がされた手紙を開けると


この前のことに関してか…

「(そうだね。今日行かなきゃ)」

大丈夫か?

「(猟はただの手伝いで行っているだけだから僕が行かなくても大丈夫)」

じゃあ…

「どうだ?」

「うん、今日やらないといけないことが出来たから一緒にいけないや」

「その手紙のことか?」

「うん」

「わかった。行ってこい」


====


王宮 王の執務室


「よう。来たな」

「はい」

「いろいろあるが座れ」

テーブルを挟んでノルワール王と向かい合うように座った。


「今日来てもらったのは他でもない、作ってもらったからくりに関してだ」

「使ってみてどうでしたか?」

「俺はまだ飲んでいない」

「え?」

まあ、そうだろうな。王なんだから実験体にはならないだろう。

「安心して飲めるまではここまで来ないからな。だが部下から評判はいい」

「そうなんですか」

「入れ」

その声に合わせて、メイドが部屋に入ってきた。

そのメイドの持つ長方形のトレーには水の入ったガラスコップが置かれていた。


「だから今から飲もうと思う。お前も飲め」

「は、はい!」

クリットがテーブルに置かれた目の前のガラスコップを手に取ると

「…冷たい」

「そうだ。水属性魔法が使える魔導師を呼んで冷やしてもらった。さらに食材などを冷やす魔導具の改良をしているところだ」

「ということは今まで水は冷やせなかったのですか?」

「いや?水は今までも冷やすことは出来たがそれよりも食材の方が重要だからな。単に水を冷やすだけの余力が魔導具になく、魔導具を改良するだけの余力が人になかっただけだ」

ということは氷属性魔法とかあるのだろうか

「(どうだろうね)」


「ひとまず、飲もう」

ノルワール王が水を飲んだのを確認してクリットもガラスコップを傾けて水を飲む。


ゴクゴク

どうだ?

「(美味しいかどうかは分かんない。冷たい!)」

まあ、そうだろうな。

「ふむ。飲める水だな」

「味が分かるんですか?」

「いや、匂いが井戸の匂いじゃないってことが分かっただけだ。おい!」

と水を持ってきたメイドに問いかける。

「はい」

「この水を作るためにどのぐらいの手間がかかったか?」

「そこまでかかっていません。なのでこの場でご説明いたします。クリット様が作ったからくりに水を通し、出てきた水を熱した後水属性魔法を使い冷やし、持ってきたものがこちらとなっております」

「なぜ熱した?そのまま冷やせばいいだろう?」

「安心して飲んでいただくためです。一応からくりに通した水も飲むことも私どもで確認していますが、クリット様から熱するか浄化魔法を使ったほうが良いと言われましたので」

「…それは本当か?」

「はい」

「そうか、ならいい。下がってよい」

「かしこまりました」

とメイドが部屋を出て行った。


「僕の言葉を信じてよかったのですか?」

「信じるしかないだろうし、お前が俺に逆らう訳がない」

「不満に思って反乱を企てていたらどうするのですか?」

「お前ならこんな水を使わずとも反乱を成功させられるだろう?あのがあれば」

「力とは?」

まぁ、あれだろうな。ようやくその話か。


「とぼけるな。今日呼んだ本題はその力の内容と俺のについての話だ」


護衛?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る