第36話 訓練の跡
「(避けたからよかったけど、あれを受けるのはキツイね)」
見えなかったな。
「(見えたよ?剣を振っただけみたいだね)」
剣を振っただけでこうなるのか…。流石は団長っていったところだな。
「(…行くよ)」
クリットは団長に接近し、剣を振るうが…
「…重いね」
剣で受け止められる。そしてそこから斬り合いが始まった。
ガギッ ギン キンキンギン
「目がいいのかな?騎士団にも入っていない学園の生徒が私の攻めを受けきれるとはとても思えない」
ギチギチ ギャリ
「父についていって猟に何回も参加しているからでしょうか」
クリットは剣同士の押し合いの中で答えた。
「もしそうだったら騎士の訓練に猟を加えようじゃないか」
「冗談ですよね?」
「もちろんさ。ただ証明出来たらこの限りではないが…ね!」
ガギン!
クリットが空中に浮かされ、弾き飛ばされた。
距離を無理やり取らされたな。
「(来る!)」
ドゴォォン
「…地面に足がついていないから当たると思ったが…」
「まぁこのぐらいなら」
「あの一瞬で剣を地面に突き刺し、足場にして避けるとは…」
「予想外でしたか?」
「いや、君ならやれるとは思っていたよ。剣を作れる君なら」
「そうですか」
クリットはさっきと同じ、俺が[創造]で作った剣を手に言う。
「むしろ、これだけですか?騎士団の団長とあろう人がこれで大丈夫なんですか?」
「言うね。そんなに言うなら…」
ガ ガ ガ ガ ガン!
さっきよりも数段速く力のある斬り合いになり、クリットは急激な速さにすぐに対応しきれず押され、後退しながら対応する羽目になった。
「(…そういえばさっき2回あった大きい振りかぶりの後に起こった強い攻撃、なんか変じゃなかった?)」
おい、集中しろ!
ガ ギギギギッ!
「(大丈夫。それよりも変だと思ったんだけど…)」
おいおい。まぁ、それは魔法だからだろ。
クリットが変だって思ったところは地面を捲りあげただけにしては瓦礫の量が異常だっていうところだろ。土属性魔法で生み出した瓦礫で何かをしたのであれば説明がつく。
「(なるほどね。距離を取ったのは団長と僕の間に瓦礫の素を生み出すためってことね。こんな風に)」
はぁ?
ガギン!
クリットの体はまた空中に浮かされ、そこにはちょうど剣を振りかぶる団長の姿があった。よく見るとクリットと団長の間の地面が少し盛り上がっているように見える。
「仕組みさえ分かればこっちのものです」
「!?」
クリッとは空中で体をひねり、剣を盛り上がっているように見える地面に思いっきり投げた。
ドッガァァァン!
投げられた剣は空中に投げ出されている人が投げたとは思えない程の威力があり、団長がクリットに向けて用意していたと思われる瓦礫はすべて団長に向けて飛ばされた。
「(これで良し!…と)」
お前なぁ…。剣は作り直しておく。
「(ありがとね)」
地面に投げた剣は今は瓦礫が飛ばされたことによって出来た砂煙の中にある。そのため安全策を取り、剣を作り直し砂煙が晴れるのを待とうとした時
「そうで…なきゃなぁ!」
と鎧に細かな傷をつけた団長がクリットに向かって突っ込んできた。
「(来たか)」
クリットはもちろん受け止める気でいるが…
「そこまでです」
と団長の剣を跳ね上げて団長を無力化しながら背の低い謎の人物は高い声で言った。
====
「?誰ですか?」
「グラウス。この戦いがどういう訳で行われているか、分かっていますか?」
「もちろん。王宮が関わっていることも重々承知です。ですが、その王宮に支払ってもらうお金をこの一対一で増やすのはいかがなものかと...」
「……はぁ~っ。これで十分か?」
と客席にいる執事に向かってアウグトラ団長は大声を上げた。
……十分だそうです!
「…これでいいかな?」
「はい、大丈夫です。割り入ってしまいすみません」
「クリット君、ということで今日は終わりだ」
「あ。はい。ところでこちらの人は…」
「私ですか」
謎の人物は兜を脱いでこちらを向いた。銀色の短髪に幼さが残る顔が目に映った。
「騎士団副団長のグラウスと申します」
====
執事と一緒に訓練所から王宮に帰る途中
「これで十分でしたか?」
「はい。私の感覚としては十分すぎる感じる程です。スキルのこともどういうことができるのか分かりましたから」
あの後、[創造]で訓練所の壊れた部分を直したところとても驚かれた。
『剣を作るだけじゃないのか…』
『えぇ、まぁ』
といった感じにだ。
「今の団長、少しだけですが副団長の実力はどうでしたか?」
「強かったですよ。一対一なら確実に勝てますけど」
「そうですか」
執事の声こそ冷静だったが、顔には「こいつマジか…」みたいな表情をしていた。
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