第34話 1 on 1
クリットは執事から刃が潰されている剣を受け取り、騎士が訓練をしている訓練所に入るとすぐに
「ではここで少々お待ちください。騎士団の団長をお呼びしてきます」
「はい」
結構、訓練所の中は大きいんだな。
「(まぁ、そうでしょ。騎士の数は多いから。それよりもわくわくするね!)」
…戦うのが好きなのか?
「(あぁ、そういうのじゃないよ。自分の力が示せると思うとね…。なかなかこういう機会も無いし)」
それならよかった。戦うことが好きな怪物じゃ無くて本当に。
「(怪物なんてそんな…)」
「君がクリット君だね?」
「あなたが団長ですか?」
クリットの目の前には若い男性がいた。
「そうだ。私は国家騎士団団長のアウグトラだ。よろしく」
「よろしくお願いします」
「執事から要件は聞いた。一対一の訓練をしてほしいのだとか」
「そうなんでしょうか?騎士と相手をしてくださいとしか聞いていないので」
「間違いはない。騎士と一対一で戦うだけだからな。騎士団の所属でもないからそれ以上にやることはない」
「そうなんですか...」
「あぁ、まぁ終わらせるかどうかの判断は執事に任せてある」
コロッセオに似た訓練所の客席部分に目を向けると先程の執事がいた。
「逆にいえばあの執事が「終わり」と言わない限りはいくら音を上げようと終わらないわけだ」
「そうですか」
「…いいのか?」
「執事を認めさせればいいのですから大丈夫です。それに命を奪うまではやらせないでしょう?」
「そうだな」
====
アウグトラ団長がフィールド内の壁により、クリットの真反対から騎士が出てきた。もちろんクリットも戦う相手も全身に装備をつけている。
「じゃあ、まず禁止する行動とやるべき行動を宣言しよう」
1つ:人の命に関わるような攻撃することは許されない
2つ:片方が負けを認めた際にはもう片方はその時から攻撃を止めなければいけない
3つ:片方が気を失ったなど動きが見られなくなった際にはもう片方は攻撃を止め、判断を他の人に任せること
「この3つのことが守られない場合は厳しい罰を、もし相手の命を奪った場合はさらにそれ相応の罰を与える。またこの訓練の勝敗は私アウグトラが公平に判断する」
クリットは剣身に片手を添えながら目をつぶった。
なんだ?
「(いつもやっていることだよ?)」
ルーティーンってことか
「わかったかな?」
「「はい」」
「なおこの一対一の訓練はこの場にいるある者の判断のみで終わらせることができるものとする。もちろん日を跨ぐ、人の命を奪うようなことがあればこれにはよらない」
「では、始め!」
====
ザワザワ
決着は案外早くついた。
「ふぅ~。これでいいんですよね?」
そこには相手の首に剣を突きつけたクリットがいた。
相手は武器を手放し、震えながらに両手を上げ降参をしている。
「勝者はクリット!」
早いな…。
「(まぁ、このぐらいなら)」
コソコソ
「これは…予定変更だな」
「クリット君。休みは必要かな?」
「必要ないです」
「では、少しその場で待ってもらおう」
====
しばらくすると先程相手にした騎士とは別の人がフィールドの入口から入ってきた。
その騎士の身に着けている装備は明らかに長年使っていると分かるようなもので所々に補修やその人に合うように後から変更された跡があるのが分かる。
多分次は騎士でもかなり熟練の騎士が来るぞ。
「(分かるよ、それぐらい。だから気は抜かないよ)」
「クリット、といったかな?」
「あ、はい」
「こちらは本気でいかせてもらいますよ。先程みたいに手加減してもらわなくて構いません。この鎧の通り、長年戦いの場に身を置いているので」
「…そうですか」
手加減していたのか?
「(いや~、若いのに今負った傷で騎士を辞めてもなぁ~って思って)」
…どこで「若い」って分かったんだ?
全身鎧で覆われていて顔や体つきで判断できないはずだが…。
「(勘。近づいたら僕より少し上ぐらいかな~ってはっきりしたけど)」
「では、2人ともいいかな?」
「大丈夫です」「…団長、合図を」
「…始め!」
====
ガッ
「先程と同じようにはいきませんよ」「まぁ、そうでしょう…ね!」
クリットは騎士に接近すると、さっきと同じように剣を使わずに膝から下の部分を狙って蹴り上げようとしたが、相手の騎士が剣を地面に突き刺し防いだ。
その後、クリットは体をひねり殴りかかるが片手に装備していた盾で防がれ、お返しと言わんばかりに騎士は剣を地面から抜き、振りかぶったがクリットは地面を蹴り、後退した。
「手に持った武器を使わないとは...。
「だったら」
グッ
「っ!?」
ドン
「力で押す」
クリットはすぐさま騎士の目の前に移動すると剣を振りかぶり、騎士を壁に吹き飛ばした。
パラパラパラ
騎士が壁にぶつかるまでに地面に当たった影響か壁が崩れた影響か騎士の姿は砂煙で見えない。…がクリットは
「ふっ!」
剣をトドメと言わんばかりに砂煙の中に投げ入れた。
罰を食らいたいのか?
「(大丈夫。それにあの人は多分気を失っていないと思うよ。あ、剣投げちゃったから交代して作って)」
お前なぁ。
「(っ!ちょっと待って)」
カッ
「ふぅ」
クリットは飛んできたものを避けた。飛んできたものは剣身のかけらのようだ。
「武器は無くなりましたがまだ続けますか?」
砂煙の中から鎧に傷が入り盾を持ってない騎士が現れた。
「もちろん」
俺はそういうと手の中に[創造]で今のクリットの一振りでも耐えられるような丈夫な剣を創造した。
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