第31話 王の依頼
「(サクロウ、この人は…)」
ああ、分かってる。この国の王だろ?
じゃあ…
「何か困っていることは無いでしょうか?またはこれがあったらいいなぁだとか」
すると
「あっはっはっはぁはっ!」
突然笑いだした。
「はい?」
「はぁ、それを俺に聞くか!自分で考えずに!」
「…なにかお気に障りましたか?」
「いや、馬鹿にしている訳じゃない。むしろ期待通りだった」
「期待通り?」
「ああ。普通の職人だったら王に技術をみたいから何かを作れと言われたら自慢のものを作る。もちろん王宮に得のあるものではあるが皆自分の技術を優先する。それはそうだ。なんせ俺が見せて欲しいのは技術なのだから」
「だが君は技術よりも王宮に欲しいものを優先した」
「そんなつもりはないんですけど」
「まぁ、そうだろうな。だが俺の期待通りの答えを出した。だからこれも期待に答えてくれよ?」
「これ?」
「安心して飲むことが出来る水を作れる道具を作れ。もちろん君がいなくとも動くようにな」
「水ですか…」
コンコン
「失礼いたします」
「紅茶をお持ちしました。こちらに置かせていただきます」
「知っている通り、井戸から直接汲んできた水は飲めたもんじゃない。浄化魔法を長い時間使ってやっと飲むこと出来る程だ」
「だから紅茶なんかの熱してそのまま出す飲み物しかだせん。寒い時はいいが暑い時は地獄でしかない。だから温めないで飲めるものが必要だ」
「…紅茶が冷めるまで待てばいいのではないですか?」
「冷めた紅茶は確かに飲めるが味は格段に落ちる。少なくとも位の高い者が飲むような味にならない」
意図的に急冷したわけじゃないから当然か。
「難しいか?」
「いえ、やりましょう。どこに作れば良いですか?それと材料は…」
「好きなところに作れ…と言いたいが好き勝手に作られても困る。だから場所についてはメイドの指示に従え。材料は無駄にしない程度ならいい」
「かしこまりました」
ごくごく
「では今すぐ取りかかりましょう」
====
ギギィ、バタン
「…」
ギィィ
「失礼致します。話し合いが終わったとのことで」
「…どう思った?ここまで案内してきて」
「クリット様はとても素直なお方ですね。気になったことはすぐに聞いてくる、考える早さは凄いと思います」
「そうだな。…もうすぐ来るあの件に関して揉めていてまだ決まっていなかったよな?」
「はい、そうです。…クリット様をご指名と?」
「ああ。やつの実力次第だが、そのときは指名したい」
「失礼ですが、その決断に至った訳は?」
「紅茶を一気に飲んだからだ。一緒に来たはずの俺の紅茶はまだ熱く、とても一気に飲めるものではない」
「体が丈夫なだけではないでしょうか?」
「それならそれでいい。だがもし魔法によるものだったら?もしスキルによるものだったら?」
「ハハ、すでに期待以上かもしれんな」
====
王宮 通路
今俺たちはメイドの案内でこの王宮で使われている水源に案内してもらっている
「(策はあるの?)」
ある。まあ、王宮にある材料次第なところではあるけどな。
まずは水源を見てみないと
「これです」
案内された場所には井戸があった。
「王宮が建てられたと同時に地下にある水を溜めるために作られました。毒を入れさせないために警備を厳しくしていて、さらに井戸の中にある水に直接触らせないようにしています。そのため井戸の中は綺麗とは言えません」
「それは王宮の飲み物としてはダメなのでは?」
「毒を入れられるよりはいいかと。王宮の使用人が使える浄化魔法はこの井戸の邪魔なものを除くことはできますが、この井戸に普段ない他のものは無理です」
「つまりここに毒を入れられたら大変なことになると」
「はい。井戸が使えなくなることは間違いありません。毎回飲み物をお出しする際には毒見をしていますので王宮内で毒が原因の死人は毒見役だけになるはずです」
「…そうですか」
それだけじゃ、防げないんだよなぁ。
「(それ、ホント?)」
ホント
「だいたい井戸のことはわかりました。次に使っていい素材がある倉庫に案内してもらえますか?」
「かしこまりました」
====
「ここが倉庫です。この中にあるものはすべて使っても構いませんが、使いすぎには注意してください」
「じゃあ砂と炭、石に大きい布、それに大量の鉱石を道具を作って欲しいところに運んでください」
「…鉱石以外はそれぞれ樽やかごいっぱいということでしょうか?それと鉱石の種類はどれでしょうか?」
「そうです。樽やかご1つぐらいでいいです。鉱石の種類はなんでもいいですし、混ざっていても構いません」
「かしこまりました。すぐに準備をいたします」
「ちなみに炭はどこにありますか?」
「はい。こちらです」
案内された場所には2種類の炭があった
「炭には2種類あって木から作られたものと鉱石として掘られたものがあります。ちなみにどちらを選びますか?」
「どちらでも構いません」
どっち選んでも炭であることは変わらんからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます