第30話 王の前
次の日 朝 コーエンの店
「おぉ、来たか」
「朝早くに来たんですけど迷惑じゃなかったみたいですね」
「まぁミルドはまだ来ていないから早いのは違いねぇ。で、本題だが…」
するとコーエンはカウンターから1枚の手紙を取り出した。
「お前宛だ。俺は内容を知っているが読め」
「はい」
その手紙は昨日来た手紙と同じで王宮の紋が入ったものだった。
手紙を開けると
「…僕の話を聞きたいと」
「ああ。昨日王宮に呼び出されて執事にいろいろ話をさせられた。どうしてあの量の鉱石を掘り出し、納めることが出来たかとかな」
「そこで僕の名前を出したと」
「そうだ。話した後は洞窟に行き道具も調べられたからな。そこまでされたら話さないのは不利と思った」
「そうだね。…最初から僕の名前を出せば良かったんじゃ?」
「クリットのことは秘密にしておきたかった。国に取られるのは癪だからな」
「そうなんだ」
「取り合えず行ってこい。その手紙を王宮の門で見せれば王宮に案内される」
「服装は?」
「そのままで大丈夫だ。下手に学園の制服で行くよりはマシだ」
====
ということで王宮の前の門
「(ここまで僕が来たけどあの道具のことだからサクロウの方がいいよね?)」
そうだな。じゃあ交代してくれ。
交代して門番に話しかけ、しばらく待つと執事が来た。
「朝早くにご苦労様です。手紙の内容のことに関してお越しいただいたということでよろしいでしょうか?」
「そうです」
「それならば案内致します。ですがその前にお荷物を調べさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
そう言うと複数の人が荷物をチェックし始めた。
「お荷物を調べている間やしばらくは退屈でしょうからこちらにどうぞ」
「荷物は少ないですがそんなに時間が必要ですか?」
「お荷物の調査だけで無く、こちらにはいろいろな準備がありますので」
「そうですか…」
話をしていると俺が待つ予定の部屋に着いた。
「なのでこちらでお待ちください。お食事なども必要であればお持ちします。それ以外のご用の際は扉の外で執事がいますのがお声かけをお願いします」
すると執事が部屋から出て行った。
「(結構豪華なお出迎えだね?)」
「だな」
「(なにを聞かれるんだろう?)」
十中八九道具に関してだろ。じゃなきゃ名指しでクリットを呼び出す意味がない。
「(…そうだね。もし[創造]を使えって言われたら報酬を要求する?)」
もちろん。この国の王からの頼みだろうとお返しなしではやらない。クリットはそれでいいかい?
「(いいよ)」
しばらくクリットと今日のことに関して予想をしていると
コンコン
「よろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「失礼いたします。準備が出来ましたのでご案内致します」
どこに案内されるんだろうな。
====
執事に案内された部屋は豪勢な扉…ではなく、俺らが待っていた部屋とほぼ同じ作りの扉の前だった。
コンコン
「クリット様をお連れいたしました」
ギィィと執事が扉を開ける。
「クリット様。どうぞ」
「あ、はい」
扉をくぐったその先は執務室の様になっていて、壁にそってかなりの数の本棚があった。俺たちの真っ正面には木製の横長のデスクがあり、備え付けられている椅子に男性が座っていた。
「では」ギギィ、バタン
と執事は部屋を出て扉を閉めた。…え、1対1?
「君がクリットか」
「は、はい」
「まずは飲み物でもどうだい?長話になる予定なのでね」
「え、そうなんですか?ではいただいてもいいですか?」
「あぁ、構わない。…紅茶を頼む」
するといつの間にか後ろにいたメイドが
「かしこまりました」
と言って部屋を出て行った。
「では、座ろう」
といって上質な皮で作られたソファに案内された。
「飲み物が来る時間すら惜しいからな。単刀直入に言おう、あの道具はどうやって作った?」
「あの道具というと?」
「小さな鉱石商コーエンの所有物である洞窟にある道具だ。コーエンから君が作ったという話をされたそうだが。間違いはないな?」
「そうです」
「王宮の魔導師や鍛冶職人、金細工職人の数人に見てもらったが、とても精巧だという結果が返ってきた。数人の職人に全く同じものを作るのは難しいと言わせたほどだ」
「だからこそ気になる。王宮が抱えている職人に高い評価を貰えるほどのものが、貴族ですらない学園に通う一介の学生に作ることが出来るのかどうかが」
「それは試しに作ってくれと」
「そうだ。今は難しいだろうから王宮に通って構わん。その技術で王宮にとって得になるものを作れ」
「それは命令でしょうか?」
「あぁ、このノルワール・ニリストスのな」
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