第28話 図書館の守護者

「はぁ?ってなんですか!」

「いや、こっちが聞きたいんだけど。本が好きだから僕の行動が気になったって」

「それは単純ですよ。本を傷つけないか、図書館の規則を破らないか見ていたんです。本が好きな私としては許せないので」

「僕を見ていた理由は?」

「不審な行動をしていたからです。大体勉強するとしても広げる本は2~3冊ぐらいでいいはずなのにそれ以上の数の本を広げていたら、何か仕組むのではと思いますよ」

そうだな。


「悪いことはしてないよ。勉強しているだけで、いろいろなものと見比べたかったんだ。本や資料はちゃんと元の場所に戻しているし」

「そうですか。確かに世界の歴史と地図を見比べるのは納得がいきますね」

「…僕からも質問いいかな?」

「はい。どうぞ」

「いつもこんなことをしているの?」

「そうですよ?本を戻さなかったり、本をかなり雑に扱ったり、時には盗むような人もいますから。私から逃げようとして魔法を使う人には実力で黙らせて先生に突き出します」

「実力で?魔法?」

「そうですよ?これでも私は全ての属性の魔法を使えますし、[属性強化]のスキルで魔法の強化もバッチリです」

全属性…マジか。


「でも先生に突き出してもサリナリが疑われるんじゃない?」

「私は一応先生から図書館の管理が出来る権利が与えられています。規則を破った人への制裁の他には本の移動や質の管理なんかしか出来ませんが…」

「なるほど、それで疑われないと」

「はい」

すると


「遅れて悪いね。時間を忘れて実験をしていてね」

マリーが来た。

「大丈夫です。本を用意していましたから」

「…おや、話している途中だったかな?」


「大丈夫ですよ。丁度きりがいいところでしたし。1つ上の学年ですよね?」

「君が彼と同じ学年だったらそうだねぇ」

「はい、彼クリットさんと同じ学年なので1つ上ですね。あ、ちなみに図書館ではなるべく静かにしてく…」

「クリットじゃないですか。こんなところで何をしているのですか?」

なんでアキリーナも来るんだ?


「アキリーナはもしかして本を探しに来た?」

「そうです。火属性魔法の本を探しに来ました」

「じゃあサリナリ、アキリーナと一緒に本を探してくれないかな?多分かなり多くなると思うから」

「そうですね。いろいろな火属性魔法が知りたいので」

「じゃあ、案内します。えっとアキリーナさん」

「分かりました」


「ちょっと待ってアキリーナ」

「何ですか?」

「サリナリと少ししゃべりながら探してみて。彼女はいい人だと思うし、火属性魔法も使えるから相談すれば乗ってくれるかもしれないから」

「…分かりました。それでも大丈夫ですかサリナリさん?」

「大丈夫です!むしろあのアキリーナさんと火属性魔法の勉強する機会をもらえるので大歓迎ですよ!」

そうして2人は本を探しに離れていった。


「火属性…、もしやファブライトか」

「そうですよ。その反応は知らなかったみたいですね」

「私は特に誰がどこの家とかは興味ないんだ。だけどファブライト家が火属性魔法で有名ってことは知っている」

「やっぱりそれだけ有名なんですね」

「君は彼女と知り合いみたいだねぇ。ファブライト家も取り入れる気かね?」

「アキリーナと知り合ったのは鉱石を溶かすための火属性魔法を作りたかっただけですからたまたまです」

「でも協力は欲しいのだろう?」

「そうですよ。ただ一方的じゃなくて、俺のやりたいことに協力してもらえるならこちらも相応の対応をします。報酬は重要ですから」

「それは私の家も誘っているのかな?」

「どう受け取るのかはマリーさん次第ですよ?協力してもらえるならありがたいです。貴族からの協力は貴重ですから」



====



「火属性魔法の本はここらへんですかね」

パラパラ

「そうですね。ぱっと見でも知らないものが描いてある」

「…仲良くしましょうよ!」

「え?」

「さっきのクリットさんの言葉は多分仲良くしてくださいってことを言っていたんですよ」

「…そんなこと言っていませんでしたけど」

「確かにクリットさんがどういうつもりで言っていたのかは分かりません。ですが言葉通りにしゃべりましょうよ。言葉通りに火属性魔法について相談しましょうよ。仲良くするのにもそこから始めないとどうにもなりませんし…」

「…分かったわ。じゃあしばらく相談に乗ってもらってもいいですか?」

「もちろん!」



====



しばらくマリーを先生として言語の基礎的な勉強をしてると

「なにか質問はないか?…とは言っても君はかなり理解しているな。進みが早い」

「じゃあ、別なことの質問をしていいですか?」

「なんだね?」

「魔臓についてどのぐらい分かっているのですか?」

「魔臓についてか…。私の分かっていることだな?」

「はい」

「まず、魔臓は目には見えないが確かに私達の体の中に存在してる。ここまでは今時期の授業でやっているはずだ。君は魔臓のことが授業で聞いたから質問したのだろう?」

「ついさっきの授業で聞きました。魔臓が壊されたら死ぬか魔法を失って生きるかって」

「そうだ。だが右の胸あたりにあるとだけで詳しくどこにあるかすら分かっていない。そんな中、数年前に分かったことはある」

「それはなんですか?」


「魔法を失う原因が無属性魔法のにあることだ」

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