第27話 本の虫

3日後 学園


クリットは授業を受けていた。この授業の内容は魔導師についての基礎的なことだ。


てかクリットはこの授業を受けなくていいじゃん。魔導師になれないんだから。

「(魔導師の基礎的なことと言っても単純に魔導師にしか役に立たないことだけをやる訳じゃないから。例えば傷薬の話とか魔法に合わないものの紹介とか)」

そうなのか。そういうのに興味があるからこの授業を受けているんだったな。悪いな邪魔して

「(いいよ)」


「…そして魔法を打つことができる。このように「魔法の式を作る」、「魔力を込める」、「作り出した魔法を操る」、この3つが魔導師にとって、いや魔法を使う上で重要であることが今までの歴史が証明していて、どれかが欠けた瞬間に魔法を満足に使うことが出来なくなります」

「式を知らなかったら魔法を作れないのは当然として、操ること出来ない場合には自分で作った魔法に自分の命を脅かされることは覚えておいてください」


自分に魔法が来る時があるのか…


「ですが一番気をつけて欲しいのは魔力を生み出す源である魔力源である部分を壊されること。私たちの胸の右側、心臓の右側にそれはあります。私たちの中にある魔力源は他の魔力源と分けるために魔臓と呼ばれています」

「魔臓は見ることは出来ませんが攻撃は受けます。なので右胸を貫くような攻撃を受けると当然魔臓が壊されます。…皆さんは魔臓が壊されるような攻撃を受けた魔導師の運命は知っていますか?」


し~ん


「死ぬか魔法を失って生きるかです」

「…」

ゴォーン、ゴォーン


「今日はここまでです。少し怖い内容で終わりましたが次はなぜこうなるのかとこれを避けるために今行われている方法を教えます」


「(準備良し!…で今日は何をするんだっけ?)」

図書館でマリーと俺の勉強な。

「(そうだね。じゃあ行こっか)」


====


しかし、魔臓か…

「(さっきの授業のこと?何か思いついたの?)」

いや、そんなに大したことじゃないが敵の国の魔導師と戦う時に役に立つなぁって思ってな。

「(まぁ、そうだね。魔臓を攻撃すればいいだけだからね)」

魔導師相手ならいくら防御したって無駄なように[創造]で作った魔法を使えば出来る。例えば自分の想像する場所にものを生み出す魔法を作れば一瞬だ。


====


図書館


まだ来ていないみたいだな。

「(そうだね。じゃあ、先に言葉の本とこの国の歴史をまとめた本を見つけて先にやっていようか)」


言葉の方は大体やったし歴史の方をやってくれ。

「(分かった)」

「(この国、ニリストスは最初に出来た12国のうちの1つと言われている)」

12国?10じゃなくて?

「(前に言ったけど滅んでいたりしているからね。ニリストスにある古代の文献だと国の名前は無いけど12国って書かれているんだ)」

じゃあ少なくとも2国は滅んでいるのか…。でも12国であることが確かな情報はその文献だけなんだろ?

「(これだけじゃないよ。もう1つの証拠が国の位置なんだ)」

位置?…円に並んでいることか。

「(そう。過去に調べた人によると、国の間が全部同じではなく何個かの国の間が不自然な程に空いているらしい)」

でも、間が違うことはあり得るんじゃないか?

「(そこでさっきの文献だよ。文献には「互いに見張るため間を測り、同じように保った。」ってあるんだ)」

なるほどな。ちなみにどの国が滅ん、


質問しようとすると、自分と同じぐらいの背丈の女性が話しかけてきた。


「あの~」

「え~と、誰かな?」

「サリナリって言います」

「何か用かな?」

「用というか、疑問なんですけど、なんで机の上に何個も本を広げているのですか?読むなら本を1冊、手に広げて読めばいいと思うのですが…」


確かにそうだな。この場に複数人いるならまだしも今は1人だし、何かメモを取っている様なこともしていない。椅子にも座らずに大量の本に向かって机に1人で手をついて無言でいたら不審がられる。


「今日は図書館で用事があってね。もう1人来るんだけど遅れていてね。1人で準備していたんだ」

良い言い訳だな。


「でも今日と同じように見ていましたよね?今日はないですけど、地図まで広げて」

マジか。前に図書館に来ていた時に見られていたか…。


「…脅しているのかな?」

「違います。単純に気になって」

「じゃあ、僕が詳しく言う必要は無いですね」

「むぅ~。気になりますが、まぁ勉強していたってことにしましょう」

「なんでそんなに気になるのかな?」

「それは私が本が好きだからです!」

「はぁ?」はぁ?


思わずクリットと同じことを言ってしまった。意味が分からない。

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