第25話 希少な[空間収納]
「服が」
「服がどうかいたしましたか?」
「さっき見たのと違う」
「!?」
どういうことだ?帽子を被っただけとは訳が違う。明らかに全身の装飾品まで変わってる。スキルなのは間違いないが検討がつかん。
「へぇ、
「…なんかここにいるのが変だなって思って」
そうクリットが言うと女性は少し考える素振りを見せた後
「ここではマズいので、話せるところに移動しましょう」
====
「いらっしゃいませ」
「今から2人で入れる部屋、空いていますか?」
「はい、ございます。ご案内致します」
きれいな制服を着ている男性についていくと個室に案内された。
「こちらでございます。注文など店員にご用がありましたら魔導具に魔力を込めてください。すぐさま店員が来ますので」
案内が終わると店員は部屋から出て行った。
「えっと、ここは?」
「喫茶店です。ただ人に聞かれたくない話とかが出来るように個室が用意されているので」
「やっぱり僕が気づいたことは人に聞かれたくないことなんですね」
「そうです。まずは座りましょう」
そう言われて座ると
「本当に変だなって思って
「そうですね。綺麗とは思いましたけどなんかどこか引っかかるような服装をしていて…」
「本当にそれだけですか?」
「はい。あ、あと良い服を売っている店を教えて欲しくて…」
「店?本当にそれだけ?」
「はい。というか何回聞くんですか?」
「何回も聞くこと必要があるような秘密を
「それって何回も聞いて分かるものなんですか?」
「いや?分からないけど秘密を見せても口封じならいくらでも出来ますから」
そう言うと女性は何もないところに手を広げたが
「そういえば名前はなんですか?僕も自己紹介をするので」
「…ファル・アナラストです」
「僕はクリットです」
「じゃあ、改めて」
ファルが手を広げると手のひらの上の空間にぽっかりと穴みたいなものが開いた。
「これは?」
「これが
するとファルが穴の中に手を入れ、鉛筆の様なものを取り出した。
「それは?」
「羽の筆のように字を書くものです。他の国の鉱石をわざわざ取り寄せて作ったもので父から頂きました」
「(鉱石ってことはサクロウは知ってる?)」
おそらく鉛筆だな。黒鉛を紙にこすりつけることで字を書くことが出来る道具だ。
「このように
「それは凄いスキルですね」
「そうです。そして同時に危なく、世に広まれば法律をもねじ曲げるスキルです」
そりゃそうだ。どのぐらいの大きさのものがどのぐらいの量だけ入るのかは分からないが、少なくとも門番は無意味なものになる。危険物をどれだけ持っていようがスキルだからバレない。
「なので、家族にも相談してスキルの内容に関しては秘密にし、バレている、もしくはバレた場合にはすぐさま対応すると決めました」
「…内容に関してだけですか?」
「良く気づきましたね。文献にも載っていないほど持っている人が少ないスキルなのでスキルの名前はいくらでも明かしても構わないということです」
「その名前は?」
「[空間収納]です。鑑定士に聞いたので名前は分かりましたが、これだけ聞いても意味が分からないですよね」
[空間収納]、まさにそんなスキルだな。
「(サクロウは分かるんだ…)確かに…。ところで僕は内容を知ってしまいましたけどこれからどうなるのですか?」
「そうですねぇ…。対応の内容は
「えっ、いいんですか?」
「はい。クリットさんは
「…それは監視はされるってことですか?」
「クリットさんならそこまでしなくてもそう簡単にしゃべらないと信じていますから
「なぜ僕のことが信じられるのですか?」
「
「そうなのかなぁ」
「ここで「自分もそう思います」なんて言わないのが証拠ですし、すぐにこの書くものについて聞いてきたこともそうです」
嘘をつけないかどうかは知らんが、すぐ口に出すのはそうだな。
「なので、これからいつも通りの生活をすれば問題ないです」
「そうですか」
「これで
「そうですね。喉が渇いてきたので飲み物は欲しかったところです」
2人は店員を呼び、飲み物と軽食を注文した。クリットはさりげなく高い飲み物を興味本位で注文したが、ファルは「やはり遠慮無いですね」と言っただけで特に止めるようなことはなかった。少しは遠慮しろよ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます