第24話 正装と追跡

ファブライト家を訪れてから2日後 王都


今日は授業が休講になったことによって学園にいる必要がなくなったので王都に遊びに来ている。


「う~ん」

そういえば聞いていなかったんだが、王都に何をしに来たんだ?

「(えっ、服を見に来た。買うかどうかは悩んでる)」

服?クリットはそんな服に気を遣うようなやつだったかな?

「(いや、ファブライト家みたいな貴族の家にお邪魔する時の服を買おうかと。…サクロウのせいで必要になった)」

俺のせいか?

「(そうだよ!サクロウが商会なんて作るって言ったし、実際にファブライト家にお邪魔したし。もう準備はしておいた方がいいかなって)」

それはごめん。じゃあ、なんで悩んでるの?準備する必要があるなら買えばいいのに。

「(いやぁ、思っていた以上に高くってさ。それにどれがいいのか全く分からん)」

店員に聞けばいいのでは?


俺がそう言うとクリットはきれいな内装の店に入る。


「すみません」

「はい。どうなさいましたか?」

「服を探しに来たんですけど。きっちりしていて恥ずかしくないような服はありますか?」

「そう言われても、お客様がどのような場所に着ていくかによるとしか言えません。正装といってもいろいろありますから」

「そうですか」

「なので、正装であっても違うものを買って行くお客様が大多数です。失礼ですが、お客様はどのぐらいの値段のものをお望みでしょうか?」

「…えぇっとなるべく安いもので…」

「そうですと今は買わない方が得策だと。買ったとしても安いものだと周りとの差で返って恥ずかしくなりますし、先程言ったように1つだけだと他に対応出来ません。なので、正装をしていく直前に良いものを買うのをおすすめします。そうすれば他に対応は出来ませんが恥をかくことはありません」


「あぁ、決してお客様をけなしている訳ではありません。稀に自分の手持ちから安いものを求めるお客様もいるので提案させていただいています」

「大丈夫だよ。やっぱりお金がないと無理かぁ」

「はい。私も仕事なので責任を取れないことは言いません。今日のところは一度お帰りになってお考えになるのがよいかと。もう一度来た際にはお似合いのものを用意させていただきます」

「分かったよ。お金が貯まったらまた来ようかな」

「そうしていただけるとこちらも選びやすくなります」


「ありがとうございました」という言葉と共に店を出た。


「やっぱり、今日は買うのを止めよっか」

あの店員の言っていることは正しかったな。服を買うのは止めて王都を楽しむのはどうだ?

「(そうだね。でもせっかく王都の中心街に来たんだからお父さんお母さんになんか買って行きたいからすこし見てもいい?)」

いいんじゃないか?お前の身体だし。


改めて周りを見ると俺の世界の都会の様な華やかさがあり、人が多い。コーエンさんの店に行く時に城壁に近いところはいつも見ているが、そこよりも豪華絢爛な景色になっている。

「う~ん、小物でも買おうかな。器とか」

いいんじゃないか?あっても困らないし。

「でも、数個だけいい物っていうのもなぁ」

そんな会話をしながら歩いてると


ん?どうした?

「(…あの人すごいなぁって)」

あの人?

クリットが言う、歩いているあの人を見てみるが特に変わった人ではなく、どこかの貴族の娘なのか周りによく見る、質が良いと思われる服装をしているだけだ。


そこまで気になるのか?俺は特にどうも思わないけど。

「(いや気になるって程ではないけど、何か綺麗だなって)」

綺麗?

「(ちょっとついて行ってみる。もしかしたら良い店を知っているかもしれないし)」

あっ。おい、ちょっと!

と俺が止める前にクリットはその女性に惹かれるようについて行く。


その女性にしばらくついて行ったのだが、徐々に女性の不自然さが浮き彫りになっていった。

クリット。なんか変じゃねぇか?

「(そうだね。明らかに)」

女性は貴族のような綺麗な服装をしているのにも関わらず、中心街のどの店にも入らずに何処かを目指しているようだった。


どこ行くんだ?

「(わからない。あ!)」

その女性は人があまりいない路地に入った。

クリットが続いて路地に入ると、

ドン

「うぁっ」「きゃっ」

誰かとぶつかった。

「すみません」

「いえ。こちらこそ前を見ていなくて申し訳ございません」


クリットがぶつかった女性は顔つきから明らかに追いかけていた女性だが

「あれ?」

「?どうかしましたか?」


先程とはが変わり中心街に完全に溶け込むような姿になっていた。

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