第22話 年の近いミルド

コンコン

「はい」

「お嬢様、確認を終えました。入ってもよろしいでしょうか?」

「いいわ」

「失礼致します」

というと爺やと呼ばれていた老人が荷物をもって入ってきた。


「さっそくご報告させていただきます。鉱石の質は流石に一流とは言えませんが、いろいろな用途に使える程度には高い質です。こちらの鉱石を持参したのは…そちらの方々でしたね。お名前は?」

「コーエンだ。こっちはうちで雇っているやつだ」

「コーエン様ですね。こちらに持参していただいた鉱石ですがおいくらになるでしょうか?」

「う~んミルド、どのぐらいになるんだったっけ?」

「そもそも取ってきたままファブライト家に持ってきたので計算していません」

「そうか。ならファブライト家はいくらになると思っている?」

「持ってきていただいたほとんどが銅と鉄、稀に銀があったので金貨13枚っていうところはどうでしょうか?もし不満であればもう少しだけならあげることは出来ますが…」

「いや、それでいい。うちは小さいところだからな。1日で金貨十数枚稼げるならいいってもんだ。それよりもさっき話していてことは頼めるか?」

「さっきとは?」

「「ファブライト家のお得意様になれないか?」っていうことを話していたのよ。確かファブライト家に鉱石商のお得意様はいなかったはず…よね?」

「そうです。そもそもお得意様がいなくとも王都一の鉱石商であるトロックに買いに行くだけで十分でしたから」

「ならなれるわよね?」


「そうですね。ちなみにどのぐらい私たちのご要望にお応えできますか?」

「流石にないものは無理だが、金、銀、銅、鉄とかならいつでも持ってこれる」

「それなら十分です。しかし、あの量の鉱石、本当に小さい店なのですか?」

「ハハ!それはお嬢さんにも言われたな、量を採れたのはクリットのおかげだ。もう少しすれば安定して採れるようになるぐらいには慣れる」

「そうですか。それならお得意様になっても大丈夫でしょう。当主様にお話は通しておきます。今回は金貨15枚での買い取りでよろしいでしょうか?」

「13枚から増えているが大丈夫なのか?」

「大丈夫です。増えた分はわたくしの個人的なコーエン様の店への期待の分だと思ってください」

「ならありがたく受け取ろう。その代わりちゃんと話は通してくれよ」

「分かりました。書類を用意するのでしばらくお待ちください」

そう言うと爺やは持ってきた荷物から紙を取り出し書き出した。


「そういえば飲み物も飲んでください。苦手でしたら別な飲み物を持って来させますわ」

「俺は喉が渇いてないんだ。ミルドは飲んどけ」

「頂きます」

「…別な部屋で契約をしないか?ここだと余計な気を遣わせているからな」

「そうですね。お嬢様もお話がしたいでしょうし」

「私は気にしませんが?」

「お嬢様が気にしないといってもなぁ。それに年が近いもの同士、話は気軽に出来た方がいいだろ」

「…分かったわ。爺や、改めて丁重にもてなしてあげて」

「かしこまりました。コーエン様、こちらにどうぞ」

「あぁミルド、今日はもうやることないからわざわざ俺のところに挨拶をせずに帰っていいぞ」

「分かりました」

すると、コーエンさんと爺やが部屋を出て行った。


「まぁ、話をしましょうか。場も整えられてしまったのだからやるしかないでしょう?」

「自分は構いません」

「ミルドさん、かしこまるのは止めましょうか。私たちはあなたよりも年下だけど普通に話す。私は貴族であなたたちよりも位は上だけど気にしない。これでどうかしら?」

「…そうですね。分かりました」


男1人に女2人、気まずいな…



って普通は思うだろうが…

「じゃあ、飲み物のおかわりを貰ってもいいっすか?」

「えっ」

ミルドがこんな感じだからな。


昨日初めてミルドとあった時の第一印象は短髪でありながら感情があまりない物静かな印象を受けたし、第一声が「いらっしゃいませ。ご用は何でしょうか?」だったから余計にそう思ってた。だがコーエンさんから年も近く、そこまでかしこまる相手じゃないと言われるとすぐさま友達の様に近づく。帰る頃には最初の印象とは打って変わり、長年遊んできた友達といった感じになっていた。

ちなみにさっきの会話から分かったことだが、余所行きの物静かな方でも感情の起伏は凄くあったりする。


「物静かな方と思っていたのに…」

「僕も最初はそう思ってたよ。でも楽しい人だよ。だから、立場をなくして話す相手には丁度いいんじゃない?」

ミルドは相手が良いって言ったら容赦なく来るタイプだからな。

「が、頑張るわ」

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