第16話 ファブライト家へ
今日はもう遅いので次の休みの日の昼前に王都の正門前に集合ということになった。
「…貴族って大変なんだな(そうだね、僕も初めて知った。お金持ちで地位も高いって何かと厄介だね)」
あの後、日が暮れてきたから家まで送っていこうとしたのだが、「噂話になったら不味い。なんなら今もギリギリ」とのことで1人で帰って行った。
「やっぱり、他人の評価を気にしなきゃいけないのは窮屈だな。クリットはどう思う?(僕も同じだよ)」
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次の休みの日
王都の正門前
「少し早く着きすぎたかな?」
まぁ、そうだな。でも待たせるよりはマシだろ。
「(コーエンの店にでも寄ってくる?)」
いや、行っている間に来ると不味いからダメだ。このまま待っていよう。
「(分かった)」
しばらく待っていると…
「待たせたかしら?」
「まぁ、僕が早く来すぎただけだから気にしなくていいよ」
「分かったわ。じゃあ、行きましょう」
アキリーナの案内で歩くと
「馬車?」
「えぇ、そうよ。客人を呼んでいるのに等しいのだから。歩かせるのも失礼でしょう?」
「いや、歩くのは全然いいんだけど」
「せっかく用意したのだから乗ってくださいな」
まぁ、そこまで言うのであれば乗るしかなくないか?ここで断るのはアキリーナの評判に関わるでは?
「(そうだね)じゃあ、遠慮なく乗せてもらおうかな」
「分かったわ。…準備して」
アキリーナは馬車の近くにいた執事の服装をしている人に一声かけるとその人は扉を開けた。アキリーナが馬車に入ったので続いて俺たちも入る。
俺たちが入ると扉が閉まり、馬車が動き出した。
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馬車にしばらく揺られているとファブライト家についたのか、馬車が止まり扉が開いた。
結構揺れるんだな
「(馬車は初めて?これでも普通の馬車よりも揺れてないんだけどなぁ)」
まぁ、揺れを軽減する機能がないから当然か。それでも貴族の使う馬車は違うのか。
「ついたわ。ようこそファブライト家へ」
着いたファブライト家は大きな博物館のような屋敷で、特に目を見張るのは屋敷よりも大きな庭だ。
これは馬車で移動した方が楽だな。
「いつも馬車じゃないと移動が大変じゃない?」
「まぁ、大変だけど歩いて移動できないわけじゃないから天気が悪いとき以外では馬車は使わないわ」
へぇ、想像と違ったな。
そんな会話をしながら屋敷に近づくと
「お待ちしておりました。クリット様のお荷物を持ちましょうか?」
「荷物は…なさそうね」
「うん、何が必要か分からないからね。いつもの出かける用の荷物しかないから大丈夫だよ」
「承知しました。では、旦那様のところまで案内いたします」
そういうと馬車のときとは違う明らかに熟練した執事が屋敷の扉を開けて先に行き、それにアキリーナも着いていく。
屋敷の中に入るとそこには無駄に豪華という訳ではなく、ほどよい色合いの明らかにクラシックな照明や家具が所々に配置された空間があった。
…いいな。
「(そう?なんか地味だなぁと思うけど。もうちょっと豪華なものを想像してたからかな)気になっちゃたから聞くけど、なんでその…「豪華」みたいな家具が少ないの?」
「意外と何でも口に出すような人なのね。それはそれがお父様とお母様の趣味だったから…かしら。執事長?」
「えぇ。正しく言えば旦那様と奥様の好んでいるものが落ち着いた雰囲気であるからです」
「へぇ、そうなのか。貴族はみんな豪華なものが好きだと思ってた」
お前、正直過ぎないか?
「貴族だって人よ?人それぞれ好き嫌いがあるのと同じで、豪華なものが好きな貴族とそこまで好きじゃない貴族がいるってだけ」
「そんなものなの?」
「そうよ」
話をしていると
「着きました。この部屋で旦那様がお待ちになっております」
「緊張しているかしら?」
「いや、してないよ」
少しは緊張しろ。流石に俺は緊張しているぞ。
「では」
コンコン
「旦那様。お嬢様とクリット様をお連れしました」
すると
「分かった。入って良い」
中から男性の声が聞こえてきた。
その声を合図に執事長が扉を開けた。
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