第15話 高温の魔法

その後ドロドロになったところでアキリーナは魔法を使うのを止めた。


「溶けたわ」

「そうだね。溶けないと分かったとき何をしたの?」

「魔力を増やしたの。魔力が増えれば増えるほど威力が上がるのは常識よ」

そうなのか?

「(そうだね)」

「で、私になんでこれを溶かさせたの?」

「火属性魔法ならどのぐらいのものまで溶かせるのかな~って思って」

「…その程度のものならこんなことしなくても素直に聞けば良かったのに。火属性魔法を使う以上、私が確認してないとでも?」

「じゃあ、これ以外に溶かせたり燃やせるものはあるの?」

「大抵の物は溶かせるわ。金、銀、銅なら魔力を増やさずに溶かせて、これと白金、あと鉄は威力を上げないと溶かせなかったわ」

「これと白金を溶かす時に増やす魔力はどっちが多い?」

「白金ね。鉄と白金も同じぐらいの差があるわ」


なら通常の火属性魔法の温度は1000℃程度であることは間違いないか。

「これよりも温度が高い魔法はないの?」

「温度?威力じゃなくて?」

「そう、鉱石を溶かしたいからさ」

「…分からないわ」

「え」

「温度なんて気にしたことなかったから分からないわ。第一、火属性魔法に求められるのはなるべく広い範囲の敵をどれだけ早く倒せるかだから、鉱石を溶かすためだけに火属性魔法を使う人なんて稀だわ」

「…本当に」

「えぇ、火属性魔法が十分に使えるなら戦った方が稼げるからね」

そうなのか。じゃあ商会で雇う時は想像以上に金かけなきゃだめか。


「(魔法を使うことができる人を雇う時は注意だね)」

「鉱石を溶かすなら今のままでも十分ではないの?さっき私が見せたように」

「いや、多分もっと溶けにくい鉱石もこれから出てくるはず。だから必要なんだ、今よりも温度が高い火が」

「…ずいぶん分かっているように言うのね。まるで今よりも溶けにくい鉱物があるとみたい」

「はは、そんなわけないじゃん。そんな溶けにくい鉱物が見つかった時に一番困るのはアキリーナさん達だと思うけど」

「…装備に使われるということね」

「そうだね。だから温度を上げて防具も溶かせるような魔法を作るのもいいとは思うんだけど。どうかな?」


「あなたの目的は何?」


「…」

「確かに火属性魔法の家系である私に火属性魔法について頼むのは間違っていないと思うわ」

「だったら…」

「でも鉱石に関しては専門外もいいところ。むしろ硬貨や剣などを作っている鍛冶に頼むのが普通なのでは?」

確かにそうだ白金の硬貨が少ないながら流通しているってことは少なくとも今現在でも1700℃の高温を出せるということ。ならその方法を教えて貰った方がいい。普通ならそうだ。だが俺は違う。だって目的は

「「温度が高い火属性魔法を作ること」でしょ。だから私に協力を求めた」

「そうだね。そしてその魔法を火属性魔法の才能があれば使える様にその方法を本にしたい」

「…その本は私も貰ってもいいかしら?」

「元々そのつもりだし、むしろアキリーナさんの協力が無きゃ本の内容を作ることができない。こっちから頼まなきゃいけないところだから」

「それなら大丈夫よ。新しい火属性魔法を作るのに他の人と協力しちゃダメかしら?」

「意外と乗り気だね」

「価値があると思ったからよ。で、ダメかしら?」


「う~ん、あまり協力はして欲しくないかな。ちなみに協力するとしたら誰とするの?」

「私の家、ファブライト家よ。外に出せないものもあるからファブライト家以外ではやらないわ」

「それならいいよ。じゃあ、僕は魔法を作る部分には関わらない方がいいかな?魔法も使えないし」

「…いや、あなたにも関わって欲しいわ。魔法が使えなくてもあなたの考えは新しい魔法を作る手がかりになりそうだから」

「え、いいの?外に出せないものもあるんでしょ?」

「あなたはなんとなく信用できるから大丈夫。お父様から何か言われても絶対話は通してみせるから安心して」

「いや、そこまでしなくていいんだけど。なんでそこまでするの?」

「あなただけよ。私に臆せずに話しかけてきて協力を求めてきたのは。うれしかったからできるだけ協力したい、じゃダメかしら」

あ、やっぱり心を許していてくれてたんだ。

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