第14話 同級生の火属性魔法

結果だけ言えばアキリーナに会うのに時間がかかった。


アルフレス魔法学園では授業を選択する制度だから、魔法が使えないクリットと魔法を使うのが得意なアキリーナの授業がほとんど被らないし、時間割も違うせいで狙わないと会うことすらない。ただ同じ授業がない訳じゃない。この国の歴史を学ぶ「歴史学」は必ず受けなければいけない授業なのでそこでは会える。


その歴史学の授業前


「ねぇ、ちょっといいかな?」

「なんでしょうか?」

「アキリーナさんに用があるから空いている時間を教えて欲しいんだけど」

「空いている時間、いつでもよいのですか?」

「あ、休みの日がいいかな。それか学園が終わった後。授業が被ってないから学園の中では時間がなさそうだし」

「なら授業が全て終わった後ならどうでしょう?もちろん家の用事が無ければの話ですが」

「分かった。今日は大丈夫?」

「えぇ、大丈夫です。ところで用とは?」

「う~ん、詳しくはここで話せないかな。言えることは魔法に関してっていうことだけかな?」

「なるほど、私の魔法を使って何かするということですか…」

「…大丈夫?」

「大丈夫です。もし何か言われても大丈夫な用であるかどうかが心配でしたが。魔法なら良さそうです」

「そんな心配することがあるかなぁ」

「婚前の貴族の女性と男性が2人で会うとなればいろいろ問題があるのですよ」

「僕はそんなことはしないけどなぁ」

「例え相手方の性格が分かっていてとしても心配になる人はいるものよ」

「そうかなぁ」

「そうです。貴族は貴族なりに大変なのですよ」


====


授業後

意外と話が通じるもんだな。

「(まぁ、貴族だし話に関する指導とか受けているんじゃない?)」

周りに「話しかけるな!」みたいな雰囲気を振りまいているのかと思ったんだけどそうじゃないんだな。

「(そうだね。たぶん授業に一生懸命なんじゃない?)」

そうしていると彼女が話しかけてきた。


「ねぇ」

話しかけてきたぞ

「うん?」

「どこでやるのかしら?」

「え~と、人がいないところかな。貴族だからその辺は気にするよね?」

「…貴族だから何でも気にするということはないわ」

「…なんかごめん」

「私の家が他の貴族より緩いだけよ。他の貴族だったら何日も前から話を通して用事の内容も伝えておかないと会うことすらできないわよ」

そういえばマリーも貴族だったような。意外と貴族って緩いんだなぁ、とは思ってたんだけど流石にそんなことはないか。

ってか最初の口調とは大分変わったな。

「(そうだね。少しは心を許しているっていうことかな?)アキリーナさんならこんな風に用事を済ませられるってこと?」

「そうね。で、場所の話だったわね。魔法を使うなら王都の外の方がいいかしら?」

「外でもいいの?」

「えぇ」

「じゃあ、外で!」

「分かったわ。じゃあ、授業後に正門の近くで集まるってことでいいかしら?」

「うん、大丈夫だよ」

「じゃあ、これから授業があるからまた」

「またね」

そう言うとアキリーナは教室を出て行った。

じゃあこっちも準備しようか。

「(そうだね。準備ってなにをするの?)」

それは…


====


「…待たせたようね。その荷物は?」

「これから使うものだよ。じゃあ行こうか」

俺たちは王都の正門を通り過ぎて城壁に近い火属性魔法を使っても問題ない平原に来た。


「ここなら大丈夫だよね」

「で、何をするの?」

持っていた袋から鉱石を取り出す。

鉱石を置くための土の器も取り出し、置いた。

「これを火属性魔法で溶かしてくれない?」

そう言って赤い鉱石、赤鉄鉱を土の器に置いた。

「溶かすだけでいいの?」

「うん」

「そんなの簡単ね。じゃあ、やるわ」

そう言うとアキリーナの手から火属性魔法が放たれた。

本人としてはすぐに溶けると思っていたのか

「むぅ。なかなか溶けないわね」

すると、少し炎の勢いが上がった気がする。おそらく込める魔力を増やしたのだろう。よく見るとわずかにだが火に色が黄色に近くなった気がする。


しばらくすると温度が融点になったのか赤鉄鉱が溶け始めた。

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