第13話 これからのこと

授業が終わった後 夜

クリットの部屋


「で、鉱石を買ったはいいけどなにをやるの?」

今日はこれからのための実験だ。交代してくれ


「(これからのため?)あぁ、卒業後何をするのかは特に考えてないんだろ?(まぁ。お父さんと同じことをするぐらいかな)」

「だったら商会を作ってみないか?(マリーさんに言ってたやつだね。あんなこと言ったら作るしかなくない?)そういえばそうだな。勝手に言ってすまないな」

「(今回は大丈夫だったけどこれからは気をつけてね)分かった」

「でだ、これから作る商会で金属を使った商品を目玉として売ろうと思ってな。まずコーエンさんの店の鉱石で大丈夫かどうかを確かめる(大丈夫って?)」

「どのぐらいの量の鉱石からどのぐらいの量の金属が取れるかだ」


「これが分かれば買い取った鉱石の重さから、大体の金属の重さが鉱石を溶かす前に分かる」

「(なるほど。それなら買う時点でどれぐらいの商品が作れるか分かる。でもどうやって確かめるの?)」

「[創造]を使う」

「(そっか[創造]ならもんね)」

…たぶんクリットは...、いや[創造]を知っている人間全員が勘違いをしている。


[創造]は作るスキルだと思われている。だけど陽子や電子で何回か作った俺だから分かる。このスキルの本質はことにある。材料を使って椅子を作るにしても材料を移動させ、並べ替えて椅子を作る。魔法に関しても同じだ。魔力を移動させ、魔法が発動するように並べ替えている。


だったら混ざっているものを分かれる様に移動させ、塊になるように並べ替えることもできるはずだ。

「あぁ、[創造]で分けるぞ」

そう言って[創造]を使う。原子を変化させないように。すると目の前の銅鉱石が小さくなり、金属光沢がある物質に変わった。

「(おぉ、きれいな色だなぁ)」

俺の世界の一般的な銅を想像したからか橙色に金属光沢が加わった色になった。

「このぐらいなら大丈夫かな」


クリットの部屋は俺の世界の一般的な部屋よりも比べるとかなり暗いので、他にないかよく見ると銅の周辺にいくつか鉱石が落ちていた。中には銅と同じくらいの大きさのものまである。

「銅の他のものはこのぐらいか。少し少ないのは気体になった物があるからか」

「(銅の他のものはどうするの?)集めて保管だ。一応色で分けておこう」

木箱を色の数だけ作り、それぞれに分けて保管することにした。

「(でも、これはサクロウにしかできないよね?)そうだ。だからあくまで急ぎの用でない限りは他の方法で金属を取り出さなきゃ(他の方法って?)」

いろいろあるがおそらくこの世界でもっとも使われている金属の精錬方法…

「鉱石を火で燃やして溶かす。そうすれば気体になる温度の差で余計なものを取り除くことができる(金属って気体になるの?)あぁ、そうだ。もっとも温度はかなり高くなるが」

「(じゃあ、火属性魔法でできるね)いや、そうとも限らない(え?)」


この前使った火属性魔法で出てきた炎は黄色混じりの赤色、つまり1000℃ぐらいになるはず。この温度だと銅をギリギリ溶かすことはできるが気体にすることは無理だ。最低でも明るい黄色、これからのことを考えるともっと温度の高い白や青色の火も欲しい。もちろん[創造]でそれに対応する魔法を作れば解決できるが、商品にする量を考えるとクリットの身体への負担がかなり大きくなる。だからなるべく優秀な火属性魔法を使える人に教えて高い温度の火を出せるようになって欲しい。


「学園に優秀な火属性魔法が使える人はいるか?(だったら同じ学園にアキリーナさんがいるよ?)アキリーナ?誰だ?」

「(アキリーナさんは火属性魔法で有名な貴族の子で魔力も多いし、なにより火属性魔法の威力が学生の時点で今の当主よりも高いって噂だよ?)」

「なら、紹介してもらえるか?」

「(う~ん。話したことはないんだよなぁ。なんか貴族!って感じで他の人ともあまり話しているところは見たことないんだ)」

「まぁ、お前なら大丈夫だろ。何かと遠慮ないし(え~、そんなかなぁ)」

お前、コーエンさんに友達と話すように話しかけてたじゃねぇか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る