第11話 仮説と解決

「マリーさんの言う通りあの時スキルを使っていました。僕のスキルは[創造]です」

「[創造]ねぇ。そこまで有用なスキルでは無かったと記憶しているが」

「そうですね。ただそれは今までの常識です。[創造]なら魔力を使わずとも魔法を使うことが可能です」

「へぇ。本当か?と言いたいところだけど君の魔法を見ている以上、本当なんだろうな。ただ、じゃあなぜ君は入学してから使わなかった?」

「…」

「[創造]で魔法が作れることが分かっていたのなら今のような扱いは少なくとも受けなかったはず。私が純粋な魔法である可能性を考えてたように見ただけでは普通の魔法と区別はつかない。だから使っていたとしてもばれなかっただろう」

「そうですね」

んじゃないか?魔法を作れることを。そしてつい最近作れることを知ったんじゃないか?」


「これならばいろいろ説明がつく」

「…」

これは言うしかないんじゃないか?

「そこで私が気になるのはどんな方法で知ったのかだ。[創造]が魔法を作ることができるスキルだと分かっていたら少なくとも国は大事な戦力として一番に迎え入れるはずだ。しかし[創造]にそんな話は聞いたことがない」

「そんな話は確かにないですね」

「…ならどこからその知識を得たか話してくれるかい?そう決めつけるのは早計だとは思うが私は君1人で作り出した物ではないとしか考えられない」

「じゃあ、全てを話します。大事な部分は話すつもりはなかったんですがね。(変わってくれる?)」

そういうのはお前の役目だろ?

「(スキルで作った魔法のことだし、サクロウの方が都合がいい)」

わかった。


俺は自分のことをぼやかしながら全てを話した。

「…もう1人の人格ねぇ。1人の身体に2人の人格が入っていることはにわかに信じがたいが、目の前に実際にいるからねぇ。信じざるを得ない」

「示すことはできないですけど」

「示すのは無理な話だからそれはいい。それよりもどっちの人格も魔法を作ることができるのかい?」

「それは分かりません。ただ俺が[創造]を使うことにしてます」

ねぇ。君がクリット君ではない人格か」

「そうです」

「なるほど、2つの人格が1つの身体に入っている…。[創造]よりもその身体に私は興味深く思うね」

「身体?」

「そうさ!君の身体は2つの人格にも耐えうるってことだからねぇ。私の研究分野とも合っている」

「研究分野は何なんですか?」

「人の身体についてだ。具体的に言うと人に何がどのように作用するかどうかを研究している。例えば人が毒で殺されるということがある。毒が人を殺すのは当然だがじゃあどのようにして人を殺すのか?あくまで極端な例として毒を出したが、普段食べるものや触れるものなどに関しても同じだ。私はそういうことを研究している」

「…」

「だから、調べたい。普通の人とは違う君の身体を」

そう言うとマリーは木の器を目の前に置いた。

「口の中の液体を貰いたいのだが。いいかい?」

…ド直球な創作によくある研究者だったか…


====


…良かったのかあげて

「(いいんじゃない?別に減るものでもなかったし)」

クリットの許可を貰ってマリーに唾液をあげた。

「ありがとうね」

マリーは唾液の入った木の器に蓋をして棚にしまった。

「研究できる量はあるが、また貰うかも知れないがいいかい?」

「なぜ?足りるのではないのですか?」

「これまでもあったが木の器でも金属の器でもほっておくと質が変わってしまい台無しになってしまう。研究をしながらそれを防ぐ方法を探してはいるが見つかっていないのだよ」

「(解決できる?)」

[創造]を使えばなんてことはないな。解決するか?

「(サクロウの好きにしていいよ)」

じゃあ、

「…理由は分かっているのですか?」

「おそらく器が溶けているのだろう。君は解決方法を知っているのかい?」

「…知っていますよ?ただタダで解決するのは…」

「じゃあ、私にできることだけだができるだけ君のやりたいことに協力しよう。例えば貴族との伝手がほしいなら機会を与えてあげたりもできる。一時的な解決でもこのぐらいの報酬を約束しよう。もし根本的な解決ができたらもっと良い報酬をあげよう」


「じゃあ解決するので学園を卒業した後、俺の立ち上げるで働いてくれませんか?研究もさせてあげますよ」

「根本的な解決をしたらだな」

「…これでどうですか?」

そう言っておれは[創造]で透明な容器を作り、テーブルの上に置いた。

「ほう、[創造]で作ったものか。透明ってことはもしかしてクリスタルかい?」

「クリスタルっていうは洞窟内にある透明な鉱石のことですか?」

「そうだ。クリスタルは美しく堅いため掘り出すのが難しく、そのおかげで高価なんだ」

「おそらく同じですね。これなら溶けないですよ」


俺は、俺の世界では多くの薬品と反応しにくいという性質を活かして様々な化学実験に使用されている、石英ガラスでできたビーカーをマリーの問題の解決のために[創造]で作り出した。

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