第10話 真実の追求
学園内のマリーの借りている部屋
マリーの部屋に入ると匂いが廊下とは急に変わり、手前にはソファやテーブルやイス、奥には机がありその上には怪しげな容器が並べてあるのが見える。
「ここが私の部屋だ。研究室として使っている」
「そういえば学園の部屋って借りれるんですね」
「あぁ、目的があって認められれば先生に頼んで借りられる。まぁ認められるためにいろいろ書かなきゃいけないのが面倒なんだがな」
「そうなんですか。目的って」
「今はそのことは話さなくていいだろう。もちろん必要なら話すが。飲み物は飲むか?」
「ちょうど喉が渇いていたんでお願いします」
「そうか、それなら良かった。最近珍しいものが手に入ったのでね、それを使おう。君は運がいいぞ!」
珍しいもの?
そう言うとマリーは五徳のようなもので金属の器を支え、器の下で火を焚き、器に入った水を加熱し始めた。
「時間は有限なのでね。動きながらではあるが話させてもらおう」
「もう一度確認するが、「魔法を使えない」という情報は間違っていないかい?」
「はい。そもそもこの学園に来た目的が僕にでも使える魔法がないか探すためですから」
「そうかい。じゃああの日あの場所にいた君はどのようにして魔法を使えるようにしたのかな?」
「それを話す必要はありますか?」
「…ふむ、確かに秘密、特に魔法に関する秘密なら人においそれと話す訳にはいかないのは分かる」
「だったら…」
「だが、私には時間があった。ある程度仮定をして実際に同じ場所で実践することができた」
「同じ場所?あれ?休みの日の学園には入れないのでは?」
「君は知らないのかい?休みの日でも学園の門で書類を書けば入れてもらえる」
そうだったのか。なら休みの日でも図書館に行けたじゃないか…
「(…ごめん)そうだったんですか。知りませんでした」
「今知れたのは良かったじゃないか。でだ、私の仮定を聞いてくれないかい?」
「いいですよ。でも合っていてもそれを言うかは別ですけど」
「君はずいぶん慎重だなぁ。まぁ、聞いてくれるだけでもまだマシか。…飲み物ができたぞ。熱いから慎重にな」
そう言ってクリットの目の前に金属のコップに入った湯気が立った黒い飲み物が置かれた。
これは…
「これは?」
「この黒い飲み物はここより南の村で採れたものらしい」
「らしいって、今僕は知らない飲み物を飲まされようとしているのですか?」
「いや、客人に危険なものを出すような真似はしないさ。飲めるものとは知っている。…ただ味は私も知らないが」
「えぇ…」
「まぁ、飲んでみようではないか。美味しくなかったら安全な水もあるから大丈夫だ」
クリットとマリーはその黒い飲み物を口にする。
どうだ?
「…にがっ。匂いはいいですけど僕は甘い方がいいです」
「そうか?私はこの苦さが丁度いい。それに頭がすっきりするようだ」
「すっきりすることには同意します。それとなんかざらざらするのですが」
「それはそうだろ?これは豆をすりつぶして粉状にした物にお湯を入れているのだから」
黒い飲み物の正体はコーヒーだったようだ。生産しているところがあるのか...
「う~ん。とりあえず僕はあまり好きじゃありません」
「私は好きなんだが…」
そう言うと別のコップを出し
「ほれ、水だ」
「ありがとうございます」
「話を戻して、私の仮定を話そうか」
「結論から言うと君のスキルで魔法と同じことをしているのだろう?」
「…」
「あの日あの場所で魔力が少ない人があれほどの魔法を使うとすれば方法は限られてくる。その中から私は2つに絞って考えた」
「なぜ2つに?」
「他はどれも時間がかかったり、他の高い魔力を持っている人が必要だったりするからだ。君は平民だろう?そういうことをすることは難しいはずだ」
「…それでその2つとは?」
「1つ目は魔導具を使うことだ。魔導具ならあらかじめ込めた魔法が出るようになっているから、身の丈に合わない魔法が出てもおかしくはない」
「じゃあそれなんじゃないんですか?」
「だが条件に「私が上から見ていた」というものを加えると途端に不可能になってくる」
「…」
「こう見えて私は貴族なものでね、いろいろな魔導具を手に入れて魔力の少ない従者に協力してもらい試した。確かに身の丈に合わない魔法が出せる、だが問題はその前後だ」
「…魔法を出す前と後?」
「もっと言えばあの場所に来るときに問題が出る。魔導具はそれなりに大きいのでどう頑張ってもこちらから見えてしまう。試した結果、魔導具1個ならまだ隠せたが2個以上となるとどうしても見えてしまう。私の覚えている限りでは君はあの場で5種類の属性魔法を使っていたはずだ」
「じゃあ1個で5種類の魔法を出せる魔導具なら…」
「その可能性は極めて低い。魔導具はそれなりに高価なもので、その価値は込められている魔法の完成度と種類、そして数で変わる。5個の魔法が出せる魔導具なんて一体いくらになるだろうか。少なくとも貴族でも想像つかない程になるのだから平民である君に買える可能性はないと言っていいだろう」
「…」
「だから1つ目は無理、だったら2つ目になるのだがこちらに関しては実践する方法がない。大体方法として考えたものの、一人一つのスキルの中で魔法と同じことができるスキルがあるのかすら怪しいし私の知る限りではない。だから君に聞くことにしたのだよ。真実を」
「…」
「もちろん否定してもらってもかまわない」
「…これから話すことは秘密にすることを条件にするなら話します」
「もちろんさ。もし周りに話すのであれば廊下でそのまま話していればいいだけだからね」
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