第4話 思ってもみない出会い

クリット自身についてを聞いていると


うん?誰か道にいるな。

「(あれは木の運び車かな?壊れているのかな?聞いていいかな?)」

いいんじゃないか?困っていて手伝えるなら手伝う。無理なら無理って言えば。

「(分かった)」

そうすると道に運び車を見ている男に尋ねる。


「どうしたの?」

すると

「ああ、運び車が壊れたんだ。だから荷物を少し捨てようと思ってな。…はぁ、買い直さなきゃな」

その男は俺の目から見てなかなかガタイのいい男でその口から発せられる声は落ち込んでいるのか弱かった。

「ねぇ、何か手伝えないかな?」

「いや、悪いよ。それにこれから王都にある店に戻るんだ」

「僕もこれから王都に行くんだ。丁度いいから荷物を少し運ぶの手伝おうか?」

「(いいよね?)」

まぁいい。特に急ぐ用でもないしな。

そう言うと男は袋を取り出しを分け始めた。

おいおい、都合が良すぎるだろ。

「このぐらいなら持てるか?」

「う~ん、僕をなめてる?もっと持てるよ?」

そう言うとクリットは軽々と袋を持ち上げてみせた。

「…じゃあこのぐらいか」

「…もっと!」



そんなやりとりをした結果

「…意外と力持ちなんだな」

男が持つ量よりもクリットの持つ量の方が多くなり、結局鉱石を捨てることなく運ぶことが出来るように。

「このぐらいならお父さんの手伝いでいつも持つぐらいの重さだから大丈夫だよ」

「こっち向きながらしゃべる余裕もあるのか…」

そうして王都に向けて歩き出す。するとクリットが

「そういえば、名前聞いてなかったね」

「あぁ、そうだったな。俺はコーエン、王都で小さいが鉱石売りをしている」

「僕はクリット。鉱石を売ってるの?」

「あぁ、ただそこまでいい物は売ってないぞ?」

…彼でいい。

「(分かった。)それでもいいから、店のなか見せてもらえないかな?なんならこのお礼って形でもいいからさ」

「…それでいいのか?」

「うん、僕は元々鉱石を探して王都を目指しているからね」

「そうか。でも求めている鉱石がない可能性の方が多いと思うぞ」


それから歩いて城壁に着き、

「…袋の中は?」

「商品にする鉱石だ。そっちも俺の」

「分かりました。…コーエン氏ですね。報告書をだすのを忘れないように」

「分かってるよ」

報告書、売った個数を管理しているのか。

そこからしばらく歩いて、人通りの少ない道にある明らかに繁盛していないと分かる店にたどり着いた。

「ここだ」

「確かに小さい」

中は棚にかごがありその中に鉱石が数個あり、店の奥カウンターの近くには大きなかごがありその中には片手で2つは持てるぐらいのサイズの石がかごいっぱいにあった。


コーエンはカウンターの近くに行くと

「ここで下ろしてくれ」

「カウンターの上でいい?」

「そっちの方が助かる」

その言葉と同時にクリットは袋をカウンターの上に下ろした。

「…分けるのにしばらくかかるから盗まなきゃ店の中を自由に見ていていいぞ。」

そう言うと袋を持って店の奥に入っていった。

「(どう?)」

鉱石に詳しいか?

「(いや、これっぽっちも。色が違うなぁていうぐらい)」

じゃあ、鉱石の入ったかごに付いている布に書かれているのは読めるか?

「(うん)」

あったのは銀、銅、石炭

これだけ?

「(そうだね。他にあるか聞いてみる?)」

いや大変そうだし「すみませ~ん、ここにある以外に鉱石はありますかぁ?」おい

「うん?そこにある以外か。まぁ、あるぞ。ちょっと待ってろ」

少しするとかごを複数持ってきた。おそらく仕分けが終わったのか棚にあった鉱石のかごもあった。

「うちで商品って言えるものはこれぐらいだ」

「金ですね」

「そうだ。棚に置いとけないから店の奥に保管してある」

これ以外は?

「他はないの?例えば売れないものとか?」

「そこまで気になるのか。ちょっと待ってろ」

コーエンが店の奥に行く。

交代だ。

「(分かった)」


「まぁ、この辺だ。棚に置かない理由は、色は付いているが使い道も何かも分からないからだ」

「ふ~ん(どう?)」

目の前に置かれた少し赤みがかった鉱石。詳しく調べないと分からないがおそらく鉄鉱石だ。

「(…これが鉄?剣とかのやつだよね?)」

「触っていい?」

「売り物じゃないからな。別に持っていってもいいぞ」

「じゃあ、砕いていい?」

「?あぁ、砕くならこれを使え」

そう言うとカウンターからハンマーを取り出した。

バキ

うん、赤い。ほぼ赤鉄鉱だな。

「ありがとう。あと、これも返す」

「おいおい、砕いておいて返すのか…」

交代だ。交渉を頼む。

「(え?)」

「で、うちに求めていた物はあったか?」

「…ねぇ、契約しない?」



「契約かぁ。クリットはまだ子供だろ?それになんでうちなんだ?うちよりもいいところはあるだろ?」

今から俺のいうことを言葉にしろ。

「いや、小さいからいいんだよ。それに契約といってもそこまで難しいものじゃない。僕がほしいのはそれなりの量の鉱石、そしてたくさんの種類の鉱石」

「そこまで種類はないんだが…。それは後にして、クリットは何ができるんだ?」

「鉱石の採るのに役立つ道具、それも他では見ないようなものを作ってあげる」

「…へぇ」

「道具があればたくさん採れるし、種類もそれなりに採れるでしょ?」

「道具を見ない限りには無理だな。どうせ定期的に鉱石がほしいんだろ?」

「うん!…でも道具を見ずに契約しても損はさせないよ」

「いや、この目で見るまでは信用出来ない」

「信用は大事だね~。じゃあ今から採るところに行こうか。案内よろしく!」

「おい、見るだけならここでもいいだろ?」

「そんなに小さくないよ?」

「…分かった」

「(これで大丈夫?)」

あぁ、ある程度は伝わっているな。


こうしてコーエンが使う鉱石採掘場に向かうことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る