第361話 風邪を引く
「え?女神様?……違うの?ミズキ?貴女がミズキなの?あちゃー、これはちょっと勝てないんじゃないかしら?でも逆に坊やじゃ無理ね。いえ、こっちの話よ。オホホホッ。……ねえ、ちょっと足を踏んでもらえるかしら?そうそう、グリグリっとね」
その後直ぐに警察が到着し、男達をダンジョンから出せないこと説明した。
そうしてダンジョン内で事情聴取を受けている内に佐藤さんが到着した。
この近くにもう一つ新ダンジョンができたようでそちらの保持に出向いていたのだとか。
その後に支部から白石さんが来てくれて、『ロケットキック』を喰らった男は一命を取り留めた。
手足を折り曲げた男達の治療もお願いしようとしたのだが、必要ないと警察の人に止められてしまった。
後で治してもらえばいいと『ヒール』前提で行動して側面もあったので、ちょっとやり過ぎてしまったかもしれない。
相川が倒していた奴も念の為にボキボキっとやっておいたので、結果的に『ロケットキック』を喰らった男が一番の軽傷となった。
ついでに相川も治療されて腫れてた顔も元通りです。
「夏希、良かった。『ヒール』ってすごいんだね」
「いや、ここはヒドイ顔!早く『ヒール』を、ってやる流れじゃない?」
「前より良くなってるし、整形だし!」
「なにをー?アンタたちも『ヒール』してもらった方が良いんじゃない?」
やいのやいのと、ようやく3人にも笑顔が戻る。
相川のやられっぷりが酷くてお通夜状態だったからね。
元気になって何よりです。
「さむっ」
雨の降っていたダンジョンから出てくると、濡れた体が冬風に晒されて想像以上に冷えた。
だがここで問題が起こった。
「いえ、ですから彼らはこちらで引き取ります。すでに話は聞いたのでしょう?不審者達の身柄はともかく、冒険者は協会の方で引き取ります。以降の接触もこちらを通して頂きます」
本部から来た職員っぽい人が、俺達がパトカーに乗るのに待ったを掛けた。
俺と総司ね。
女子4人は水木の家で着替え中です。
事前に取り決めとかあったはずだが、実際に冒険者と犯罪者がやり合うのは想定外だったようだ。
さ、寒い。
せめて話し合いが終わるまでダンジョンの中にいちゃダメですかね?
パトカーでもいいんだけど……。
そうこうしている内に水木の父親が帰ってきて、協会組と俺達は家の敷地内から締め出された。
ダンジョン自体の所有権は国にあるらしいが、土地は所有者から勝手に取り上げることは出来ない。
土地の所有者がダメって言ったら、近づくことも出来ないんだよね。
どうやらこのダンジョンはしばらく調査も出来なそうだ。
水木父の言いようだと、このまま泥沼化して裁判とかになりそうだね。
裁判ってどれくらい掛かるのだろうか?
次の新ダンジョン出現は5年後。
それまでに解決しないとこのダンジョンは人の出入りがないと言うことで消えてしまうだろう。
雨が降っている珍しいダンジョンだったのに勿体ないね。
「君達は千葉支部で待機しているように」
本部の職員さんに言われて白石さんと支部に移動。
まあ警察も何人かここに残るだろうし、別段護衛も必要ないだろう。
支部に着くまで濡れたままだった。
支部に着いても俺達はダンジョンに入れないので白石さんに中に入って着替えを持ってきてもらい、ようやく着替えられた。
「で?お前は何故そこにいたんだ?」
そして今度は怖い顔をした支部長に取り調べを受ける。
またお前か、と。
俺だけじゃなくて総司君もです。
っていうか総司は別の人に話を聞かれている。
支部の職員は新ダンジョン出現の対応に追われていてほとんど出払っているので、支部長自らの取り調べに参加するのはいいとして、何故俺の方に支部長なのか。
不公平では?
ちなみに霞さんは成田らしい。
空港の敷地内に『ダンジョンゲート』が出来たらしく霞さんにその対応を任せたのだとか。
あとは某遊園地の近くにもできたとさっき白石さんが言っていた。
そっちには茜さんが行ったとか。
これは後で分かったことだが、どうやら今回は比較的に人が多い場所にダンジョンが現れたらしい。
以前までは山の中とか海の中にも出現してたみたいだけど、そういうダンジョンが消えて新たに人の多い場所に『ダンジョンゲート』ができたということになる。
どうやらダンジョンとしては人間にダンジョンを使ってほしいと言うことなのだろう。
「その前の記憶の治療の時に気絶したじゃないですか?その時にあの場所に行けって夢の中で言われたんですよ」
「夢?また真偽の確かめられない話しが出たな。どう報告したらいいものか……。そういえばさっき連絡があってな。お前の友達が犯人の仲間を見つけたらしいぞ。車にいた運転手だ。確保したと警察から連絡があった。これもお手柄だな」
ついでにそのお友達とやらも捕まえてほしいものだ。
「これも、ですか?新ダンジョンに勝手に入っちゃったんですけど、それに対するお咎めとかは?」
普通ならライセンスの剥奪……。
「状況が状況だ。褒められはしても咎められるようなことはないだろう。決めるのは本部だが、俺の方からも不利益なることはないように進言はしておく。……だから正直に答えるように」
おお、ラッキー。
北海道には行かなくていいらしい。
「はーい」
「返事は短く!ったく。それでお前が手足を折った犯人の強さはどんなものだったんだ?」
結局怒られた。
「一人がトリプル、上位ジョブ持ちでしたね。本部から越してきたお姉さん達よりは強いと思います。あとシングルの【収納】持ちが一人。残りの2人はジョブ無しのレベル1って感じでした」
「トリプル……、それを倒したのか?誰かに話したか?」
あ……。
「警察の人にも言いましたけど鼻で笑われましたね」
あーはいはいって感じで信じてなったようだ。
「少し大事になるかもな。【収納】持ちって言うのは?見たのか?どいつだったかは覚えているか?」
銃が3丁も出てきたので、すでに大事だと思うけど……。
俺達が上位ジョブ持ちっていうのは一応秘密だからね。
たぶん支部長は気が付いている。
しかし本部にはなんと報告するかと悩んでいるのだろう。
今から頑張って3人で倒したことに出来ないかな?
けど回避スキルを使ったところにキックで倒しましたってもう警察に言っちゃったからね。
「【収納】は俺達が来る前にそういう会話を聞いたって相川と一緒にいた子が言ってましたね。警察に話しているのが聞こえました。どいつかは警察も把握してるはずです。俺も顔は覚えてます」
白石さんを待っている間に黒ギャルと警察の会話が聞こえてきたのだ。
相川が最初にぶっ飛ばした奴が起きないと仕事にならない、そしてそいつの護衛の為にトリプルの奴が来た、と話していたらしい。
状況から見て【収納】持ち、そう警察の人も言っていた。
「益々大事だな。そんな奴らを送って来れるような組織が絡んでる訳か……」
何やら考え込んだ支部長に電話が掛かってきて、その日の支部長からの取り調べは終わった。
そして総司と佐藤さんが風邪を引いた。
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