第360話 足は手の3倍の筋力があると言う
(【チャージ・鎧・敏捷アップ・上】【チャージ・鎧・魔力アップ・上】【チャージ・鎧・耐久アップ・上】【チャージ・鎧・腕力アップ・上】)
スーパーモードはスピードが命。
結局1番最初に敏捷を使うように直した。
反動を恐れて0.1秒を無駄にしてはいられなかったからだ。
ちなみに鎧は着ていないが発動の『触媒』となっているのは靴である。
『ロケットパンチ』でガントレットを飛ばせるなら『ロケットキック』も使えるだろう、からの、なら靴も強化できるでしょう、の理論です。
(【チャージ・鎧・防具強化・鎧・上】)
防具強化はスーパーモードを発動させてから。
(【索敵】)
まずは現状確認をしよう。
ダンジョンに入った時点で【気配察知】、【気配遮断】は使っている。
【索敵】を使ったのは近くに隠れている奴がいないか調べるためだ。
専門の斥候職なら【気配察知】に引っ掛からない可能性があるからね。
「なーつーきー!」
走り出した総司。
スーパーモード中なので、ゆっくりに感じる。
鎧のスーパーモードは上級の強化になるので槍単体のスーパーモードよりもゆっくりに感じる。
相川は倒れている……、が【気配察知】に反応があるので生きてはいる。
間に合ったみたいだ。
そしてその横に立っている男。
【気配察知】・梅本理論によれば強さは並みといったところ。
(アネゴさんくらいかな?)
他に知っているトリプルランクで言うとアネゴさん以外のなり立ての女性冒険達よりは強いが、協会の職員の石川さんと『黄緑さん』よりは落ちると思う。
相川の方が大分強いはずだ。
では何故相川が倒れているのか?
相川から少し離れたところに水木達3人、こっちも無事。
そしてその近くに銃を持った男。
なるほど人質か。
もう一人男たちの仲間っぽいのが倒れているので、一人倒した時点で人質を取られて何もできなくなったようだ。
『◇-◇-◇-◇-、◇-◇-◇-◇-!!』
『△-△-△-△-』
何語?
よくわからないが、こちらに銃を向けてくれた。
(【ゲート】)
銃を持った男の真横に『左目のゲート』、俺の隣に『右目のゲート』を出して、銃を持った腕を掴んで引っ張る。
引き寄せたらサッと『ゲート』を仕舞う。
この間0.5秒ってことで。
おっとっと、引っ張った拍子に手の骨をグシャッとやってしまった。
手加減をミスったのはダンジョンに入りたてだからということと、こいつは冒険者じゃないからだ。
レベルやステータスの補正がないとこんなものだろう。
地面に転がっている
ついでだから残りの手足もボキボキっとやっとく。
ここで少年漫画なら、人質がいなくなったから相川にもう一回戦ってもらう熱い展開なんですけどね。
俺達の戦う準備を始めた敵にソイツはまだ負けてねぇぜ、って。
で、敵が振り返ると相川が立ち上がっている的な。
でも今回は総司君が助けに入る少女漫画的な展開のようです。
「そーうーじー、だーめー、こーいーつー、つーよーいー!!」
倒れていた相川が叫ぶ。
元気そうじゃないか。
(やっぱり戦ってもらおうかな?)
確かに総司よりは強いように感じる。
どうも梅本理論では魔法職は弱く感じるようだ。
でも総司なら……。
「【すーいーあーつー】!!」
うまい、降っている雨を雨を利用した『水魔法』。
総司の手からレーザーのように飛び出した『水魔法』は男の足に……。
(回避スキル!?ここだ!『アーマーショット』!)
回避スキルを見たらつい撃ってしまった。
いや、つい最近まで永遠と回避スキルを使い続けるヤツと戦ってたものでですね。
回避スキルを見るとついその終わりに攻撃を合わせちゃうんですよ。
だって、このタイミングで攻撃しないとまた回避スキル使うんだもん……。
(あ、ヤバイ……)
サッカーボールを蹴る要領で『アーマーショット』を使ってしまった。
足から飛び出した靴は先程の総司の『水魔法』を超えるスピード、まさにレーザーのように射出され、『チャージ・鎧』の効果で慣性を無視し更に加速までして男の腹に……。
『く』の字に折れ曲がった男の体はどこまでも吹っ飛ぶ。
「おいっ!あぶねぇだろ!今かすったぞ!」
スーパーモードが切れて時間の流れが戻る。
総司は怒っているが、かすっていない。
靴が横を通り抜けた衝撃でそう感じたのだ。
それ程の威力……。
「うおー、大丈夫かー!」
落ちてきた靴には目もくれず、飛んでいった男に駆け寄る。
脈は……、わからん。
息は、してる。
心臓も動いてるな。
『ゲボッゲボゥ』
ひゃっ、血を吐いた……。
き、気道確保、ってどうやるんだっけ?
いやいや、言い訳を聞いてくれ。
MPは10も溜まってなかったから大丈夫なはずだったんですよ。
じゃあ何が問題だったかと言うと、サッカーボールキックだ。
普段『ロケットパンチ』を使う時は、ノーモーションから発射する。
勢いを付けないのだ。
しかし今回はサッカーボールキックから『アーマーショット』を使ったことでその分の勢いが乗ってしまった。
槍を投げるときはMPが10も溜まっていれば丘の頂上にいる見張りオークを簡単に貫く筋力が俺にはある。
MPが10に満たなかったとはいえ、足の筋力は手の3倍とよく言う……。
「手加減をミスってヤッちまったのかもな」
「……そう。自業自得よ」
総司達の会話が聞こえてくる。
あいつら、縁起でもないことを言いやがる。
しかし手が震える。
(俺も梅本さんと同じく北海道に……)
あ、ミコさん、梅本さんを見つけられたかな?
あっちは今頃大雪かな?
そう言えばこのダンジョン雨降ってるね。
雨降ってるダンジョンって貴重なんだよね。
水源になるし、非常時の避難場所に指定されてたりするんだ。
でも同時にそういうダンジョンに犯罪者が逃げ込むと自給自足されて捕まえられなくなるから、普通は一般には公開されない。
海外だとそういう事例が多いからね。
ここは自衛隊専用ダンジョンにでもなりそうだ。
……現実逃避である。
これが夢だったらいいのに。
(あ、女神がいる)
やっぱり夢だったか?
まあ、ちゃんということを聞いて水木の家に来たんだから報酬を貰おう。
「ちょっと足踏んでもらっていい?」
「え?靴を履いてない方を?こ、こう?」
そうそう、右足をグリグリっとお願いします。
痛くない、やっぱり夢のようだ。
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