第348話 マンティコアより強いレイス

『ピエエエエ』


 効いた!

 レイスが落ちてくる、だが実体がないためか音は出ない。

 このチャンスは逃さないぞ!


(【チャージ・槍】【チャージ・盾・上】【チャージ・鎧・上】!)


 ウルトラモードで駆け寄る、が……。


(効いてない?)


 槍は相変わらずスリ抜ける。

 苦しんではいるが、それはさっきの投げ槍の攻撃によるものだろう。

 その証拠にもうミアさんのような鳴き声は上げない。

 何が違うのか?

 今までと違うことと言えば……。

 投げたのが槍だったことか?

 休憩の時に上に投げるのはいつも近くにある『剣聖ちゃん』の剣だった。

 でも槍も投げたことがあったような?

 いや、霞さんの槍が新しくなってからはこれを含めて2回……。

 その2回ともでレイスは悲鳴を上げている。


(あの新しい槍ならダメージを与えられるのか!?)


 一旦距離を取って周囲を見回す。

 ない。

 だって投げたもん!

 折角気が付いたのに……。


(あっ、あの剣……)


 変わってる。

 そうだ、『剣聖ちゃんスケルトン』も変わったのは髪型じゃなくて剣だったのだ。

 この剣も鍔まで綺麗な銀色……。

 銀……銀か?

 もしかしてこの剣も?

 銀で出来た剣でアンデッドに特攻とかそういうヤツ……。


(チッ。『マジックシールド』!)


 持ち直したのかレイスが火球を放ってきた。

 でも攻略の糸口が見えた。

 剣を拾い上げる。

 更に飛んでくる火球を『マジックシールド』打ち消し、踏み込む。


『ピィーーー!』


 ……振りやすい。

 『剣聖ちゃんスケルトン』がいつも使っている剣聖モデルの剣よりも細身の剣だ。

 軽い、というよりもバランスがいいのだろう。

 普段剣を使わない俺でも問題なく片手で扱える。

 言い難いことだが、これを作った職人はミアさんより腕がいいのかもしれない。


「あ、待て!」


 剣に驚いている間にレイスを逃がしてしまった。

 上に昇られると攻撃手段がなくなる。

 いや、剣を投げればいいのだろうがそうするとまた特攻武器を失うことになる。

 そして休憩時間の終わり……。

 『青影スケルトン』と『万能侍スケルトン』が現れる。

 




 スポットライトを浴びる。

 ……はい。

 MPが切れて負けました。

 結局MPがなくなると火球が防げなくて負ける。

 攻略の糸口は見えたのだが、レイスはダメージを受けた後、上に戻ってたら下りて来なくなった。 

 上に逃げられて火球を撃ち続けられてもMPが削られてジリ貧……。

 なら……。


 



 スポットライトを浴びる。

 MP100の【チャージ・槍】を耐えられた。

 『剣聖ちゃんスケルトン』でもMPが50くらい溜まってたら倒せるのに?

 霊体だから物理に強いとかそうヤツか?

 最後に回して、残ったMPを全部ぶつけるか……。

 でもアイツが最後とは限らないんだよな?


 



 スポットライトを浴びる。

 嘘だろ?

 MP300でも耐えたぞ?

 マンティコアが300から400の間で一撃なのに?

 40階層のボスより強いのか?

 しかも頭だけになったのに火球を撃ってきたし……。

 MPが切れる寸前で【チャージ・槍】をぶつけたから『マジックシールド』が出せずに直撃をもらった……。

 これ以上はMPを切り詰められないぞ?





 スポットライトを浴びる。

 ……ダメだ。

 他のヤツは【ゲート】で誤魔化せても、『剣聖ちゃんスケルトン』だけはウルトラモードと『チャージ・鎧』に『アーマーショット』で100は使いたい。

 他のところでどうMPを節約するか……。

 霞さんと『万能侍スケルトン』の鎧は強化されてるから、こっちも武器強化無しだと抜けない……。

 逃げる『青影スケルトン』に追いつくのにもハイパーモードじゃないと……。





 スポットライトを浴びる。

 今のはよかったんじゃないのか?

 うまく『剣聖ちゃん』を『符』の上におびき出せば……。

 いや、出てくる場所は決まってるんだ。

 最初からそこに……。





 スポットライトを浴びる。

 あー!もー!

 今のMP400溜まりそうだったのに……。

 よし、アイツだけ殺す……。





「え?あ……」


 頭が、割れ、る……。

 何をされた?

 ダメだめだ、立ってられない……。

 『剣聖ちゃんスケルトン』が来るぞ……。

 『チャージ』を……。

 槍は?レンタルの槍はどこだ?


「春樹さん!?春樹さん!?」


「え?この子、急にどうしちゃったの?」


「支部長が怖い顔してるからビックリしちゃったのよ!」


「お、俺は何もしてないぞ?」


「春日野さん、落ち着いてください。体の力を抜いて。先生、見てないで何とかしてください!」


「私だってビックリくらいするさ。まずは寝せよう。はい、ライト見てねー」


 眩し!

 スポットライトか?

 今回もダメだったよ……。



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