第343話 アンデッド特攻武器

 ミコさんはいなかった。

 平松さんによれば、梅本さんを探しに沖縄に行ったとかなんとか。

 何が彼女をそこまでさせるのか……。

 そう言えばこの前、雨宮先生が北海道にも行って来たらしいけど、そっちの支部にもそれらしい人はいなかったと言っていた。

 ダンジョンには入れないはずだから支部を探してもしょうがないと思うんだけどね。

 的外れな場所を探してると思ったものだ。


「スケルトンに効く武器か……。アンデッドに効くとなると材質は銀か?材料はシルバーゴーレムさんがいるからいいけど、強度がな……。合金にするか?いや、銀の合金ってなんだ??でも銀の純度が高い方が効果は高そうだな。となると銀メッキか?わからん。色々作って試してみるか」


 『剣聖ちゃん』が帰る前にミアさんのお店で武器を注文していった。

 40階層台に出る、スケルトン対策の武器を探しているらしい。

 ミアさんのお店だけでなく、方々に注文しているのだとか。

 今、ミヤコさんが一生懸命が考えているけど……。


「銀ってそもそもアンデットに効果あるんですか?」


 相川がミヤコさんに聞く。


「まあオレがそう思い込むことが大事だな。効果で言ったら、逆にどの程度のモノを渡すかで悩んでるくらいだよ」


 思い込む?

 スキルは使い手次第で効果が変わるって聞いたことがある。

 【気配察知】一つとっても、アツシさんは気配の大きさで相手の強さがわかるみたいだし、『青影』は相手が自分にどのような感情を抱いているかわかるみたいだ。

 俺なんかゴブリンと人の判断も付かないのにね。

 【鍛冶】でも一緒ってことだろう。


「本気では作らないってことですか?」


「いや、物自体は本気で作るよ。トリプルランクの生産職が作る、どの武器よりもいい物を作ってやるさ……。ただその後にスキルを使うかどうかって話だな」


「ああ、そういう……。でもアネゴさん達にはもう渡してるんですよね?」


「武器だけな。でもアイツ等でも、使った感想が気持ち悪いとかだったからな……。【剣聖】に変な物を渡したらすぐバレちゃうんだよなぁ。その辺は霞さんと要相談ってところだな」


 相川とミヤコさんの会話は意味不明過ぎてついていけないが、キモチワルイ武器って何だろう?

 勝手に動くとか?


「春樹、これやるよ」


 総司が何か手渡してくる。


「紙?あ、符か。いいのか?明日使うヤツだろ?」


 明日は40階層でマンティコアと戦うことになる。

 俺は見てるだけなんだけどね。


「MPが丁度一枚分余ったからな。お守りだ、持っとけ」


 俺が持っててもね……。


「どうやって使うんだ?」


「『武器強化』の要領で魔力を流せばパスが繋がるから、後は任意のタイミングで起動させるだけだ」


「なるほど……」


 わからん。

 そもそも『武器強化』ってやったことも無いんだが……。


「結構威力あるから、自分の方に向けて使うなよ?」


 ん?表と裏、どっちから魔法が出るんだ?

 お札って張って使うものだよね?

 オデコに張って使うなら文字の書いていない裏面から出るのかな?

 いや、ここは素直に聞いて……。


「ただいま、戻りました。『ブルーオーシャン』の面々は帰宅したので、フォーメーションは全て解除になります。お疲れさまでした」


 渡辺さんが戻ってきた。

 渡辺さん一人に話があるということで、『剣聖ちゃん』達と地上の方の支部に行っていたのだ。

 『剣聖ちゃん』達はそのまま帰ったみたいだね。

 後、忘れてたけど避難訓練も終わったみたいだ。

 訓練中に歩き回ってたけど、後で怒られないかな?


「あ、霞さん、ちょうど良かったぜ。依頼された武器のことで相談があるんだけど……」


 ミヤコさんが渡辺さんに相談を持ち掛ける。


「武器は全力でお願いできませんか?そのことについて私もミアさんに相談したいので……、今日はウチに来てください。それと不測の事態に備えて依頼された武器と同じようなの作成もお願いします。もちろん同じだけの金額をお支払いしますので」


「いや、金は要らないけどさ……。不測の事態ってなんだ?」


 明日、マンティコアを倒したら俺達も40階層に行けるってことだよね?

 俺もレベル的には行っても問題ないはずだ。

 それこそスケルトンに効く武器なんてあれば……。


「【剣聖】が嫌なことを言い残していったので……。まあその話も後で、と言うことで。そろそろ時間ですので、春樹さんを外まで送ってきます。春樹さん、行きましょう」


 店内にいい匂いがしてしてきたところで俺は門限である。

 俺も偶にはここで皆と一緒に食べたいのにね。

 まあ店の賄いを部外者の俺が食べるのも違うか……。


「春樹さん。春樹さんは50階層に興味がおありですか?」


 『ダンジョンゲート』を抜けて地上に出てきたところで渡辺さんに聞かれた。


「興味ですか?まあどうなってるかは気になりますね」


「……。では『ブルーオーシャン』のことはどう思いますか?」


 何の質問だ?


「どうって言われても……」


「死んだら悲しいですか?」


 当たり前のことを聞くね。


「幸也さんとは最近知り合ったばかりだけど、よくしてもらってるから死んだら悲しいですね。他の人たちは……。まあ今日、もう会話もしちゃって知り合いになってしまったので死んでほしくはないです」


「……そうですか。明日は40階層です。今日は早めに休んでくださいね。ではまた明日!」


 急に明るく見送られた……。

 何の質問だったの?



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