第4話 おや、誰か来たようだ

 2つ目の『スキルのゲート』を出すことによって、自分の特殊スキル【ゲート】がダンジョン内にある『ゲート』に近いものを好きなところに出せる能力……、言わばテレポート能力であること分かった。


「移動系で合ってる……のか?」


 移動系というと【高速移動】や【脚力強化】に【ジャンプ力アップ】も含まれる。

 有名どころでは【浮遊】とか空を飛ぶのもあるが、テレポートするみたいなのは聞いたことがないな。

 相変わらずこれが魔法系でもある可能性は否定できないが、移動を助けるのものなのだから移動系であることは確定だ。

 少なくとも『クソスキル』ではなく、アタリに分類されていいスキルだろう。

 『クソスキル』というと、目が良くなったり、耳が良くなるだけってスキルもあるし、重さを計ったり、距離を測るスキルなんて言うのも『クソスキル』に分類されるだろう。

 また、『クソスキル』ではないけど、草木の成長を促すとか、土を固めてレンガにするみたいな、戦闘ではまったく使えないスキルもある。

 この【ゲート】が戦闘で使えるかはまだわからないが、ハズレではないことは確かだ。


「とりあえず検証を続けるか。『スキルのゲート』を2個出したら繋がった。では3個出すとどうなるのか?」


 気を取り直して検証開始だ。

 今度は声を出さずに右の『スキルのゲート』の更に右に右手を出して念じる。


(【ゲート】)


 フッと正面にあった右の『スキルのゲート』が消えた。

 そして右手の先に新しい『スキルのゲート』が出来ている。

 声を出さなくてもスキルを発動できるのは間違いない。

 たまに声に出さないと発動できない人もいるらしいけど、俺は大丈夫のようだ。


「2個が限界なのか?」


 そう言いつつ新しく出来た『スキルのゲート』に右手を入れると、左の『スキルのゲート』から右手が現れる。


「繋がってるな。……じゃあ次はどうなる?」


 右手を抜いて、その手を正面の先程まで『スキルのゲート』があった場所にかざして念じる。


(【ゲート】)


 順当にいけば2回目に出した左の『スキルのゲート』が消えて、正面に新しく『スキルのゲート』が出来るはずだ。

 ……しかし結果は違った。


「これで右の『スキルのゲート』が消えるのか。……なんでだ?」


 右にあったはずの『スキルのゲート』が消えて、正面に新しく『スキルのゲート』が出来た。

 左の『スキルのゲート』はそのままだ。


「出した順番に消えて新しいのが出来るんじゃないのか……」


 左の『スキルのゲート』は2回目に出した『スキルのゲート』だ。

 なのに新しく『スキルのゲート』を出したら2回目ではなく、3回目に出した右の『スキルのゲート』が消えた。

 今度は左の『スキルのゲート』に左手を入れてみる。

 ……正面から左手が出てきた。


 「繋がってるな。……ん?左手?そうか、左手か!」


 左手を抜いて、今までいた場所から少し距離を取る。

 そして左手を前に出して念じる。


(【ゲート】)


 新たに『スキルのゲート』が出来たの確認して、今までいた場所の方を見てみる。


「……うん。たぶん成功してるな」


 距離を取った所為で少し分かり難いが、左にあった『スキルのゲート』が消えている。

 

「つまり俺の特殊スキル【ゲート】は右手と左手から『スキルのゲート』をそれぞれ作り出すことができて、それは繋がっていて、距離が離れていてもテレポートのように移動できる、ヨッと」


 新しく左手で作り出した方の『スキルのゲート』に飛び込んでみる。


「うん。多分、右手で出した方の『ゲート』の位置だな」


 正面に木がある。

 木の陰に戻ってこれた。

 右手で作り出した方の『スキルのゲート』はすぐ後ろにある。


「もちろん行き来もできるよね?」


 振り返って右手で作り出した方の『スキルのゲート』に入る。


 ……成功。

 左手で作り出した方の『スキルのゲート』から出てこれた。


「何回でも行き来できそうだな……。???……あれ?」


 クラッというほどではないが何かおかしい。

 回転していないのに目が回ったような?


「方向感覚か?連続で行き来したから?……これは」


 部屋の模様変えをしてベットの向きを変えたときに似ている。

 次の日の朝、目覚めると陥る変な感じ……。

 おお、こっち向きか、って。

 あれだな。


「1回ならそうでもないけど、連続で行ったり来たりはダメだな。……フゥ」


 深呼吸だ。

 吸ってー、吐いてー。

 吸ってー、吐いてー。

 ……落ち着いたかな?


「どっちから来たんだっけ?」


 落ち着いたが方向感覚は戻っていない。

 辺りを見回すと目の端に何か動いているものを捉える。


「おや、誰か来たようだ……」


 そういえば木の陰から出てしまっているな。

 まあ誰かが来たのは『1階層のゲート』とは反対側からだが……。



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