第2話 受付嬢・林桜さん
名前:春日野 春樹
ジョブ:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
腕力:1
耐久:1
敏捷:1
魔力:1
スキル:【ゲート】
名前が出ているのは面白いな。
偽名を使っていたり、自分の本当の名前を知らなかったりしたらどうなるか……。
まあ今は考える必要はないな。
ジョブなしのLv1はいいだろう。
入っていきなり高レベルという話は聞いたことがない。
『ステータス』の数値、パラメーターもだ。
HPとMPが10。それに腕力、耐久、敏捷、魔力は1と。この6つはレベルとジョブに依存するので初期値がこの数値なのだろう。
ジョブによって数値は倍掛けになるので、この状態のままレベルを上げても、先にジョブを得てからレベルを上げても数字は一緒になる。
なのでジョブなしでレベルを上げても全然問題ない。
問題なのは……。
『特殊スキル』である。
【ゲート】ってなんじゃい。
「春日野さん?」
林さんが心配そうに見つめてくる。
心中お察しします、といった表情で続ける……。
「大丈夫ですよ。『特殊スキル』はあくまで最初の指針を決めるためのスキルで、それが全てではありません。現在日本で一番の冒険者と言われる方も戦闘系の特殊スキルではありません。それにどんなスキルも使い方次第なんです」
おそらく『クソスキル』だったと勘違いしているのだろう。
『クソスキル』……。
一個しか覚えられない『特殊スキル』で所謂外れと言われるスキル群の総称だ。
今後一切変えることのできない『特殊スキル』でアタリを引いた者とハズレを引いた者では大きな差が出る。
スタートの段階で『クソスキル』だったのでは今後が思いやられるというもの……。
(まあ、実際に『ゲート』が『クソスキル』という可能性はあるんだが……)
それでも大丈夫だよ、と力強く否定してくれる林さん。
美人なだけでなく、性格もいいのだ。
「いえ、想定していたスキルではなかったので驚いただけです。魔法とか使ってみたいんですが、たぶん移動系の特殊スキルみたいです。」
いや、移動系とは言ってみたが、この【ゲート】が魔法系の可能性もあるんだよな。
『移動系』とはそのまま、移動に役立つスキルのことだ。
自身の移動スピードが上がったり、ステータスの敏捷に補正が掛かったり、中には空を飛んだりする、まさにトンでもスキルもあったりする。
『魔法系』はMPが増えたりする『魔法スキル』に関与するスキルだったり、【ファイヤーボール】みたいにそのまま魔法が使えるスキルなどがある。
つまり【ゲート】が移動魔法という可能性もあるのだ。
「あ、ダメです。言っちゃだめです。スキルのことは。ごめんなさい。聞き出そうとした訳ではなくて……何も聞かなかったことにします」
焦って両手を体の前で振ってダメダメとする林さん。
美人はこんな仕草も絵になるものだ。
「……内緒ですけど、移動系なら武器は槍なんかお勧めですよ」
今度は片手を口の前に持ってきて内緒話の様にヒソヒソ。
「移動するパワーをそのまま乗せて攻撃できたらどんなモンスターでもイチコロです!」
そう思ったら今度はガッツポーズだ。
「でも魔法を使いたいならジョブは魔法職になっちゃいますね。槍を使える魔法職ってあったかな?難しぃですね……」
今度は人差し指を顎のあたりに当てて首をコテン、と考えるポーズ。
活発な印象の通り忙しい人だ。
でも本気で考えてくれているのが伝わる。
俺が不本意なスキルを得たと思って元気づけようとしてくれているのだろう。
性格が良くて美人。
好きになりそう……って違う、違う。
俺はダンジョンに来たんだ。
【ゲート】のことを考えなければ。
今度は俺が首をブンブン左右に振っていると林さんから声が掛かる。
「すみません。勝手に盛り上がってしまって……。ダンジョン内の施設を案内しますね。それと特殊スキルについては個人情報保護の為、今は使用しないでください。全ての講習が終了後、改めてダンジョンに入りなおしてからの使用をお願いします」
「あ、こちらこそスミマセン。」
お互いにペコペコしてしまう。
「……それとありがとうございます。」
小さい声でお礼を言ったので聞こえていなかったかもしれない。
返事はなかった。
この後の講習は俺にとってはとても楽しい時間だった。
この千葉ダンジョンは東京にある協会本部のダンジョンが近いため、訪れる人が少ないらしい……。
なので新人研修も毎回一人か二人なのだとか。
でも今はそれに感謝だ……。
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