電波編

「電波を受信しています」


今、目の前には、ぼさぼさロングの白い髪が特徴的な小学生と見紛う未性徴な身体をした少女がいる。

俺らの高校と同じ制服を身に纏っており、飛び級でもしていない限り年齢も同じ頃だろうが、とてもそうは思えない。

そんな少女が道行く生徒に関わらず老若男女、果ては鳥や犬や猫にまで、手に持ったスマホを近づけ電波な発言を繰り返している。


眩しい朝日の下、騒がしい日常の前に英気を養うわずかな登校の時間だというのに、まったくどうしてこう、おかしなイベントが襲い掛かってくるのだろうか。

もうこれ以上イかれた知り合いを増やすわけにはいかない。

しかし、これまでの経験上、避けようとすればするほど、より事態が深刻になっていたような気がする。

たぶん、これもそういうことなのだろう。

それならば、目立つような行動をせず、周りの一般人と同じように何食わぬ顔で歩いて彼女に声をかけられても無視して行けばいい。


少女は相変わらず、電波を受信しています、と人々に話しかけており、遂に俺の番がくる。


「おっ、そこのお兄さん、いい電波持ってるねぇ、私と送受信しない?」


「なんでや」


「受信しました」


スマホを俺の方へ掲げた少女は大きく目を見開き、さらに受信しました、と。

どうしてこうなる。

どうして俺の時だけセリフが違ったんだ。

もういいや、このままスルーして進んでしまおう。

しかし、歩き出した俺の後ろをスマホを掲げたままついてくる少女。


「おしりから電波漏れてるよ」


「ああもう、うるさいなぁ、俺のケツはWifiスポットなんだよ」


「お金は?パスワードは?」


「フリーだよ、好きに使ってくれ」


このままでは、彼女は地平の果てまでついてきそうだ。

それならば、その掲げられたスマホに何かしらのアクションをしなければ終わるだろうかと、やけくそになった俺は振り返り彼女のスマホに自分の人差し指をくっつける。


「い~てぃ~。はは、バカみてぇ」


本当に、最近の俺はどうかしてるぜ。

さあ、これでもういいだろうと去ろうとしたが、彼女は急に俺の右腕の裾をぎゅっと掴んだ。

小さいおててが可愛いですね。


「やっぱりズレてる。あなたは異分子で、本当に生きているのかもしれない。でも、それさえも創られたもの?私が勘違いするように?」


「何言ってんの」


「他の人間が、私と同じような五感と意思をもって、生きている。それは、証明できない。だって、他人のことなんて何一つわからない。それなら、私以外の人間は全て、NPCかもしれない。私の世界を彩るキャラクター、あなたは、本当に生きている?」


中二病かつ思春期なら誰もが一度は考えそうな話。

他者は本当に自分と同じような感覚を持って生きているのか?

そんな話。

共感できないこともないが、そんなものを真剣に考えるのはどうかしているぜ。

しかし、無表情であるがこちらを深く見つめる彼女のくりくりした瞳、なんだかこう、言い様の知れないものが心の内に溢れてくる。


「私の頭の中が、この世界の全て。私が認識するから、あなたは存在する。私の知らないこの星の裏側は存在しないように、あなたも今まで存在してはいなかった。おめでとう、あなたは今、誕生した」


いや、やっぱり、これは関わっちゃいけない手合いだ。

変人の振りをしてでも距離を置くべきだろう。


「めすねこちゃわ、のすこいじゃば~、ピロピロぴ~」


いや、待てよ。

おかしな態度で接しても余計に面倒なことになると、学んだはずじゃないか。

そう気づいた時には時すでに遅し。

少女はなぜが頬を赤らめている。


「あなたはバグ。この青い空に走るノイズ。ドットが抜けた黒い空間。そこから覗けば、次元の壁は越えられる?きっとそう。向こう側から覗く本物の世界に、私はきっと恋焦がれるだろう」


相変わらず無表情ではあるが、どことなく期待を込めた瞳でこちらを見つめる彼女。

だが、ここで彼女に対し理解を示しては、もう取り返しがつかないところまで行ってしまう。


「何を言っているのかわからん。俺はクールに去るぜ」


「いいえ、あなたならわかるはず。あなたとならきっと次元を越えられる。平坦なこの世界から誰も存在しない場所へ、悲しみのない世界へ」


なんともしつこい。

指についた鼻くそくらい。

ああ、どうしよう、そう頭を悩ませている時。


「行こ?」


彼女の小さい手が俺の手を握る。

あれ、なんだろう、この気持ち。

女性と触れ合った時のドキドキとは違う、この胸が暖かくなるような気持ちは。

さっきまでの苦悩がすべて吹き飛び、歩き出した彼女の小さい歩幅に合わせてゆっくりと歩いていると、これはもう父性が噴火してしまう。


「飴ちゃん食べる?」


「うん」


俺はなぜか、ちょうど運よくミラクルなタイミングで棒付きキャンディが鞄に入っていたのを思い出しそれを少女に渡す。

彼女はそれを受け取るとすぐに口に含んだ。

コロコロして可愛らしい。


そのまま、俺は手を離さずに歩いて行った。

もう、いいじゃないか。

これ以上おかしな奴らとの関わりを減らそうとしても既に手遅れなんだ。

ぐちぐち言わずに与えられた環境で幸せを探す、それがジャスティストレイン俺らの青春だ。


「黙ってどうしたの?ロード中?」


「そうそう、ロード中、ロード中、そして俺らは今道路を歩いている途中。ヒィェア。わぁお、道路って逆から読んだらロードになるね!」


「う~ん、ちょっと違うかも」


そんな幸せも束の間、俺の適当な発言に反応した少女は俺の手をパッと離し、トテトテと離れて行ってしまう。

まぁ、またおかしなことに巻き込まれなかったってことで、結果オーライ。



「てなことがあってさ、これって、俺がロリコンってわけじゃなくて父性が溢れただけだよな?」


「知らない!なんで朝っぱらからそんな訳の分からない話を聞かされないといけないの!」


電波少女と別れ教室へと辿り着いた後、事の顛末を岡に話す。

しかし、彼女は頭を抱え嘆きの声を上げている。


「大体、これは私を主軸に巻き起こすドタバタに常識人のダーリンがツッコミをいれるストーリーでしょ!?これじゃ真逆じゃない!そんな頭のおかしい行動ばかりで、本当にラブコメヤレヤレ系の主人公だって自覚はあるの!?」


「そんな勝手に俺の生き様を決められても。いや、自分でも時々やりすぎる時はあると反省してるけども」


「時々じゃなくて常に!ダーリンの思考は世間一般の常識とズレてるのよ!」


「お前に言われるとは心外だが」


確かに、今まで経験していなかった数々の人付き合いを経て、俺の本来の性格が表層に現れたような感覚はある。

だが、それでも常識を捨てた覚えはない。


「じゃあ、テストしてあげる。試しに私がボケるから、常識的なツッコミをしてみてよ。ほら、何か適当な話題を振って」


「はぁ、わかったよ」


また面倒くさそうなことを言い始めたもんだ、と思いながら既に頭の中では彼女へ振る話題を考え始めている。

なんだかんだ、このような下らないやり取りは嫌いじゃないのだ。


「なぁ、もぎたてフルーツって、ちょっとエッチな響きだよな。お胸に付けたマスクメロン、一つ私にメンソーレって感じで」


「……うん。股間につけたピーナッツ、一つ私にサラマンダーって感じよね」


「いや、ピーナッツはフルーツじゃないだろう」


「ほら!ツッコミどころがおかしいじゃない!そもそも、最初のくだりからイミフだし!」


「ハハハ、イミフなんて久しぶりに聞いたぜ」


岡の狂った世界観に話を合わせてやったというのに、彼女は怒り心頭のご様子。

いや、わかっているんだ。

こいつが求めているのは、普通の主人公を振り回すドタバタラブコメディのヒロインになりたいってことは。


「はぁ、もう、諦めようかな。こんなことやってても埒が明かなさそうだし、主人公なんて探せばそこら中に湧いているだろうし」


「でも、お前の悪評具合だと難しいんじゃないか」


「別に、この学び舎から一歩踏み出せばノーカウントだし。そう、恋を求めるならここでなくても、バイトでもして大学生とラブコメできるかもしれないし!」


「やめとけやめとけ。大学生なんて子供がアリの巣に木の棒を突っ込むくらいの感覚でアレをしてくるからな」


「どんなことしようと私の勝手じゃない!あ、もしかして、嫉妬してるの?」


嫉妬。

いや、拗らせ童貞の俺の近くへ、そのような生々しい現実を持ち込まないでほしいだけだ。

いや、そう、そうだな。


「まぁ、そうだな。お前のことは友人だと思っているし、一緒にいて楽しいと思う時があったのも事実だ。だから、そんなことになったら不快ではあるな」


その言葉を聞いた途端、先ほどまでの怒りはどこへやら岡は急にニヤニヤしだす。


「だったらさぁ、そこまで口出しするんなら、もう付き合っちゃうしかないよね」


「どうしてそう、すぐに極端な話になるんだ。もっとこう、ラブコメらしく階段をゆっくり上るように進もうぜ」


「呑気に過ごしていたらポッと出のダークホースが現れて負けヒロインになるのは御免でゴワス。だから、先にメインの座をいただいてコメディをやればいいのよ!」


はぁ、もういいか。

そうだな、一回付き合ってしまえば上手くいかないとわかって向こうから諦めてくれるだろう。

男は度胸、何でもやってみるもんさ。


「……そうだな。ここが人生の分水嶺だ。俺みたいな人間がまともな人生を送るならもっと強気でいかないと。そうだ、大人になってこじらせないように学生のうちに経験しておくべきなんだ」


「え?」


佇まいを正し、座っている椅子の向きを変えしっかりと岡椎名を見据える。

皆、タイトル通りにならなくて悪かったな。

俺はお先に一皮むけた男になるぜ。

高みで待ってるぞ。


「岡椎名さん、俺と、付き合ってください」


「あぅぅ。むりぃ」


瞬時に顔を赤く染め上げ俯く彼女。


「なんでやねん!せっかく勇気を出したのに!」


「だ、だって、ここは普通ダーリンが言い訳してウジウジしながらナアナアに済ませる場面じゃん!なにいきなり男を見せてくれちゃってんの!それに、私、攻撃力は高いけど防御力が低い系女子だから、そんな急に不意打ちされても!」


「うるせぇ!!結婚しよう!!」


「バカーッ!!」


「よし、いつもの痴話喧嘩にも一段落着いたようやな」


いきなり、南出が割り込んでくる。


「聞いて―な!朝から校内はホットな話題で持ち切りなんや!校内一の天才少女と手をつないどった奴がおるってな!」


「なに?天才少女って」


「知らへんのかい!超天才で偏差値は天井知らずのピッチピチの一年生、ちょっと言動がおかしいけど日本が世界に誇るギフテッド、その名も真城真白しんじょうましろのことを!」


そこまで有名なら俺の耳に入っていてもおかしくないはずだが、全く聞き覚えがない。

それに。


「普通高に天才少女がいる設定ってよくあるけど、常識的に考えてありえないよな」


「わかる」


「そんな細かいことはどうでもええねん!」


「で、それがどうしたっていうのよ」


「それがな、手をつないどった相手はなんと、童貞陰キャで冴えたところが一つもあらへんのに最近いろんな女子に囲まれて皆の注目を集めてる男子っちゅうねん!」


南出の話をどうでもよさそうに聞いていた岡がぎょっと目を見開き、こちらへ視線をよこす。


「あれ、またなんかやっちゃいました?」


もしかして、今朝のあの人物が天才少女だったのか。

それにしては、随分と、いや、天才特有の、いや、やっぱりどう考えても電波さんで間違いないだろう。


「ほら、既にそのツーショットもクラスのグループチャットに流出してるんやで!」


南出がそう言いながらアプリを開いた自分のスマホをこちらにかざしてくる。

そこには確かに、今朝、出会った少女と俺が手を繋いでいる写真があった。


「あれが天才少女?いや、それより」


気づかなければよかった。


「俺、そのグループに招待されてねぇわ」


「あっ」


岡を見ると、彼女もしょんぼりとしている。


「ま、ままま、ええやないの。それより、こっちをちゃんと説明してーな!」


「そ、そそそ、そうよ!さっきの話は、現実との区別がつかないダーリンの妄想じゃなかったの?自分のキャラ設定、忘れてない?どうしてそんな手が早いの?」


「向こうからやってくるんだから仕方ないじゃん」


「そこは普通、彼女がいるからって断りを入れるべきなんじゃないの?」


「いや、さっき告白して断った奴が何言ってんだ。というか、俺の告白した勇気を返せよ」


なんなんだコイツは、めんどうくさい。

押せば引き引いたら押してくる、こんなめんどくさい奴とは出会ったことがない。


「ふんっ、もう好きにすればいいじゃない。恋人だと思っていたのは私だけで、ダーリンはいつも冷めていたもんね」


「いや、だから」


「でも、私、めげません。たとえ彼が浮気しようとも、最後に帰ってくる場所は私の元だと信じていつまでもお待ちします。そんな気持ちを込めて歌います。愛の翳りは朝日に消えて」


そして、何処からともなく流れてきた演歌調の音楽に合わせて歌いだす岡。

気づくと、周りの生徒らの視線がこちらへ集まっている。

皆、勘違いしているのか俺への軽蔑の眼差しと岡への憐みの視線を。

一部の生徒は彼女の演歌に合わせて手拍子までしている。

ああ、このカップルが修羅場になったような空気、どうすればいいんだ。


「ねぇ、聞いた!?あの噂!」


唐突にひりついた空気を裂き、あの蓮さんが珍しく興奮気味に現れる。

あの噂といえば南出が言っていたことだろうが、なにをそこまで興奮しているのだろう。


「いや、その話はもう」


「あなたのケツ、フリーなんですってね!!さぁ、さっさとズボンを脱いでちょうだい!!」


「そっちかよ!」


何処のどいつから聞いていたのか、うねうねと動く大人のおもちゃを手にした彼女が狂気を感じる笑顔で近づいてくる。

しかし、こんなところで花を散らす訳にはいかないので、強引に蓮さんを押し出す。


「帰ってください」


「あん」


こうして、気が休まる暇もないまま、また騒がしい一日が始まるのだった。まる。



どうしてこうなった。

昼休み、唐突に俺のクラスに訪れた噂の渦中の真城真白さん。

そして、彼女はそのまま、あろうことか弁当を広げたランチタイム中の俺の真横、腕が触れ合うほどの距離に座ったのである。

彼女から陽だまりに包まれた甘い香りが鼻腔をつき、俺の正常な思考を奪っていく。


「あの、これは、どういうことなんでしょうか。早く離れてくれないと、皆の視線が心臓を貫きそうなんですが」


「私はあなたを知りたい。私はこの世界の主人公だと思っていたけど、あなたも主人公?本当に?あなたには視覚がある?あなたには思考がある?あなたはイデア界に生きている?わからない。わからないから、私はあなたを求めるの」


「な、何を言って」


「平行線が交差するまで、話し合おう?言葉と思考が形を失いドロドロになって、二人の境界線がなくなるまで、ずっと」


これは、中二病や電波というよりクスリをやっている系かもしれない。


「おーいおいおいおい、私というものがありながら、チミはいったい何をやっているのかね」


岡、参上。

この状況はあまりよろしくないため、彼女が何とかしてくれると助かる。


「恋人である私でさえ、ダーリンにそこまで接触したことがないというのに、我が物顔でそこに座るとは、殴られたいのかね?」


「おい、子供に手を出すなんてみっともないぞ」


「あぁん!?」


「パパ、こわい」


「大丈夫だ。お前のことはパパが命を懸けてでも守るからな」


なぜか真城さんにパパと呼ばれているが、悪い気は全くしない。

むしろこのまま、養子縁組を組んでしまいそうだ。


「あら、だめじゃない、パパ。こんな所に真白ちゃんを連れてきちゃ」


「は?」


そんなピリピリした空気の中、再びひょっこりと蓮さんの登場。

しかし、言葉の意味がよくわからない。


「ほら、真白ちゃん、帰りましょ?パパはお仕事中ですからね」


「やっ!」


蓮さんに腕を引っ張られるも、俺の腕を掴み離れまいとする真城さん。

全くこの子は、どこまで父性をくすぐれば気が済むのでしょうか。

いや、馬鹿なことを考えている場合ではない。

この流れは非常にまずい。

現に岡が、あっそういう流れか、という顔をしている。

ほら、きた。


「内縁の女が母親面してんじゃないわよ!娘よ、私が本当のママだ!!御覧なさいな!目元がクリソツでしょーが!」


「お前らいい加減にしろ!」


「認知してよ!」


「うるせぇ!」


ああ、いつまでこんなことを続けるのだろうと、ついに力なく身体を椅子の背もたれに預け天を仰ぎ見る。


「パパ、どうしたの?」


「もう、疲れた」


「そんなときは、これ」


岡と蓮さんが真城さんの親権争いをする中、彼女がゴソゴソと鞄から取り出したのは紙パックのウルトラ紫蘇トマトクリームカフェラテ。

なにこれ。


「これを飲むと一瞬でサイケデリックな世界に導かれるの。人間の思考を越えた新たな場所へと。そうすれば、そんなちっぽけな疲れなんて吹き飛ぶから」


「……飲んでいいのか?」


「うん」


彼女の鞄の中を覗くと何故か同じものが大量に常備されていたため、遠慮せずに受け取る。

たかが飲料、恐れることはないとストローを刺し一口啜る。

ドロリとした濃厚な甘い液体が口内に侵入し、コーヒーの苦みとトマトの酸味が同時に襲い掛かってくる。

後味は青臭い紫蘇風味。

総評として、形容しがたい味になっている。


「どう?」


「サイケデリック!!」


「ダーリン!」


「あれ、気絶しちゃった」



―――そこには、果てしない青空と草原が広がっていた。

何もかもをさらっていきそうな穏やかな涼風に、若草の緑の香り。

深い呼吸で肺に一杯の空気を取り込み吐き出すと、視界はクリアに、身体は今にも踊り出しそうなほど軽やかになる。


「目が覚めたかい?」


鈴の鳴るような声に振り向くと、そこには一人の、真城さんによく似た少女がぽつんと立っていた。


「良かった。もし、君が目覚めなかったら、この世界は終わるところだった」


「ちょっと待ってくれ。何を言っているのかさっぱりなんだが」


「わからないかい?君は、生まれながらにしての勇者だった。でも、それを恐れたこの星の創造主が、君を夢の世界に閉じ込めたのさ」


夢?


「悪いね、詳しく説明している暇はないんだ。私たちは幾度もの星の巡りを数えながら、この時を今か今かと待ち侘びていたんだ」


彼女は勢いよく腕を真上に挙げ、空を指さす。


「さぁ!翹望し激情を燻らせた者たちよ!今こそ英雄の元に集う時ぞ!」


その時、青空に黒い点が現れる。

鳥か?飛行機か?

そう目を凝らした瞬間、それは小さな点から一気に視界一杯の大きさへ。

それは強風を伴いながら俺の頭上を通り過ぎる。


「あれは、ドラゴン!」


鎧のような外殻を纏った赤黒色のそれは、大きな翼で空を回遊し俺の目の前に降り立った。

そして、そのドラゴンの背から複数の何かが飛び降りる。


「英雄よ、見よ!この者たちが君と共に絶望を打ち砕かんとする歴戦の勇士たちだ!」


エルフや獣人、ドワーフに騎士など、圧倒されるほどのオーラを放つ者たちが俺を見つめている。

そして、彼らを見た俺の胸には言い様のない熱い情熱が溢れだしていた。

これが、本当に俺が求めていたもの、いや、これこそが、俺がこの世界に生まれた理由だ。


「準備はいいかい?」


「ああ」


俺は、彼らの元へ、果てしない冒険への一歩を踏み出した。


―――えっ?


しかし、数は歩いたところで唐突に地面に大穴が開き、俺は足掻く暇もなく落下した。



「チャッピィィー!!!あ、あぁ、なんだ、夢か」


目を覚ますと、俺は保健室のベッドに横たわっていた。

ああ、そういえば、真城さんからもらった怪しい飲み物を飲んで気を失ったのだった。

外はもうオレンジ色、時刻を確認すると授業が終わり、丁度、放課後に差し掛かったところだ。


「ふぅ、あぶねぇ~。流行りに乗ろうとして方向転換した訳の分からない作品になるところだったぜ」


「何言ってんの」


上半身を起こし声がする方を向くと、そこには保健室の先生が立っていた。

長い黒髪に白衣を着た気怠げな若い女性、ぶっきらぼうだが生徒人気がある、確か、りょーちゃん先生と呼ばれていたか。


「先生ってリアリティがないっすね」


「は?急に何言ってんだ。頭開いていじってやろうか」


これまたキャラが濃い人だ。


「しかし、飲み物を飲んだだけで気絶するなんて、お前の身体はどうなっているんだ」


「いやいや、先生もあれを飲んでみればわかりますよ。あの化学兵器を」


「ウルトラ紫蘇トマトクリームカフェラテだろ?私も飲んだことはあるが、特に問題はなかったぞ」


なんだと。


「そ、そんな。それじゃあ、もしかして、おかしいのはそれじゃなくて、俺の身体なのか?」


「ああ。心して聞けよ。お前の余命はあと、五分だ」


「そんな、流行りのスイーツの賞味期限みたいに言われても」


「ま、冗談は置いといて。これといった症状もないし、身体に異常がないならもう帰っていいぞ。あ、それと、アレルギー症状も出ていないし特に問題はないと思うが、念のため、ウルトラ紫蘇トマトクリームカフェラテはもう飲むなよ」


「言われなくとも」


ベッドを抜け、保健室を後にする。

しかし、廊下に出た途端、地響きが向こう側からやってくる。


―――この感じ、岡か!?


「だぁーぁぁありぃぃぃいん!!」


血相を変えて煙を上げながらこちらへ向かってくる岡。

一瞬、逃げようかとも迷ったが、彼女が俺を心配して来てくれたのだと考えると、その思いがこの場所に足を固定する。

もし、本当にそうであれば、ここは漢らしく受け止めてやろうじゃないか。


「さぁ、来い!!」


腰を低くし彼女を受け止める姿勢を作る。

意識を集中させると、まるでスローモーションのように彼女が近づいてくる。

もう少し、三、二、一。


あと一歩というところで。

岡はあろうことか飛び上がり、こちらへドロップキックをかましてきた。


「ぐわあぁぁぁぁ!!」


宙を舞い背中から地面に倒れる俺。

なぜ、なぜだ、岡よ。


「あっ、ごめん。なんとなくやっちゃった」


「なんとなくで他人を蹴り飛ばす奴があるか!!」


「ほら、私ってば感情が昂ると制御不能になる二〇〇〇年代アニメメインヒロイン系女子じゃん?ダーリンのことがあまりにも心配で心配で」


心配している奴が蹴りをかますかよ。


「はぁ。まったく、今日はいつにもまして災難な日だ」


こんな日はさっさと帰って屁をこいて寝るに限る。

俺は立ち上がり、岡をスルーし歩き出す。


「あっ、待ってよ!ほら、愛しの椎名ちゃんがダーリンのカバンを持ってきてあげたんだから」


「おっ、サンキュー、気が利くな、愛してるぜ、んじゃまたな」


「ちょちょちょちょーい!そこは『その気遣い、心底惚れたぜ。どれ、ウェディングロードウォークの予行演習だ。一緒に腕を組んで帰ろうぜ』っていうところでしょーが!」


「えーんがちょ」


そういえば、最近はこうして岡と二人きりで馬鹿騒ぎすることなんてなかったな。

それに、一緒に帰るとなれば初めての出来事だ。


「そういえば、こうやってダーリンと二人きりで帰るのって、初めてじゃない?」


「奇遇だな。俺も同じことを考えてた」


「あっ、これ、結婚したな」


しかし、そんな二人きりの時間も束の間、玄関に到着したところで、あの人物と出会ってしまう。


「ぴぴるぴるぴ~」


「あっ」


玄関口で佇んでいた真城さんがこちらに気づき、おかしな声を上げながら近づいてくる。


「お~いおいおい、せっかくの放課後デートが台無しじゃないかね。ダーリン、ちょちょっと追い払ってよ」


「んなみみっちいことを言うなよ。ああ、真城さん、こいつのことは気にしなくていいから、一緒に帰ろう」


「うん」


そうして今朝と同じように俺の手を握る彼女。

相変わらず、小さいおててが可愛いですね。


「またそうやって、ちょっと変わった女の子に理解を示してすぐに惚れさすんだから。このスケコマシ三太夫!」


「へいへい、そうどす、わたくしが一、二、三太夫でございます」


岡を適当にあしらい、そのまま玄関口を後にしようとするも、その前に岡が立ちふさがる。


「ダーリンは本当にそれでいいのかしら?」


「なんだよ、急に」


「ダーリンに寄って来る変わり者の女はね、自分の寂しさを紛らわすことができるなら別に誰だっていい、そんな奴らの集まりなのよ!」


「ブーメラン!」


「そして、精神的に安定して経験値を積んだら、ダーリンよりもっとイイ男に靡いて行く、そんな尻軽女なの!」


お前が言えたセリフじゃないだろう。

ん?

真城さんの手に力が籠められたため、そちらへ視線を向けると彼女は俯きながら今にも涙を流しそうになっている。


「そんなつもりはなかった。誰かとあんなにお話ししたのは、あなたが初めてだったから」


そう言う彼女の顔の翳りには、俺もよく知っている感情が混ざっていた。

それは、孤独だ。


天才少女と持て囃されている、それだけならば聞こえがいい。

しかし、一時の話題性でレッテルを貼られた人物が、気づけば皆の視界の隅に追いやられていたなんてことはよくあることだ。

皆、友人との共通の話題に花を咲かせられるのなら、当事者のことなんてどうでもいいのだ。


真城さんも、そういう目に遭ってきたのだろう。

今までの彼女の行動を鑑みると、どれだけまともな人付き合いができていなかったのかがよくわかる。

他人との距離感を誤るのも無理のない話だ。


俺は真城さんの手を離し、彼女の前にしゃがみ込みその肩に両手を置く。


「真白。世界中の誰もが、お前のことを疎んだとしても、パパだけはずっとそばにいる。だから、そんな悲しそうな顔をするな」


「でも」


「でももへちまもない。遠慮はいらない、いつだって俺はお前を受け入れるつもりだ」


朝陽が差し込んだかのように、ぱっと明るい顔を上げる真白。


「パパ!」


飛びかかってきた真白を胸で受け止め抱きしめる。

そうだ、この娘が頼れるのは俺だけなんだ。

血のつながりがなくとも、真白は俺の娘だ。

それでいいじゃないか。

互いの身体で共有するぬくもり、これだけでいいじゃないか。


「岡、これからこの物語は親子のハートウォーミング物語になるんで、そこんとこよろずや」


振り返った時には、岡の姿はどこにもなかった。

まぁいいか。


俺たちは再度手を繋ぎ、夕陽を背に帰路に着いた。



「なぁ、あんたら、喧嘩でもしたんか?」


次の日の朝、俺と岡との間にはギスギスとした空気が流れていた。

こちらから何を話しかけても一方的に無視され、しまいには『ダーリンのバカ!カイショナシ!シイタケヤロウ!ウンコ!コウモン!』と悪口しりとりを披露して教室を出て行く始末。


そして、現在、俺はクラスメイトから彼女を泣かせるなよ、早く追いかけろよ、といった思いが込められた視線に晒されていた。


「喧嘩というか、何というか」


「恋人が泣いてるんやで、はよ追いかけて抱きしめてきいや」


「恋人じゃないし、別に、俺はこれで構わないんだけどな」


その言葉は果たして本心なのだろうか。

しかし、これでようやく正常な日々を取り戻せるのではないか。


「優くん!!」


ああ、そうだ。

こんなことになってしまっては、清楚さんが放っておかないだろう。

俺の名を呼びながら、彼女はこちらへ近づいてくる。


「いったい、何があったの?」


頭ごなしに仲直りを提案されるかと思ったが、まずは事情を尋ねてくれる彼女。

だが、事情も何も、俺があいつに振り回され、向こうから勝手に手放してきた、としか言いようがない。

そう言い淀んでいると、彼女の口が再度開かれる。


「私が口を出すことじゃないかもしれない。でも、せっかくあれだけの時間を過ごしてきたのに、こんな終わり方をしたら、駄目な気がして」


その真面目な声色に何か返答しようとするも、どうすればいいのかわからない。


「それなら、私に任せて」


「うおっ!」


ニョキッと現れたのは、なんと、真白だった。


「パパは私を受け入れてくれた。だから、今度は私が力になる番」


「あ、ああ。それはありがたいが……」


フンスと鼻息を吐き胸を張る真白。

とてもかわいいですね。

しかし、いきなり現れてそんなことを言うなんて、どこかで様子を見ていたのだろうか。


「真白ちゃん、もしかして、優くんと椎名ちゃんの仲を取り持ってくれるの?」


「うん、そう」


「やった!!真白ちゃんが協力してくれるなら千人力だよ!」


「おお、ついに天才少女の本領発揮ってやつやな!!」


俺の心情を他所に盛り上がる彼女たち。

本当に、俺はそれを望んでいるのだろうか。



放課後。

あれから、岡と言葉を交わすことは一度もなかった。

今朝、教室を飛び出した彼女は戻ってきたかと思えば、何を考えているのやら頭に段ボールを被っており、すぐに教師から別室へ連れて行かれたのだ。


そして、放課後になると岡が教室に戻ってくる前に、俺は真白に腕を引かれ、とある場所に連れてこられていた。

ここは、進級初日に岡と話した何かと便利な空き教室。

一体、何を始めるというのだろう。


「ちょっと待ってて」


俺をここに連れてきた真白は続いて教室の後ろ、掃除用具入れの前に向かう。

そして、彼女はその扉を開ける。


「ム゛ッーーー!!」


なんと、そこには口にガムテープを貼られ身体を縄でぐるぐる巻きにされた岡が詰め込まれていた。

真白は何事でもないような様子で、彼女を解放し始めた。


「ぷはぁ!!あんたねぇ、こんなことしてタダで済むと思って」


身体が自由になり今にも真白に掴みかかろうとした岡と俺の視線がぶつかり、時間が止まる。

真白はその隙にトテトテと小走りで教室の外に出た。


「なに?これはあんたが仕組んだわけ?」


「いや、俺だって被害者なんだが」


何とも気まずい。

そして。


「こんな所に居られるか!私は帰る!」


彼女もこの空気に耐えられなかったのか、お決まりのセリフを吐いて教室の扉に手を掛ける。

しかし。


「ちょっと!開かないんだけど!」


「内鍵なんだから、開かないはずないだろ」


そう言いながらも嫌な予感がした俺は反対の扉に向かい手を掛ける。

鍵はかかっていない、なのに、開かない。


そんな慌てふためく俺らを見透かしたように、突然、ピンポンパンポンと壁掛けのスピーカーから大きな音が響く。


『パパ、聞こえる?』


「真白か?これは、どういうことなんだ」


『二人の仲直り作戦だよ。私にかかれば拉致監禁なんて簡単なもの。色々と細工をしておいたの』


おいおい、天才と言えば普通は学問分野だけでの話だろう。


「でも、これで何をしろっていうんだ」


『慌てないで。今から始めるから』


なぜ、スピーカーの向こう側の彼女と会話ができているのか、そんな疑問も頭に浮かばないほど俺は混乱していた。

そして、気を抜くまいと呼吸を落ち着け身構えていると、どういう仕組みなのか、黒板前の天井からスクリーンが降り、そこに何かが映し出される。


それは、○○○しないと出られない部屋、と、肝心な部分が伏字になった一文だった。

真白ちゃん!?


戸惑う俺を尻目に、スピーカーから淡々と真白の声が響く。


『今から、二人には○○○をしてもらいます』


「おい、肝心なところが聞こえないんだが!!」


彼女の発言も一番重要な部分がピー音でかき消されている。


「ふざけないでよ!こんな、安上がりなエロ漫画みたいな展開、望んでないわ!それに、こんな大してイケメンでもないレベル一の男なんかに花を散らされたくないし!」


「落ち着けよ!この伏字がアレのことだとは限らないだろ!?ほら、脱出ゲームみたいな感覚で協力してあの伏字の答えを探すとかさ、そんな高校生らしいものだろ、これは!」


「アレに決まってるじゃない!ああもう、絶対にあれよ、もういいわ!好きにしなさい、このケダモノ!!」


そう言い放ち床に仰向けになり大の字になる岡。

こいつはどうしてこう思い切りが良いのだろうか。


しかし、どうしたものか。

言葉を発しなくなったスピーカー、不貞腐れた岡、外から微かに聞こえる部活動に励む生徒らの声。

そんな静かな空間で時間だけが過ぎていく。

そして、所在を無くした俺は岡の傍にあぐらを組む。


「そんな自暴自棄になるなよ」


「なによ、こんな時だけ常識人ぶっちゃって。元はと言えば、全部あんたのせいじゃない。あんな頭のおかしい女に現を抜かすから、こんなことになるんじゃない」


怒りというよりは、どこか呆れた様子で話す岡。

その他責思考な発言に俺も言葉を返す。


「そもそも、お前がヒロインになるなんておかしなことを言わなければ、こんなことにはならなかっただろ。百万歩譲っても、お互い様だ」


「ふん」


そっぽを向いてしまう彼女。

ここは、言い争ってる場合じゃないな。


「……なあ、俺はどうしたらいい。お前は、俺をどうしたいんだ」


「そんなもん、ピロートークで話せばいいじゃない。さっさとヤりなさいよ」


「お前がそんなだから、俺も真剣に向き合えないんだろ。いい加減、お前の目的を聞かせてくれよ」


なぜ彼女がそうまでしてヒロインにこだわるのか、そのおかしな言動の源は何なのか。

それを知らないと、もう彼女と付き合うことはできそうにない。


「そんなもん、決まっているじゃない。このつまらない日常に風穴を開けるためよ」


「だったら、普通に友達を作って、普通に過ごせばいいじゃないか」


「その普通ができれば苦労しない。ダーリンだって、わかるでしょ?」


「ああ、わかるよ。嫌っていうほど分かる。でも、それにしても、お前のやり方は常軌を逸しているだろ」


「……でも、私は楽しかった」


ああ、そうか。

そうだ、たった、それだけだったんだ。

割り切れなかったこの気持ち、その理由。


「……俺も、楽しかった」


「でしょ」


「ああ」


心地が悪くない沈黙が訪れた後、岡は上半身を起こし身体をこちらへ向けた。

夕陽に照らされたショートヘアの明るい茶髪、色素の薄い茶色の瞳、その見慣れたはずの彼女の姿が新鮮に見える。


「それじゃあ、どうしよっか」


「どうするもなにも、今まで通りだろ」


「本当に?それだけでいいの?」


俺を見つめる彼女に、柄にもなく心臓が高鳴ってしまう。

これはあれか?

キスでもする流れなのか?

いやいや、恋人でもないのに、それは時期尚早というものだ。


「じゃあ、仲直りの証に握手でもしとくか?」


「この意気地なし、ヘタレ」


「うるせ」


軽口を叩き合いながらも、先ほどまでの険悪な雰囲気はすっかり消え去っていた。

それなら、この部屋から出ることもできるだろうか。


『どうやら、仲直りできたみたい』


再び、スピーカーから真白の声が響く。


「ああ、もういいだろ。ここから出してくれ」


『駄目。だって、まだ目的を達成していないから』


は?


突然、テッテレーという大きな音が室内に響き渡り、前方のスクリーンに映し出された一文に変化が表れ、伏字になっていた部分に文字が表示された。


『セックスしないと出られない部屋』


「馬鹿野郎!!」


「ちょっと、どうなってるのよ、これ!!」


俺と岡は声を荒げる。

まさか、本当にそうだったとは。


『ちょっと、真白ちゃん、やりすぎだって!』


『せや、親友の性行為なんて見とうないわ!』


あちらでも何やら言い合っている様子。

しかし、一向に開放される様子がない現状にしびれを切らしたのか、遂に岡が暴走し始める。


「もういいわ、やってやろうじゃないの!!」


そう言い放ち上着を脱ぎ始める岡。


「ちょっと待てよ!いきなりエロスを持ち込むやつがあるか!」


「ギャグワールドでなに常識的なことを言っているの!これはもう、あんたとチョメチョメしてパヒューンパヒューンになって、私はまだのぼりはじめたばかりだからな、このバージンロードをよ、で終わりになる物語なのよ!」


「脱ぎながら変なことを言うな!」


脱げないように彼女の制服を必死に掴む俺。


そんなこんなでぎゃあぎゃあと騒ぎ、いつまでも部屋から出られないまま時間だけが過ぎていくのであった。


「トホホ~。もうラブコメはこりごりだよ~」

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