逃げることしかできない俺でも役に立てる場所がある! え、未踏破ダンジョン、ですか…?

皮以祝

第1話 パーティ脱退

稲葉いなは、お前はパーティから抜けてもらう」


 グループのリーダーである才原さいはら彰人あきとがそう言ったのは、夕飯を食べている時だった。

 机にはハンバーガーやポテトが広げられ、それを囲む4人の男子という構図とは裏腹に、空気は重々しいものへと変わってしまった。


「彰人…」

「わかってるだろ? …俺たちのパーティにお前は必要ない。 …なくなったんだ」

「……」

「すまない…」


 その言葉に何も言い返すことができなかった。

 僕達は、高校卒業とともにダンジョンの探索者パーティを結成し、現在に至るまでの約3年間活動を行ってきた。

 4人でパーティを組んだ理由は、僕達4人が小さい頃からの付き合い、所謂幼馴染であったこともあるが、一番の理由は全員が『能力者』であったことも大きい。


 『能力者』は、約10年前にダンジョンと共に特別な能力を得た人間であり、世界人口の0.1%ほどが『能力者』となったと報告されていた。

 そのため、4人全員が能力者であった時は、驚いたし、喜んだ。そして、一般人のダンジョン参入が解禁となった約3年前から様々なことを経験した。僕も皆を信頼していたし、皆もそうだったと思う。


 しかし、3ヶ月ほど前、『転移石』、『転移原石』と呼ばれるアイテムが発見されたことで、ダンジョンの探索に大きな変化が現れた。


 『転移石』は、『転移原石』とセットで使用するアイテムであり、その効果は、『転移原石』を設置した状態で『転移石』を頭上に投げることで、パーティ全員が『転移原石』の場所に瞬時に移動できる、というものである。

 デメリットとして、設置可能な場所が限定されている、というものがあるが、ダンジョンの外に出ることのできる『帰還盤』がある、1階、6階、11階…などのセーフティゾーンに設置できるため、大きなデメリットではなかった。


 『転移石』と『転移原石』は、入手できる階層は深いものの、その階層に辿りつければ入手は簡単であるということもあり、少なくない数が市場に出回り、3ヶ月が経った現在では、多くの冒険者が買うことができるようになった。


 ダンジョンの探索を安全なものにするという点で多くの人に多大なメリットを与えるものであったが、僕にとってはそうではなかった。

 その理由は、僕の能力が、『逃げ足』というもので、安全にセーフティゾーンまで逃げられるという、『転移石』とかなり酷似した力であったからだ。


「つか、稲葉だってわかってただろ?」

「3ヶ月もあったんですから、出ていく準備はできてますよね?」

「っ」

篤人あつとすすむ!」


 彰人が声で制止するが、それだけだ。

 分かっている。

 戦力外なのは事実で、パーティに不要なお荷物であること。

 そんな人間を脱退させて別のメンバーを入れることは当たり前のことだ。

 だから、そんな能力を持った僕が悪い。


「…そうだな、俺は出ていくことにするよ」

「稲葉!」

「じゃあな」


 そうして僕は幼馴染パーティから脱退することとなった。





 

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逃げることしかできない俺でも役に立てる場所がある! え、未踏破ダンジョン、ですか…? 皮以祝 @oue475869

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