第31話 切り抜き動画の効果

1大イベントを終了させ、俺たちはファミレスで夕食を食べる。

「いやー、一仕事終わった後のご飯は美味しいですね」

「それな。やり切った感が美味しくするのかもしれないな」

「とりあえず、評判はどんな感じ〜?」

 高木はずっとスマホと睨めっこをしている。やはりどうだったか気になるのだろう。


「まあ美登ちゃんに関するコメントが多いかな。最後に出てきたってのもあるし、本当に上手だったもんね」

「まあ、アニメの曲を歌わせたら高木より上かもしれないな。ジャンル違いの声で良かったよ。水咲ネネについては?」

「好評だよ! 生演奏で良かった、っていうコメントがいっぱいある。曲も皆が知っているのが良かったみたいでそっちの評判もいいしね。 アーカイブのコメントでは、誰が一番良かったかという話になっているけど、水咲ネネを上げてくれている人も結構いるよ。みんなありがとう!」

「良かったです! 頑張った甲斐がありましたね。とりあえずご飯食べましょ!」

 今日は気持ちよく寝ることができそうだ。


『朝起きたらチャンネル登録者が3万人超えているんだけど…… 誰か理由わかる人いる?』

 数日後の朝、高木からのグループへのメッセージが届く。急に1万人ほど増えたのか? 動画投稿サイトを急いで開き、水咲ネネで検索をかける。しばらくスクロールしていると…… 「生演奏+美声! Vキャストの隠し球」というタイトルで水咲ネネの顔が写っているサムネイルを見つけた。投稿半日で15万回再生されている。これか? 開いてみると歌枠リレーイベントの切り抜き動画のようである。水咲ネネが歌っているシーンだけを抜粋しているようだ。コメント欄は「こんな凄い子がいるなんて知らなかった!」というようなコメントで溢れている。


 切り抜き動画は、Vtuberにおいて重要な文化だ。切り抜き師と呼ばれる人が、配信の中で気に入った・盛り上がるであろうシーンを切り抜いて動画として投稿してくれる。生配信が見られなかった人や、あまりそのVtuberを知らない人でも見ることができ、チャンネルに誘導できる。


 今回の切り抜き師はVtuber全般、特にGURU UPを中心に切り抜きをしている人のようで、チャンネル登録者も10万人近くいる。そんな人が拡散してくれたわけだ。それはチャンネルを見てくれる人も増えるだろう。

『この動画じゃないか?』

 俺は動画のリンクをグループに送る。

『わあ、本当だ、凄い見られているね! 切り抜き動画かー』

『切り抜きも重要ですよね。Vキャストの切り抜き師っているんですか?』

『ああ、考えたことはあるが、規模が小さすぎるのと、Vキャストの切り抜きは過激なものが多いからあんまり水咲ネネと合わなくて除外していたんだよな』

『なるほどね〜 自分たちで作る?』

『うーん、ショート動画と被るからなあ。とりあえず高木は動画に本人としてコメントしてきてくれ! 切り抜き師に認知してもらおう。また切り抜きをしてくれるかもしれないからな』

『そうだね、わかった!』



 登録者3万人。もう既に立派なVtuberになった。高木はそう感じていた。ここまで辿り着けたことは嬉しく感じるが同時に少し怖くなる。高校何個分の規模で視聴者に見られているのか。今までにないプレッシャーを感じるのも否定できなかった。そんな時にスマホが震える。美登からの電話だ。

「はい、もしもし」

「もしもし、ネネちゃん? 今大丈夫?」

「うん、どうしたの?」

「まず、イベントありがとうね! おかげで盛り上がったよ。こんな凄いVtuberがいたのかってコメント欄が騒然としてて、私も嬉しくなっちゃった。生演奏も凄い良かったよ!」

「ありがとう! せっかく呼んでもらったからと思って頑張ったから、そう言ってもらえて嬉しいよ」

「で、本題なんだけど…… 1ヶ月後にまたやろうと思っているんだ。歌枠リレーイベント。で今度はもっと大きなイベントにしようと思っていて…… それにもぜひ出てほしいなと思って」

「そうなんだ! 出る出る! 大きなイベントってことは人が増えるの?」

「人も増えるのとね、今度はここねこさんにも出てもらう予定なんだ。VVVの。知ってるよね?」

「ここねこさん!? それは凄いね。お祭りになるんじゃない?」

「でしょ! で、他の大手事務所にも声掛けて、大規模なお祭りにしようと思っていてね。Vキャストからも他に鬼丸さんに声をかける予定。時間はまた15分くらいで考えているから準備しておいてよ。次も生演奏が聴きたいな!」

「わかった、頑張る!」

 美登はフレンドリーで話しやすい友達のような存在だ。とはいえ褒められて二回目の招待となると嬉しいものだ。しかもあのここねこも参加するとのこと。これは大きなチャンスである。VVVのファンを含めていろいろな人に認知されてもらえる機会になる。

『みんなー 2回目の招待来たよー。これは秘密だけどここねこさんも出る予定なんだって!』

『おおおー凄いなそれ!』

『楽しみだね〜 また練習しますか〜』

『頑張りましょう!』


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