第25話 バズるってすごいね!
『すごいですよ! ショート動画バズってますよ!』
朝起きると、下井草からメッセージが来ていた。バズってる? どういうことだ? とりあえず動画投稿サイトを開いてみる。再生回数をチェックすると、一つだけ100万回を超えている動画がある。おお、これか。開いてみると、コメントやいいねも多く、確かに盛り上がっている。他と比べて何が良かったのかはわからないが、好意的なコメントが多い。
『すごいね。登録者が2000人くらい増えているんだけど。さっき見てびっくりした!』
『歌ってみた動画も再生回数増えているね〜 上くん天才なんじゃない?』
皆から褒められて満更でもない気持ちになる。やってやった、という気分だ。たまたまホームランになっただけではあるが…… いい気分だ。
『この調子でどんどんバズらせるぞ! 俺に任せろ!』
『凄いです! ちなみにその動画はなんでバズったんですか?』
『知らん! 数打てば当たる、の精神だ!』
最近ショート動画を投稿してみてわかったことがある。評価が高い動画が誕生すると、他の動画も比例して再生数が伸びていくことだ。チャンネル内のコンテンツが有料であれば、ショート動画から人を惹きつけることができるようだ。ショート動画はある意味広報として非常に優秀だな。そりゃ皆ショート動画をどんどん投稿していくわけだ。
そして最初の数秒でスキップされないためには、青春あるあるの内容と順番も重要であると感じている。最初がキャッチーな内容だと伸びやすい。なんとなくその辺りの感覚は掴めてきたような気がする…… が、バズる要因まではわからない。サイトのアルゴリズム的には、評価が高いと色々な人に拡散される仕組みになっているのだろうが、それ以上はブラックボックスだ。まあ仕方がない。
しかし、そこからはすごかった。一つ動画がバズると全体的に再生回数が増え、雑談配信にも「ショートから来ました」という人が散見されるようになった。チャンネル登録者も2万人を超えて順調に増えていっている。
『チャンネル登録者も増えたし次の歌ってみた動画は盛り上がりそうですね! 気合い入りますねー』
『確かに今は注目されているタイミングだからな。期待しているぞ!』
『今MIXまで終わったところ〜 早めに出したいね〜』
『そういえば、同期や先輩からショート動画の作り方について教えて欲しいっていう連絡が来るんだけど、なんて答えればいいかな? 私が作ったわけじゃないんで、って返すのもちょっと申し訳ないというか』
『わかった。俺の方で簡単にまとめた資料を作るよ』
『ありがとう。助かる!』
個人的に意識したことや反省点、成功ポイントなどを資料にまとめ、高木に送る。Vキャスト全体でショート動画投稿が盛り上がって箱として人気が出るといいな。だが、一番人気は水咲ネネだ! これからも研究を怠らず先頭を走っていく所存である、と考えたところで高木から電話がかかってきた。
「もしもし、どうした?」
「あ、資料ありがとう! 送っておく! それはいいんだけど…… ちょっと相談があって。今度同期3人でコラボしようと思うんだけど、どういう内容がいいかな? 天野すうちゃんと勇気レオナさんとなんだけど」
「おー、同期3人コラボか。3人だとトークでは難しいよな。バランスを気にしないといけないし、3人ともMCやれるような感じじゃないしなあ……」
同期ということで何個か動画をチェックしてみたが、天野すうは元アイドルのふわふわ系の女子で、勇気レオナは頭のネジが何本か飛んでいる大人のお姉さんという感じだ。高木も含めてトークを回すようなキャラではない。
「そうそう。で、何かやりたいね、ってなっているんだけど。まだ思いついてないんだ。で、アイデアが欲しいなと思って」
「そうだな…… 企画となるとゲーム系は思いつくが、Vキャストらしさをもう少し出す方がいいだろうな。ちょっと待ってくれ。どんなコラボがあるか検索してみる」
「ありがとう! 助かります」
ざーっと動画投稿サイトで「Vtuber コラボ」で検索し、出てきた動画をチェックする。歌やゲーム、トークなんかがやっぱり多いな。と流し見していると、ふと目に入った企画がある。「ファッションチェック」だ。これはいいんじゃないか?
「ファッションチェックはどうだ? 審査員を一人置いて、テーマごとに3人が自分の持っている服を披露する。で審査員が評価するとか。それぞれの味が出る上に、可愛いとか面白いとか色々なリアクションが期待でき盛り上がりそうだ」
「おーいいね。鬼丸先輩あたりに審査員をやってもらって、私服の写真を披露すればいいか。3人とも全然違う系統の服になりそうでいいかも」
「そうだな。あんまりボケすぎるのも問題だが、程よくキャラを意識して振る舞うのも良いのかもしれない」
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