第17話 こんなに反響があると楽しいね
いよいよ歌ってみた動画を投稿する。投稿日は金曜日の夜だ。土日で動画投稿サイトを見る人が多いだろうから、その前に投稿しておくといいだろうという考えである。
『今日の20時でしたっけ? 緊張しますね! 好評価が多いといいのですが』
『大丈夫よ〜草ちゃんの動画凄いし、それに私のMIXと高木ちゃんの声でしょ? 評判にならない理由がないって』
いつの間にか綾香は下井草のことを草ちゃんと呼ぶようになった。俺のことは上くんだ。どうせなら上と下にすればいいのに、それだとペア感があるから何か違うらしい。
『高木、もう告知は済ませてるか?』
『うん、SNSで発信もしたし、予約投稿もしておいたよ! 後はちゃんと配信できたか確認するだけだね』
4人で何回も動画チェックを行い、問題ないかを確認した。更にVキャストスタッフにも依頼し、大人目線でもチェックも完了している。動画の内容は大丈夫だろう。後は評判だけだ。
『よし、じゃあ俺は寝る。もう緊張しすぎて死にそうだ。20時まで持たない』
『健ちゃん、頑張ってください! プロデューサーなんですよね???』
『やることはやった! 後は君達のクオリティ次第だ!』
『それは完全に責任転嫁ですよ!』
そんな軽口を叩きながら20時を迎える。とりあえず30分くらい寝かせてコメント欄を見てみる。最初は水咲ネネを応援してくれているファンが見てくれるだろう。
「歌すごい上手いね! 知らなかった!」
「こんな美声だったんだ、いつもと雰囲気も違う」
「イラスト可愛いー」
好意的なコメントが並んでいる。よし、好印象だ。
『いい感じだな、後、高木は高評価やSNSでの共有をお願いするようにしてくれ! 動画投稿サイトは、再生時間と高評価率が高いと、色々な人におすすめしてくれるらしい! 後はハッシュタグをつけてSNSに投稿してくれている人にいいねするように!』
『うん、わかった!』
普段の生配信だと200人程度が見てくれている感覚だが、この歌ってみた動画は1時間で1000再生されている。いい流れだ。今日中に5000再生くらいまでいくか? チャンネル登録者5000人で、1日で5000再生行けば順調な滑り出しだろう。
『いいじゃんいいじゃん、良い流れ〜 これはランキングに乗るかね??』
『そこまでバズったらもう社会現象だ…… まあそうなるといいな!』
しかし動画の数字を気にし始めるともう止まらないな。スマホを一日中眺めることになりそうだ。完全に病気になってしまう。危機感を感じた俺は、あまり面白くない数学の宿題をすることにした。やりたくない勉強をやることで、気を紛らわせる作戦だ。
……わからねえ。
『なあ、誰か数学得意なやついるか……? 教えて欲しいところがあるんだが』
既読は3つ着いたが返事はない。全員数学できないのかよ!
翌日の放課後、4人でカラオケルームに集まり現状共有を行うことになった。投稿者しか見えないアナリティクスを分析して次回に活かそうという試みである。
「じゃあ高木ちゃん、発表してくれる?」
「はい、じゃあ数字を言っていきますね。再生回数は8000回、高評価は500、コメント200件、平均試聴時間は3分15秒です!」
「おお、結構伸びたな。チャンネル登録者数は何人増えた?」
「500人!」
「おおー、すげーな」
「良い成果が出始めているね。コメントは好意的だし、一発目としては良いスタートなんじゃない? 上くん的にチェックしておきたい数値はある?」
「ああ、視聴者維持率を知りたいな。最後まで見てくれた人がどれくらいいるのか」
「50%って表示されているね」
「おお、良い数値だな!」
「そうなんですか? よくわからない数値ですが」
「ああ、俺も今回の分析にあたって調べてきたんだが、視聴者維持率は動画投稿サイトにおいて重要な数値だ。どれくらいの視聴者が最後まで動画を見てくれたか、という数値だな。40%を超えると優秀とされている。だから50%はすごい数値だよ。歌とMIXと動画のコンテンツが評価されたから最後まで見てくれたんだろうな」
「なるほど、それは良かったです!」
「こんなに初日で反響あると楽しいね〜」
「そうですね。動画が綺麗とか褒められていると嬉しいです!」
「そういえば……正直最初は、ストーリー性のある動画ってどうなんだろう、って心配していたが高評価コメントばっかりで安心したよ。これからもそんな感じの動画でいいのかもしれないな。さすが下井草だ。後、もちろんだが綾香のMIXも良かったんだろうな、みんなお疲れ!」
「上くんはすっかりプロデューサーのポジションが板についてるね……」
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