第18話 どんどん作っていきましょう!

「さて、鉄は熱いうちに打て、ということで次の曲について話をしますか!」

「おお、次も作ってくれるのか?」

「健ちゃん、もちろんですよ! 世間に自分の動画を発信できる機会です……! こんな楽しいことはなかなかないですからね」

「私もいいよ〜 高木ちゃんの声なら曲作りがいあるしね」

「2人ともありがとう……!」


 ということで急遽始まった第二回歌ってみた動画の打ち合わせ。単純に曲を選ぶだけではなく、いくつか調整しなければいけないことがある。

「下井草はさ、一個動画を作るのにどれくらい時間がかかるんだ?」

「んー、今回は作ってあった動画の絵とかをベースにアレンジしてあるからそこまで時間かからなかったけど、新規で全部作るとなると3週間は欲しいですね。1週間ストーリー構成と絵コンテを作って、1週間でデジタルデータに落とし込んで、1週間で動画化っていうくらいで見てもらえればいいです!」

「なるほど…… 歌う系は評判がいいから、定期的に出したいんだよな。ちなみに綾香はどれくらいかかると思えばいい?」

「そうね、既存曲なら難しくなければ声をもらってから3日見て貰えば出来るかな。ちょっと難しい場合は5日。これは曲聞けばどれくらいの難易度かすぐわかるから曲決める時に言えると思う〜」

「わかった! じゃあまあ曲決定から1週間以内に高木が録音を終えて、綾香が1週間でMIXに、で、1週間で下井草が動画に落とし込むという流れになるか。3週間に動画1本を目標にしよう!」

「「「了解―」」」


「で、次の曲だが…… 一応俺の方でいくつか候補は考えてある。次は可愛い感じの曲でいこう。HoneyWorksは知っているか? SNSでも人気だが」

「あー、可愛くてごめん、とか?」

「そうそう。「可愛くてごめん」と「ファンサ」と「男の子の目的は何?」の3曲をピックアップしてみた。可愛くてリズム感が良いという曲だな。歌ってみた動画も多く出ているので新規性はないが、そこは動画の中身でカバーできるだろう」

「名前は聞いたことあるけどちょっと曲を聞いてみたいな。上くん動画流せる?」

 4人で動画投稿サイトにある曲を聴く。


「どの曲も歌は良いと思うんで、動画目線でコメントしますね。ストーリー仕立ての動画を作りやすいのは「男の子の目的は何?」かなと思いました。水咲ネネを可愛くして、恋愛に悩む女の子として表現するイメージは湧いてきます!」

「私的には、1番水咲ネネのイメージに合うのは「ファンサ」かなあ。明るく前を向いてアイドル活動をしている感じ? それはしっくり来るかな」

「意見割れたね〜。私は「可愛くてごめん」が1番いい曲だと思ったかな。可愛いしとなるとここはプロデューサーの意見を聞くしかないね。どう上くんは?」


「そうだな…… ちょっと考えさせてくれ。まだ、聞いてみていいなという曲をチョイスしただけなんだ。もうちょっと整理してから俺の意見を話すよ」

「了解。じゃあ決まったら教えてね。上くんの一票で決定ということで」

「そうだ、高木は今この3曲を歌えるか? 歌の感じも聞いておきたい」

「わかった、ちょっと練習させて」

 高木はそういうとイヤホンを耳に装着し、曲を聴き始めた。ちょっと空き時間が出来そうだな。メンバーとコミュニケーションを深めるか…… そう思ったところ、下井草はタブレット端末を、綾香はスマホをいじり始めている。あれ? 仲良く談笑するタイミングじゃ無い? まあまだ友達と言えるほどでは無いから、これからか……? とりあえず宿題をするか、そう思って今日も数学の教科書を開く。


「ねえ、私の前で勉強するのやめてもらって良い? テスト前以外は勉強について考えたく無いんだけど」

「あ、す、すまん……。 テスト前だけで勉強できるのはすごいな、赤点にならないのか?」

「うん、私1回教科書読めば理解できるタイプなの。だから困ることはないよ」

「そ、そうなのか…… 天才なんだな」

「まあ勉強は得意っていうだけ。将来に役たつわけでもないし、なんの意味もない能力だけどね」

「綾香さんすごい、羨ましい…… 暇さえあればネットサーフィンをして、赤点ギリギリの私からすると羨ましいです」

「…… ネットサーフィン辞めれば?」

「やめたいんですけどね…… もう中毒なんですよ」

「今度のテスト期間は私が没収してあげるよ」

「禁断症状で死ぬかもしれません。でも、それはアリですね……」

「動画制作にかまけてテストの点が悪い、なんて親に思われたら最悪だからな、それはありかもしれない。頼む! ついでに俺に数学を教えてくれ!」

「テスト期間になったらね…… それまでは私、勉強しないから」


「準備オッケーです。じゃあ歌いますねー」

 高木が歌い始めた。俺たちは真剣な表情でその姿を見つめる。

「やっぱ高木ちゃんの歌はすごいねー。どの曲でも問題ないね」

「可愛くてごめん、はちょっと合わないかなと思っていましたけど全然気のせいでしたね。さすがです!」

「意外と歌いやすかったなあ。どれもありだね」

「となると、後はバズりやすいか、といった観点か…… まずは観点を整理するところからだな……」

「頼んだよ、プロデューサー」

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