第15話 動画制作ならいい後輩がいる
「とりあえず曲は完成したね。後は動画?」
「そうだな。この曲に合わせて動画を作成すれば完成だ」
「…… 誰が作るの?」
「イラストが描けて、動画を編集できる人材だろ。そんな奴を…… 1人知っている」
「おお、誰?」
「後輩だ。アニメ研究会って知ってるか? そこに入ってるやつだな。家が近くて昔は仲が良かったから、話せばやってくれる気がする」
「アニメ研究会なんてあるんだね。何をしているの?」
「名前の通り、アニメを作っているんだ。短編アニメを作って文化祭で披露、なんてことをしているな。アニメを作れるなら歌ってみた動画なんか簡単だろ! 多分……」
「動画も気をつけるべきポイントあるのかな?」
「そうだな、まず表情差分は多い方が見やすい気がする」
「表情差分って?」
「キャラクターが色々な表情をするということだな。ずっと同じ顔だと変化がないので見ていて飽きやすいかもしれない。後は、水咲ネネの自己紹介でもあるわけだから出来るだけ可愛い、かつわかりやすい動画がいいだろう。この曲を聞いて水咲ネネを知る人も多いと想定すると、アーティスティックすぎるのは厳しいな。それくらいかなあ。それ以外は実物を見てみて、ということになるだろう。まあとりあえず連絡してみるか」
俺はメッセンジャーアプリを開き、後輩に電話をかける。
「もしもしー」
「もしもし、久しぶりだな。今時間あるか?」
「確かに久しぶりだね。いいよ、どうしたの?」
「お前の動画制作の腕を見込んでお願いしたいことがあるんだ。今駅前のカラオケ屋にいるんだが来れるか?」
「あーそういう話ね。オッケー、ちょうど帰る所だったから向かうよ。部屋番号送っといて〜」
「よし、今から来てくれるようだ。昔からフットワーク軽めだったから助かるよ」
「ありがたいね。その人のアニメってどこかで見ること出来る? 事前に見ておきたいんだけど」
「いや、なんかのイベントで公開する以外は特に何もしていなかったと思うな。とにかくすげーって思ったのはよく覚えてるんだが……」
「やっほー健ちゃん、久しぶりです! あ、そちらの女性の方は……?」
「おお、下井草は変わってないな。こっちはクラスメイトの高木だ」
「高木です。どうぞよろしく。下井草さん……?」
「そうです! 下井草千佳って言います。よろしくお願いします」
「思ってた感じと違う……」
高校1年生の明るくツインテールがよく似合う女の子、上井草が今回呼び出した後輩だ。常にテンションが高く元気いっぱいな女の子で、話をしていて楽しかったので中学時代はいつも放課後遊んでいたんだったな。
「早速だが、本題に入らせてくれ」
「わかった。とりあえず動画制作してほしいって言う話?」
「そうだ。この高木がVtuber活動をしていてな。俺がそのお手伝いをしているんだが、高木が歌ってみた動画を出したいと考えているんだ」
「おお、Vtuber! どんなキャラなのか見てもいいですか? 名前教えてください!」
「水咲ネネです……」
「えーっと、おお、可愛いですね! ちゃんとしたキャラデザがされていますね。結構お金がかかっていることがわかります。ああ、企業所属なんですね。個人で高校生だとこのレベルは難しいですもんね!」
「よくわかったな、Vtuberも詳しいのか?」
「いえ、それほど詳しくはないのですが、一回Vtuberやってみたいなと思って自分でキャラをモデリングしたことがあるんですよね。結局難しすぎて途中で挫折しましたが、プロは凄いなーと思ったので」
「で、歌ってみた動画作成ですね。曲はもうあるんですか?」
「ああ、あるぞ。聞いてみるか?」
「ぜひ」
俺は綾香から貰った音源データを再生する。
「あ〜 いいですね。綺麗な歌声でテンションが上がります! これは動画にしがいがありそうですね」
「おお、そういってくれるか!? もちろん報酬に関しては再生回数から得た広告収入を配分するよ。詳細はまた相談させてほしいが」
「わかりました、前向きに検討します! ちなみに動画のストーリー作成やシーン設計は私が担当していいんですか?」
「基本的には動画に関しては全部任せたいと思っている。好きにやってくれていいぞ。ただ、基本的なルールだけは合意しておきたいが。まず、水咲ネネを出来るだけ可愛く表現してほしい。次に水咲ネネを出来るだけ様々なポーズや表情で画面に表示させてほしい。この2点だな」
「それ以外は全部私任せでいいんですか?」
「ああ、それでお願いしたいんだが……!」
「任せてください! 健ちゃんと初めて一緒に動画作るのでなんだがテンション上がってきました! じゃあ早速ですがストーリーを考えますね。家で書いてみるので書き上がったら連絡します! あ、高木さんの連絡先も貰えますか? 色々質問したいことがあるので!」
「あ、そうだね…… はい、連絡先」
連絡先交換を終えると下井草は颯爽と帰っていった。
「すごい元気な子だね……」
「テンションは高いんだ。そして実はオタクという訳でもない。単に動画編集が好きなだけらしい。ちょうどいい人材が身近にいて助かったよ。乗り気っぽいしな」
「そうだね。後はどんな作品が出て来るかだね!」
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