第10話 作戦会議だ

「で、感情表現をもっと豊かにすると。キャラクターだけだと感情が伝わりにくいから声のトーンをわざとらしいくらい変えて喜怒哀楽を伝えるのも重要だなと感じた。そっちの方が視聴者としては見やすいんだよな。「疲れたなあ……」より「つーかーれーた!!」の方がいいという感じだ。わかるか?」

「なるほどね。平坦にならないようにということね」

「そうそう。面白いなと思ったのは他の人で、怒りを伝える時に何かを叩いて表現する人がいたな。「台パン」とコメントでは言われていたが…… そういうのもありかもしれない。その辺りは人気のVtuberを一緒に見てみるか。例えば…… この人は知ってるか?」

「ああ、真白モモね。VVVの超人気Vtuberでしょ?」

「そうそう。彼女の配信の切り抜きなんだが……」


「お酒飲める年なの? あー、うるせーな! 何歳でもいいでしょ! 私は大人だからお酒もの、め、る、ん、です!」


「この人のすごい所は怒ってるような声を出しながらジョークっぽいニュアンスを出している所だな。本気で怒っているわけではない、というのが声からよくわかる。ノリで怒っているという感じだから配信の空気も悪くならないし、視聴者も感情移入しやすい」

「言われてみれば確かに。本当にキレるような話でもないしね」

「いくつか切り抜きを見たが、この人はその塩梅が非常に上手な印象だな。変な空気にすることなく場を盛り上げることが出来る。これも才能と言ったらそれまでだが…… 参考にはなると思う。後はこの動画だな。猫田にゃーだが」

「ゲームの切り抜き?」

「そうそう。頂上目掛けて登っていくゲームだな」


「あーーーーもうーーー私の4時間を返せにゃーーーーーー!! にゃーーーーん」

 

「着地に失敗して落ちた悲しみを冗談っぽくキレることで表現している。この人も上手く明るい雰囲気で悲しみや怒りを表現することが上手だよ。さすが超人気だけあるなと感じたな。まずは王道でこういう風な感じで表現していくのがいいと思う。いくつかトリッキーなVtuberも見かけたが、やはりチャンネルの大きさ・人気度でいうと叶わない。脇にずれるのはもう少しいろいろ試してからでいいと思うし、高木の声は王道向きだと思うからな」

「わかった。勉強してみるね。後さ、企画なんだけど…… どんな企画が向いていると思う?」


「まずはカラオケ、と言いたい所だが、家で歌えないとなると歌ってみた動画を出すのがベストなんだと思う」

「他のアーティストの曲を歌う動画を投稿するってこと?」

「そうそう。録音して、映像編集すればいいから、生配信する必要がないしな。昼間に声だけ録音して夜に編集すれば親に怒られることもないだろう。曲は、ボカロ系のアップテンポの曲がいいと思う」

「私の声質的にはバラードじゃない?」

「そうだな、1番輝けるのはバラードだと俺も思う。ただ、知らない人のバラードを聞くのはしんどいからな。気軽に聞ける曲の方がいいと思うんだ。実際再生回数が多い歌ってみた動画はアップテンポの曲が多かった。で、ボカロ曲なら歌声に関して自由な解釈がしやすい

から独特の味を出すこともできるだろう。それで色々な人に聞いてもらう、知ってもらうことが出来るはずだ」

「すごい考えてくれてるね。ありがとう。ボカロ曲なら…… 千本桜とか?」

「いいんじゃないか? ちょっと歌えるか?」

「そうだね、せっかくだしカラオケしようか」


🎵〜


「ふう。どうだった?」

「いいんじゃないか! 歌に関しては詳しくはないが、上手かったしいい味が出てたと思う! これが一曲目でいいと思うな」

「良かった。じゃあこれを歌うとして…… って歌ってみた動画ってどうやって作るの?」

「俺も昨日調べたんだが…… まずは歌声を録音して、それを音源と組み合わせる。で、最後にその音源と合わせた動画を作成して完成みたいだ」

「音源って、そこら辺から取ってくるのは良くないよね?」

「ああ、著作権で問題になる可能性がある。ただ誰かに演奏してもらえればOKだともネットには書いてあったな。そこってVキャストに確認してもらえるか? 歌ってみた動画作りますって言っておいた方がいいだろうし」


「そうだね、聞いておくよ。で、動画編集か……。綺麗な動画作るのは難易度高そうだね」

「ああ、だがこれに関しては俺の知ってる奴らがいる。そいつらにお願いして作ってもらうなら大丈夫だろう」

「なるほど、お願いするのね! っていうことは曲も?」

「だな、軽音部に行けば誰か弾けるやついるだろうきっと。Vtuberの話はしないといけないが…… 大丈夫か?」

「まあ、最小人数なら大丈夫だと思う。口が堅そうで信頼できそうな人にお願いしたいけどね」

「そうだな。まあ軽音部に関しては山村にでも紹介してもらえればいいだろ。確か軽音部だったよな?」

「山村さん?うん、たしかそのはず。ほとんど話したことないけど……」

「俺もない。2人で頑張って話しかけよう、な……」

「ありがと……」

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