第8話 関わらせてくれ!
翌日、俺は緊張しながら学校へ向かう。いつもは「だるいなあー」とネットでニュースを見ながら通学しているが、今日は放課後に高木と話すシュミレーションで忙しかった。どんな反応をされるだろうか? 知らない、とシラを切られる可能性もある。そして仮に認めても、1人でやりたい、と突き放される可能性もある。しかし俺は今までの経験からわかっている。大事なのは熱意だ! 家族にゲームを買って欲しいとお願いする時などもどれだけこのゲームをやりたいのか、そういう熱意が重要だったりする。熱い思いをぶつけるしかないだろう。
ガラガラ、教室のドアを開ける。高木は…… いるな。いつも通り1人でスマホを弄っている。中心では男女のグループが雑談をしており、男子のグループや女子のグループがあちこちで雑談をしている、いつも通りの風景だ。一瞬高木と目が合う。あ、と考えている間に目を逸らされた。まあここで会釈できるようなコミュ力があれば、もっと男子から人気が出ているに違いない。
……放課後、帰ろうと支度をしている高木に話しかける。
「なあ、ちょっといいか?」
「……私?」
「ああ、ちょっと話したいことがあってな。他の人がいないところがいいんだが」
「……ごめん、恋愛には興味ないんでしゅ」
「ちげーよ! 別の話だ! 勝手に人をフるな! そしてなんだその語尾」
「あ、違うの? わかった。じゃあ適当に空いている教室を探す?」
「そうだな、それでいこう」
教室から出て、誰も人がいない教室を探す。お互い無言で歩いて回ると、生物室が空いていた。誰もいないことを確認し、俺達は中に入る。
「……で、どういう話?」
「水咲ネネってVtuber、知ってるか?」
「………… 誰それ?」
キョロキョロと周りを見渡し、挙動不審な高木。ただ男子と話す際に不審者になるのが高木の通常運転のため、動揺しているのかはわからない。
「妙に間があったな…… 前聞かれた恋愛相談について配信で話をしただろ?」
「えー……たまたまじゃない?」
「田中先生と松本先生の話も偶然一致したということか?」
「………… それ、誰かに言った?」
「いや、言ってないぞ。まず高木と話したいと思ってな」
「よかった……! 誰にも言わないでね!! 恥ずかしいから!!」
「認めるんだな?」
「ええ、そうよ。私が水咲ネネ。文句ある?」
開き直ったのか、いつもより大きな声で胸を張る高木。配信者モードに入ったのか? とりあえずちゃんと想いを伝えれそうでいいことだ。
「全くない! それより言わせてくれ。カラオケ配信感動したぞ! あんなに歌が上手いと思わなかった! なんで1回しかしていないんだ?」
「あ、ありがとう…… えーっと、うるさいって親に怒られてね。それで歌は封印してるんだ」
「それは勿体無い! あの歌声はもっと世の中の人が知るべきだ! 俺はそれくらい感動した!」
「そ、そう? そう言われると嬉しいんだけど」
「俺が有名インフルエンサーなら布教活動をしているところだよ! そうじゃないのが残念だ……」
「き、気持ちだけ受け取っておくよ……」
「で、お願いがあるんだが」
「……なんでしょう?」
高木は急に警戒した様子で周りを見渡している。
「脅迫しないわ! そうじゃなくてだな…… 俺、水咲ネネで初めてVtuberの配信を見たんだ。で、その後色々調べてさ、Vtuberの世界ってすごい奥が深くて、面白いなと思ってるんだ。で、水咲ネネってまだデビューして1ヶ月とかだろ? これからこの世界のトップを取る人材だと思っていて…… もし良かったら俺に活動を手伝わせて欲しい!」
「活動を手伝うって…… どういう意味?」
「企画を考えたり、SNS投稿を手伝ったり、なんなら動画編集もやるぞ。そういう活動のサポートをして水咲ネネを広げるお手伝いをしたいんだ!」
「……それは上月くんにとってどういうメリットがあるの?」
「せっかくの高校生活でさ、何か頑張ることをしたいなって考えてたんだ。ちょうどその時にVtuberに出会ってさ。この世界で駆け上がる水咲ネネをサポートすることはきっと楽しいと思ったんだ。報酬なんかは気にしなくていいぞ。俺がやりたいだけだからな。見た感じ、箱には所属しているが基本的には1人で活動しているだろ? 1人だと行き詰まることもあると思うんだ」
「な、なるほどね……」
「どうだ?」
「そう言ってくれる人に出会ったのは初めてだから嬉しい。けど…… どんな感じで役に立ってくれるのかがイメージ湧かないかも。そうだ、今悩んでいることを相談していい? それでどうなるか見てみたい」
「わかった。話してくれ」
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