第218話 束縛(5)

 流石に陛下も苦笑いを浮かべつつ。


「ドン宰相よ。お主も知っているであろう? ソフィアの魔法と武力のほどは。だからソフィアの言う通りで、バルガート伯爵を討伐するのは。そんなに難しい事では、ないのではないか?」と告げるのだが。


「陛下ー! 姫様は身重なのですぞ! もしも予期せぬ事……。姫様とお腹の子に災いが降りかかれば。どうするつもりなのですか?」と。


 ドン宰相は、臣下の身でありながら、多々いる重臣達の目の前で、主である陛下へと物々しく怒声を吐いた。


 だからあの日のわたくしは、ドン宰相のことを誅殺してやろうと思い。


「宰相、貴方……」と。


 このわたくしが、ドン宰相のことを殺意ある、恐ろしい形相で睨みつつ、呻り。少しばかり吠え。更に吠え続けてやろうとしたら。


 ドン宰相の方も、いつものようにわたくしに怯え、震えるようなことはしないで。自身の奥歯をグッ! と噛み締めながら睨み返してきて。


「姫様は、母君になられるのですよ」と呻り。


「姫様は、この国の次世代の王の母君になられると言った自覚がおありなのか?」と尋ね。


わたくしは、ここつい最近の姫様の野蛮、物々しい行動を見ていますが。女王らしい振る舞いを姫様は一切しては、いないではないですか? 本当に嘆かわしい……」と天を仰ぎ。


「姫様が余りにも、度を超す行動をされるならば。また幽閉棟に入り、反省をしてもらうようになりますよ」と。


 ドン宰相はわたくしに対して、完全に喧嘩腰──!



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