第109話 庭園の思い出(3)

(そう言えば、お母さまは、一人でこの庭園をお散歩される時も多かったな……)


 わたくしはふと、母が一人でも、よくこの庭園に散歩にきていたことも、じゃじゃ馬で、悪戯好きだったわたくしはよく知っている。


 でッ、そのことを思い出せば、わたくしの瞼は自然と細くなり、冷たいものへと変わる。


(本当にどうしようもない女性ひと……)と。


 わたくしは自身の脳裏で呆れたように呟けば。


 次は他界した母へと、わたくしの心の奥底から憎しみと憎悪が沸き出てくる。


(本当にあのひとだけは、平然と夫やわたくしを裏切る、節操のない、いい加減で、どうしようもない淫乱な女性だったな)と。


 わたくしが最後に「フッ」と鼻で笑うと。


「女王陛下、どうされたのですか?」


 アンがわたくしの顔色と目が冷やかなものへと移り変わっていることに気がつき声をかけてきた。


 だからわたくしは、また自身の顔色を変えながらアンへと。


「いいえ、何でもありませんよ、アン」

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