第98話 お城に戻った私(6)

 でも、この精霊付きの身体がわたくしが死ぬことを安易に許してくれなくて。


 その都度傷は塞がるし、自身の瞼が永遠に閉じたはずなのに。


 ひと眠りをした感じになれば、いつも自然と瞼は開くから。


 わたくしはいつまで経っても死ねないでいた。


 だけどやっと陛下が、わたくしの許へと帰ってきてくれた。


 だから今度は手放さない!


 夫と子に害する者は、神であろうとも、わたくしがみな、この精霊付きの能力を使用して駆除してやるつもりだと。


 わたくしが恐ろしいことを思案しながら、陛下へと接吻を要求していると。


 陛下が優しく接吻をして、わたくしを愛してくれるから。


 わたくしの嫉妬、妬み、憎悪の方は収まるから。


 わたくしは何とか平常心を保つことができている。


 だからわたくしの心の支えである陛下が今他界でもしたら本当に大変なことになるかも知れない?


 だって何年も幽閉されていたわたくしの精神が真面である訳ではございませんから。


 あの時の暗殺者を平然と、なぶり殺し、薄ら笑いを浮かべることができるわたくしの様子を思い出してもらえればわかる通りです。


 わたくしの心はまだ病んでいる状態なので。


 陛下に今他界をされ、またあのような寂しい思いをすれば。


 今度こそ、何をするかわからないから。


 でも、今は陛下がこのように、政務が遅れようとも、わたくしのことを求め、愛してくれるから。


 今は大丈夫のようです。



 ◇◇◇



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