第94話 お城に戻った私(2)

「ん? 何だ、ソフィア?」


 だから陛下は、わたくしの様子を窺い、首を傾げるけれど。


「今日も陛下のランチのお時間も。わたくしを呼んでくださいませ、陛下……」


 わたくしは夫に一礼をしつつ嘆願をする。


 この部屋……。


 そう、城の離れの幽閉塔から、お城の陛下の部屋へとわたくしが移りかわってから。


 陛下の妃らしく、義母あのひとがいようともお構いなしに。


 早朝のモーニングの方は、わたくしが陛下に嘆願をして、奥の部屋を改築工事──。


 そう簡易式な水場と囲炉裏を造ってもらった。


 だからわたくしは、陛下が用意をしてくれた簡易的なキッチンで。


 自身が長年鍛えた腕を振るい。


 わたくしは普通の家庭の妻のように陛下へとスープや、その他のおかずを作り、パンを焼き、食べてもらい。


 陛下が『美味い!』、


『ソフィアが作ってくれる、妻の手料理が一番美味しい!』、


『……世界一美味しい!』、


『儂の妻は三国一だ!』、


『儂は何て幸せ者なのだ!』と。


 陛下がわたくしのことを大袈裟に褒め称えてくれるの。


 わたくしは嬉しそう、幸せそうに聞きつつ。


 陛下とわたくしと、お腹にいる子と家族三人で仲良く、慎ましく、食事をしているからいいのですが。


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