第93話 お城に戻った私(1)

「陛下、いってらっしゃいませ」


「ああ、行ってくるよ。ソフィア……」


 朝の陛下の身の回りのお世話を妃らしくおこなえば、わたくへと声をかけつつ、扉に向けて歩いていく夫の大きな背へと。


 わたくしは深々と頭を下げつつ見送る。


 すると陛下は扉の前まで到着してノブを握れば。


 再度後ろ振り返り。


「ソフィア、愛しているよ」と。


 優しく微笑みながら、今日もわたくしが陛下の中の一番だと告げてくれるから。


 わたくしも満身の笑みを浮かべつつ。


わたくしも陛下のことを愛しています」と告げ。


「だからお身体の方は気をつけてください」と嘆願もする。


「ああ、分かっているよ、ソフィア……。今日も儂の身の回りには、細心の注意をして行動をするよ」と。


 陛下は、今日も自分は大丈夫だ! 心配をするなと!


 今日もわたくしと、お腹にいる陛下のお子に安堵するようにと告げ。


 わたくしに、新婚ホヤホヤの夫婦のような新鮮さを与えてくれる。


 そんなお優しい主さまに対して、微笑んでいたわたくしなのですが。


 わたくしはあることを思い出し、顔色を変えると。


「陛下?」と声をかける。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る