第39話 小鳥のように飼われる人生……(8)

「えぇ、誠ですよ。あなた~。わたくしがその気になれば。このお城……。いや、この街もろとも焦土にすることは可能ですよ。わたくしはもう、人ではなく女神なのですから。それぐらいのことは容易いことですよ。あなた~。どうです~、凄いでしょう、ソフィアは~。お父さま~」と。


 わたくし最後に、自身の幼少期に戻った時のように。


 夫に対して、『あなた』、『陛下』と呼ぶのではなく、『お父さま』と、甘え声音で呼び。


 夫の耳へと優艶に食らいつき、愛撫……貪り、甘えた。


 わたくしが、こんな恐ろしいことを夫に打ち明けても、害を及ぼすつもりは一切無い、どころか?


 わたくしは夫のことを『お父さま』と呼んでいた頃からちゃんとあなただけを見てきて生きてきたのだと。


 だから陛下の妃になったことに関しても全然恨み、辛みはない。


 でも、いくらわたくしがまだ幼く、義母あのひとに劣っていたらの理由で。


 わたくしとの関係を隠し、闇に葬ろうとして、この幽閉棟の牢獄のような粗末に入れたことは。


 わたくしはいまだに根に持ち、恨んでいるから。


 夫の耳に甘噛み、甘える行為をやめ。


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