第16話 お忍びの訪問者(1)

 コン!


 カン!


 カン! カン! と音が。


 だからわたくしは。


(……ん? 何?)、


(何の音だろう?)と。


 国王あのひとわたくしが暇だろうと、吟遊詩人達に書かせた書物を読む行為を辞めて。


 わたくしは音が鳴った方へと視線を向ける。


 すると、音が鳴った方角には、テラスがある方角だと、わたくしは悟ることができた。


 だからわたくしは、椅子から立ち上がり、音が鳴った方へと足早に移動──。


 そしてゆるりとテラスの大きな両手、観音扉を開け、外に出てみる。


「麗しいソフィア~、今日は、御機嫌はどうかなぁ?」と。


 大変に爽やかで、優しい声が。


 わたくしの大きな精霊耳へと聞こえてくるから。


 わたくしは声のした方へと視線を変え、声の主の確認をとれば。


 わたくしは満身の笑みを浮かべつつ、


「レオン~」と。


 彼の名を呼ぶの。


「やぁ~、ソフィア。近くを通ったから、君の顔が見たくてさ。寄ったのだけれど。忙しかったかな?」と。


 わたくしの幼馴染で従兄……。


 そして婚約者だった彼が、幼い頃と変わらない。


 優しい微笑みをわたくしへと、今日もくれながら話しかけてくれる。

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