第14話 幽閉後は? (1)

 幼い頃に、この塔へと惨めな容姿……。


 そう、性奴隷や大罪人のように幽閉、隔離されたわたくしなのですが。


 今のわたくしの容姿やこの部屋の様子を見ればわかると通りで。


 わたくしが牢のような部屋で暮らしていたのは幼い頃の二、三年ぐらいで。


 その後は、隔離棟の中でも日当たりのよい大きな部屋……。


 そう、ちゃんとテラスやベッドにクローゼット……。


 湯殿やトイレもある清潔な部屋へと移動──。


 ここでの生活は昼間であれば。


 陛下がわたくしの部屋へと訪問をされない時は。


 わたくしの身を守ると言った名のもとでの、数名の護衛兵達の監視下の許ですが。


 城内や庭園を歩き回ることも可能な生活……。


 そう、他界した母によく似た容姿……。


 いくら精霊付きで、普通の者達よりも、異形と思えるくらい。


 大きな耳を持つわたくしの容姿であろうとも。


 陛下が心から愛した女性と生き写しと言ってよいほどの姿をしたわたくしですから。


 陛下が適齢期の娘へと成長をするわたくしのことを放置する訳もなく。


 夜遅くにわたくし許へと尋ねてきて、お酒を御所望……。


 数年ぶりに親子二人で仲良く会話……。


 わたくしのことを娘として捨てる以前の優しく、温かい陛下でしたから。


 親の愛情に飢えていたわたくしは、幼少期のように。


「お父さま、お父さま……。ソフィアは寂しゅうございました……。もう二度とソフィアのことを捨てないでください……」


 わたくしは陛下の娘として甘え、嘆願をしたつもりだったのですが。


「そうか、そうか。私も、もう二度と、そなたを離さぬし、寂しい思いもさせぬから」と。


 わたくしに優しく囁いてくれた。


 だからわたくしもまた父に愛された。


 だからあのひとの家族にまた戻れるし、娘として愛してもらえると思ったから。


「お父さま~。ソフィアはお父さまを愛しています」と。


 わたくしは陛下に娘として『愛している』と囁いたつもりなのですが。


 あのひとは、わたくしのことを、この隔離棟へと追放──幽閉した時から娘としては見ていないようで。


 他界したお母さまの代わりとして生かしていたようですから。


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