第11話 精霊付き(2)

 アンがわたくしへと。


「姫様?」


「……ん? 何ですか、アン?」


「国王陛下が姫様の病魔の事を聞くと。大変に真っ青な顔をされ、心配をなされていましたよ……。もう、それこそ? 今にも泣きそうなお顔で、長女の姫様の事を心から心配されてましたよ……。後で姫様の許へと来られると申されましたから」と。


 アンはわたくしに満身の笑みを浮かべつつ。


 わたくしの病の様子を聞いたお父さまの様子を教えてくれた。


 だからお父さまに嫌われ、避けられていると思っていたわたくしでしたから。


 アンの話しを聞き、自身の目尻を熱くしながら歓喜──。


 だってお父さまは再婚をされ、妹のロベリアが産まれてから。


 長女であるはずのわたくしの会見を避けるようになり、というか?


 全くと言ってよいほどお会い……。


 会いにきてはくれないのです。


 だからあの頃のわたくしは、本当にお父さまから嫌われてしまった思っていたし。


 何が原因でわたくしはお父さまに嫌われてしまったのだろうか? と毎日悩み。


 自身の枕を涙で濡らしたものだ。


 だからわたくしは、あの当時に、自身の利き腕で剣を握り、掲げ、構え──。


『えい!』、


『やぁっ!』、


『とぉっ!』と。


 男勝りな、はしたない、勇んだ行為をするのを辞め。


 この国の姫らしく。


 そう、他界されたお母さまのようにお淑やかに、レディになれるように。


 わたくしは作法を覚え、訓練を続けていた。


 お父さまに、『ソフィアは本当に賢い姫だな』と。


『流石、ソフィアは私の娘だ』と。


 お父さまから以前のように褒めてもらうために。


 わたくしはレディになろうと努力をしている最中だった。


 だから、こんな醜い姿になったわたくしだったけれど。


 アンの話しを聞き、あの時のわたくしは、まだお父さまに嫌われていないと悟る、と言うか?


 錯覚をしてしまったから。


 わたくしは満身の笑みを浮かべながら。


「そうなのですか、アン?」と。


 彼女に問いかる。


「はい」


 するとアンも、わたくしの問いかけに対して満身の笑みを浮かべつつ、頷いてくれた。


 そしてアンの口からも。


「姫様は、御父上様であらせられる、国王陛下が自分の事を嫌っていると申され、危惧され、心傷されていましたが。国王陛下の御様子は、姫様が危惧されていたような御様子は一切なく。心から姫様の身を案じていましたよ」とも。


 アンはわたくしへと優しく微笑みと声音で、説明までしてくれた。


 だからあの時のわたくしは本当に嬉しくて仕方がなかったからね。


「そうですか。そうですか……。じゃ、お父さまは直ぐにわたくしの許へと訪ねてくれますね」と。


 アンに満身の笑みを浮かべながら告げたと思います?


 アン自身もわたくしの問いかけに対して直ぐに。


「姫様、もちろんですよ。直ぐに陛下は姫様の許へと来られるとわたくしに言ってくれましたから」と言葉を返してくれた。


 だからわたくしは、この異形も、お父さまが直ぐに駆けつけてくれるならば。


 わたくしのこの異形も直ぐに治る!


 元の自分の容姿に戻るのでは? と。


 安堵していたぐらい。


 幼い頃のわたくしはお父さまを待っていた。


 親の愛情に飢えていた、親離れのできない、幼いわたくしでしたから。


 でも、その後、わたくしとアンの二人が、首を長くしながら、過ぎゆく時間の中でお父さまを待ち続けていた。


 でもあの人はわたくしの、この恐ろしい容姿、醜い容姿を見たくはないから。


 実の娘であるわたくしの許へと、嫌々ながらに訪問してきたのは。


 わたくしが病魔に侵されてから一月以上も経ってからのこと。


 わたくしは、他界したお母さまの形見のはずなのに。


 お父さま……。


 いや、あのひとは、わたくしを放置し続けてきたから。


 わたくしはどうやらあのひとに捨てられたらしいと。


 あのひとがわたくしへと吐いた下知を聞き、悟ることができた。



 ◇◇◇



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