第7話 悪しき策が巡る舞踏会(2)

「陛下、そんなもとらない歩行をされつつ、帰宅の途につけば。転げてしまい。怪我をするのは必然的な事です。だから今回も私の屋敷にて、フローレンスと同じ部屋で宿泊をされると良いです」


 ドン宰相は、自分達の都合のよい既成事実を作るために。


 お父さまに対して飲めや歌え、や踊れや、若い娘達をどうぞ! と、与えている癖に。


 お父さまが幼いわたくしの身を案じ始めれば、この通りで。


 とにかく自分の屋敷へと泊まるようにと勧めたらしい。


 それでもお父さまには、まだ幼い娘のわたくしがいますから。


 度々の外泊は、流石に不味いと思いつつ。


「ドン宰相、私への気遣いは大変に嬉しいのだが。私には未だ幼いソフィアがいるからお城に帰るよ。やはり私は父親だから、あの子が心配で仕方がない」と。


 あの頃のお父さまは、わたくしに対して本当の優しい人だった。


 まあ、今のお父さまの愛情は、わたくしの妹と義母……。


 そして側室達へと向いていますが。


 基本お父さまは、家族思いの大変に優しい人だから。


 あの頃、一人娘だったわたくしのことを気遣い。


 お父さまはお城に帰ると言ってくれたみたい。


 でもドン宰相と、彼の息のかかった貴族達は、一日でも早く既成事実……。


 そう、お父さまに、わたくし以外の子供ができることを。


 彼等は首を長くして待っているから。


「陛下が、姫様の身の上が、大変に心配なのは分ります。私にも娘がいますから」と。


 ドン宰相は、お父さまのわたくしのことを思う気持ちに同意、賛同してみせるのだが。


 彼には、悪しき野心……。


 この王国の王族を、自身の血、血族で完全に染めてしまい。


 王国を乗っとるのだと言った野心があるから。


「それでも陛下……。もしも陛下が転んで頭でも打ち、大怪我をされれば、幼い姫様は悲しみますよ。だから今日は我が屋敷に宿泊されてください。我が娘フローレンスも、お慕いしている陛下の側に常にいられないから寂しいと。毎晩泣いているようなので。私の娘にも陛下からの愛と慈悲を頂けると。あの娘の父親として私も大変に嬉しいのですが」と。


 ドン宰相も、できれば自身の娘に、お父さまの子を宿し、産ませたいので。


 彼も必死にお父さまの御機嫌窺いをしつつ、足止めをおこなうから。


 心の優しいお父さまは、義母を放置する訳にはいかず。


 ドン宰相の嘆願と望み通りに。


 彼の屋敷へと宿泊する日々が続けば。


 義母お母さまのお腹には自然と、お父さまの子が宿るようになりますから。


 お父さまと義母お母さまの出逢いから一年も経てば、二人は挙式……。


 そう、お父さまは、ドン宰相の思惑通りに、彼の血を王国内へと入れ。


 わたくしのお母さまとの永遠の別れを告げ。


 ドン宰相の娘であるフローレンスを後妻として迎えたのだった。



 ◇◇◇





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