第6話 悪しき策が巡る舞踏会(1)

「おぉ、おおおっ!」、


(な、何て素晴らしい!)、


(そして煌びやかなのだ!)、


(私はまるで、妖精達が暮らすと言われて秘密の花園でもきた気分だ!)と。


 自身の近衛隊を引き連れ、煌びやかないで立ちで。


 ドン宰相の館、舞踏会場へと向かい、到着したお父さまが、会場の大きな扉を開け、目にした者達は。


 ドン宰相の言われる通りの、国内の貴族達の若く、麗しい、娘達が所狭しと、いる大変に煌びやかな……。


 そう、桃源郷や極楽浄土のようなお誕生、舞踏パーティー会場だったみたいです。


「おおっ!」と


 そんな煌びやかで、素晴らしい舞踏会場へと。


 お父さまが「おおっ、素晴らしい!」と歓喜しつつ入室をすれば。


 胸の大きく開いた煌びやかパーティードレスを身に纏う、麗しい少女達が父の許へと。


「陛下~」


「陛下~」


「こちらへ~」


「こちらにどうぞ~」


わたくし達は、首を長くして待っていました~」と。


 わたくしだけのお父さまだった父へと。


 美少女達は淡く、甘い声音で父のことを『陛下~」と呼びながら。


 父の手を自分達の華奢な手で女性らしく優しく手を引いたり。


 背を押したりするものだから。


 長年お母さまだけを見詰め、慕い、愛し続けてきた一途なお父さまでしたから。


 数多くの美少女達に甘え、囲まれる、と言ったことに馴れておらず。。


 直ぐに純情なお父さまの脳は、ドン宰相の思惑通りに蕩けてしまい。


 自身の顔が緩み、目尻、口の端が下がり。


 お父さまは、自身の鼻の下までも伸ばしながら。


「おい、おい。よさないか。そんなに私の手を引き、押せば。私が転んでしまうではないか。皆よしなさい」と。


 ドン宰相の策に堕ちているお父さまは、不満を漏らすわりには嬉しい、楽しくて仕方がなかったみたい。


 だって誕生日の当事者であるはずのドン宰相の娘よりもお父さま自身が目立ち。


 若い娘達が上げ膳据え膳で、お父さまに尽くし御機嫌窺い。


 お父さまに、甘え声音で、夜伽の相手も平然と、自分達から申し込んでくるのだから。


 わたくしのお父さまも男性だから嬉しくて仕方がなかったみたい。


 そう、この場に集っている貴族の娘達は、ドン宰相の息のかかった貴族の娘ばかりで。


 お父さまの妻や側室になるために集められた美少女達しかいませんから。


 もう、娘達みなが、必死のアピール合戦ですから。


 お父さまは、美少女達に誘われては、別に用意されている客間へと何度も移動を繰り返しては。


 美少女達を戯れ、交わり。


 この世の極楽浄土をドン宰相に提供をされ味わったみたいです。


 それも、この度のドン宰相の娘の誕生日パーティー、舞踏会だけではなく。


 ドン宰相が何かしら、パーティー名をつけては、わたくしのお父さまを破廉恥な場へと誘うのですよ。


「陛下、我が家でまた舞踏会をおこなうのですが。陛下も御参加どうですか? フローレンスもお待ちしています。陛下のことを」と。


 ニヤリといやらしく笑いながら告げるのです。


 ドン宰相はわたくしのお父さまに女遊びを覚えさせ、傀儡しようと思う下心がありますから。


 彼はお父さまに、自身の麗しい娘フローレンス……。


 そう、わたくしの義母になる女性ひとと。


 自身の息のかかった貴族の娘達を、独身者のお父さまへと、次から次へと与えては。


 お父さまに生まれて初めてのハーレム王気分を味わい、堪能させては。


 彼は既成事実を作ろうと努力をした。


 この国を自分の意のままに動かそうと彼は画策をしているから。


 自身の館をまるで、お父さま専用の春を売る館のように。


 お酒と若い娘達を次から次へと与えていく。


 それでもお父さまに、まだ幼い頃のわたくしがいましたから。


「ドン宰相、すまぬが。私は酒に酔い、足にきだしたから。今日はもう帰宅をすることにする。今日は本当にありがとう。また舞踏会やパーティー等があれば誘っておくれ」と告げ。


 舞踏会場──。


 お父さまはドン宰相の屋敷を後にしようとするのだが。


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