第5話 宰相の策(1)

「陛下?」


「……ん? どうした、ドン宰相?」


「私の屋敷にて、娘の誕生を祝う会を兼ねて、舞踏会のパーティーをおこなうのですが。国中の貴族の若く、麗しく、煌びやかな娘達が揃うので、陛下も御参加の方をどうでしょうか? 見ているだけでも楽しく。目の保養にもなりますから。陛下の気分転換にもなると思うのですが。お時間の方があるようでしたら舞踏会へとどうですか?」


 ドン宰相は、お父さまへと再婚を勧め、断られてから半年以上も経てば。


 今度はわたくしのお父さまへと。


 自身の娘の誕生日を祝う舞踏会のパーティーをおこなうのと。


 国中の貴族の若く、美しい娘達が出て揃うから。


 独身男性であるお父さまへと、若い娘達とお話しでもして気分転換をされたらどうか? と誘う。


 それもドン宰相は、


「陛下が気に入った娘がいれば。私の館の客間にて、御休憩がとれるようにしておきますから。更に陛下の気分転換になると思います」と。


 彼は、わたくしのお父さまへといやらしい笑みを浮かべつつ。


 仲良く休憩がとれる部屋まで用意しておくと。


 ドン宰相が破廉恥極まりないことを誘うから。


 母が他界をして二年以上も経ち。


 あちらの方も御無沙汰になっているお父さまですから。


 流石に男の性が押さえ切れなくなってしまったのでしょうか?


 それともどんな、美しい娘達がいるのか、お父さま自身も興味が湧いたのか?


 その辺りは、わたくし自身にも、お父さま本人でないからわかりませんが。


 お父さまは「ゴホン!」と咳をされ。


 一呼吸終えると。


「そうか。ドン宰相の娘の誕生パーティーなのか」と。


 彼に尋ねる。


「はい。陛下」と。


 ドン宰相は、自身の口の端を吊り上げつつ頷く。


 わたくしのお父さまが、自分の策にまんまとかかるから。


 彼は歓喜した。


 でもわたくしのお父さまは、そんなことを知らない。


 気づかない。


 だってわたくしのお父さまは彼を。


 ドン宰相のことを大変に信頼をしていますから。


「う~ん、お主には、私の片腕としていつも働いてもらっているから。お主の可愛い娘の誕生日に出向いて一度ぐらいはちゃんとお礼を述べねばならぬのぅ」と。


 お父さまはできるだけ、自身の邪な感情、不謹慎な気持ちを。


 ドン宰相に悟られぬようにしながら。


 彼に了承したと告げると。


 お父さまは、その日の日暮れに。


「ソフィア?」


「なにですか、お父さま?」


「父は、今日は城外の政務の為に、帰宅ができぬかも知れぬから。先にちゃんと寝ているように」


 わたくしのお父さまは、いつものように優しく微笑みながら告げてくれた。


 だからわたくしもお父さまに。


「はい! お父さま! ソフィアはお父さまの代わりに。お城を守っていますね!」


 幼いわたくしは、ドン宰相が仕組んだ。


 自身の娘の誕生日パーティーと言う名の、お父さまのお見合いパーティー、舞踏会だと知りませんでしたから。


 自身の胸を叩きつつ、お父さまへと勇んだ台詞を告げたと思う。



 ◇◇◇





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